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第六章
心の底から羨ましい……!
「くっ……中等部との距離が憎いぞ……!」
残すは一限、本日最後の授業前。やってきたのは、中等部のエドワード君だった。褐色肌の大人びた風貌の彼は、私同様に編入生だった。
南方にある国の貴族、海賊と言われていたけれど……本当は王族。エドワード・アタラクシア・ロウラウンド。彼の姓は王族のものだった。今はそれを周囲には秘めていた。
それにしても、エドワード君。どうしたんだろうね? こちらの教室にやってくるだなんで。
「……そなた、そなたは大丈夫であろうな?」
「大丈夫って……あ」
私は予測できた。その続き、それはさっき来た幼馴染も言っていたことで。
「フーゴ殿を好いてはおるまいな!? す、好きになったりなど……!」
エドワード君の方ははっきりと、好きと。うん……うん……。
「中々な美丈夫、人望もあると聞く……! おまけに包容力もあるとも……!」
エドワード君は言っている内に辛くなってきたのか、涙目になってきた。ああ、泣かないで……。
「……む、余は泣いてはおらぬ。へこたれてもおらぬ!」
「そっか、そっかぁ……」
「む、なんなのだ、このあやされているような感覚は……」
見た目は大人っぽくても、年相応なところもあるから。私はつい、温かく見守っていたくなってしまっていた。
「……不本意でもあるが、悪い気もせぬ」
「うんうん」
エドワード君も悪い気はしていないと。どのみち、心配になってしまったんだよね? こんなにも不安そうな顔までしていて。どうもね、彼との過ごした日々の影響か、放っておけないんだ。
「まあ、その様子だとだな? そなた、惹かれてはなさそうだ」
「うん」
それはそうだった。
「ろくに知らない相手だし。噂でいろいろ聞いているだけだから」
「そなた、口説かれていたとも聞くぞ」
「口説かれ……挨拶なんだよ、あの人にとっては」
私に限らずだよ、と弁明した。エドワード君、中等部にも広がっているんだ……。
「とんだ挨拶ぞ……これがモテる男というものか」
「エドワード君?」
君はどうしたのかな? しきりに参照にしているというか……。
「むう……むう!」
ついには唸りだした。本当に何が……。
「余は、余はな……羨ましいのだ!」
「!」
急に叫びもしだした。
「余には心に決めた女子がおる……だが、羨ましいぞ! ああも今も美女に囲まれておるであろう、彼が! ぐぬぬ……!」
「……うん」
渾身の叫びときた。美女、好きだもんね。エドワード君にとって心底羨ましい立場、それを渇望する君の心。
「うんうん、わかるよ。でもね、エドワード君だって負けてないよ」
美女部は解散してしまったけれど、君は慕われる人柄だってしているから。中等部でも人に囲まれているの、私は目にしていた。それに、思いを寄せている子とか、気づいてなさそうだよね。美女部の頃でもいたっぽいのにね……。
「……ふむ、肝心なところを聞き逃されておるまいか?」
「そんな」
どうしたのかな? 君が美女に囲まれたい思い、それは充分に伝わっているよ?
「……まあ、噂話ばかりではな。そればかりでは推し量れぬ」
「それもそうだね」
「……うむ。というかだな、余も今し方、すれ違いはしたのだ。良い香りを漂わせおってからに……!」
あ。思い出し怒りかな。憤慨が止まないな……と、私が困っていたところ。
「――ふむ、彼はどうしたのだろうな? 男子相手でも柔和なる態度であったのに、余を見ると……だな?」
エドワード君は落ち着いてはくれたものの、どうも表情が曇っているようだった。
「一度こちらを見た。それにも関わらず……挨拶をしてみた余を……余のことを」
……これは無視されたってことかな。エドワード君はみるからに沈んでいた。
「エドワード君、それってたまたまだと思うよ――」
……ああ、本当に放っておけない。
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