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第六章
やさぐれた図書委員
フーゴさん争奪戦でギスギスしていても、平和といえば平和。私は認識を改めた。もう脅かすものなんてない……そうだよね?
そう、リッカとも一緒に過ごせるし、お店のこともできるし……本もたくさん読めるし!
私は放課後になると、さっそく図書室にやってきた。蔵書量を誇る、知識欲も満たされる場所。アルトが新たな本を貸してくれたものだから。私の読書欲が、さらに火がついたの。
というか、今度こそリッカにたくさん絵本も読み聞かせたいし。本当に楽しみ。
私はウキウキで図書室に入った。ここは閑静で落ち着いていて、いいよね。人っ子一人もいなくて、本当に静かで――。
「……って」
放課後なのに、誰一人として見かけない。いつもならもっと人がいたりもするのに。図書委員の人だってそうだよ、いないよね?
さすがに無人てことはないと思いたい。それなら閉まっているはずでしょうし。私は受付カウンターの方に目を向けてみた。
「あ」
ああ、いたんだ。カウンターに一人の男子生徒が座っている。猫耳を持つ、麗しい見た目の彼が。
エミル・ジュッツェさん。高等部三年生で、獣人族でもある。図書室の主にして、図書室の君とも称えられている綺麗な男性。温厚で物腰が柔らかな人とも。そんな彼が。
……片手で頬杖をついて、目つきが険しくなっていた。やさぐれているの?
「……」
どうしよう、すごく声をかけづらい。こうね、不機嫌さが前面に押し出されているから。とりあえず、借りるときにでも挨拶すればいいかな――。
「――シャーロット?」
「!」
私が本棚に目を向けていると、声がした。エミルさんだ。私は振り返る。
「ふふ、こんにちは。よく来てくれたね」
「こんにちは……?」
エミルさんは姿勢を正し、優雅に微笑んでいた。その様はいつもの彼だ。
うん。さっきのは見なかったことにして――。
「なんか、ごめんね? 変なところ見せちゃって」
「い、いいえ……?」
私が目撃していたことに、折に触れてきていた。私は曖昧に笑うしかなかった。この人ってわりとスルーしないんだよね……、
それにしても。エミルさんの図書委員姿、久々な気がした。
……私たちと彼は、『色々なこと』があった。因縁でもあって、ようやく敵対しなくてすんだともいうか。
彼は以前のように――力が無尽蔵ではなくなったから。前は手広くできていたことも、今はセーブしているという。そうなると、割が食うのが図書委員活動だった。前のループは目に見えて減っていたんだ。
「本当にびっくりだよね? 図書室、誰もいないでしょ?」
「そうだよね、珍しい……」
そう久々だったでしょうに、この現状だから。エミルさんは悲しそうにしていた。やさぐれても仕方ないよね……。
「まあ、さっきまではいたんだけどね。アルトが借りにきていた。クエストだって、すぐ帰っていったけど」
「へえ、アルトが。もっと早く来れば、会えたのかも」
「うん、まあ……そうだね?」
すれ違っちゃったのかな。ちょっと残念な私に、エミルさんは何ともいえない表情をしていた。
「『以前』もね、大量に借りていったんだ。貴女も察しがつくと思うけど。というか、貴女にプレゼント、とか? 幼馴染が定番とか王道とか、なんだろね?」
――マウントをとってきた、とも。アルト……。
エミルさん、顔はにこやかでもね? 辟易としているのは隠しきれてなかった。前から、マウントをとってきたんだろうね。それこそ借りる度に……。
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