春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第六章

いつもの『彼女』


「ちょっとさぁ、愚痴らせて? リナ、もうね、ずっと引っ張りだこだったのよ? もうね、美容のこととか、駆け引きとか、あざとさテクとか、質問責めだったの!」
「……ですよね」

 私は容易に想像ついた。私でも彼女にアドバイスを求めたくなるから。

「しかも! ファンたちもね、リナそっちのけなのよ!? 今日だって撮影会の予定あったのに、お兄ちゃんまで来ないというね!?」
「え!?」
「ね!? ありえないでしょ!?」
「うん!」

 私たちは何度もうなずいていた。私だって開催を知っていたら行きたかったのに。 それがファンの人たちが参加しないなんて、どういうこと? というか、お兄さんまで……?

「お疲れ様でした……」
「ほんと、それな……?」

 リナさん、肉体的にも精神的にもお疲れのようだった。リッカも彼女に近づいている。心配になったんだろうね。寄り添うワンコに、彼女の表情は緩んだ。

「……そんな中ね、あんたとリっちゃんに癒されたの。あー、まじ、つっかれたー」
「ええ、本当に……でも」

 私の目の前でダルそうにしている彼女――正しくはリナ・ゼンガーではない。
 本当は『エマ』さんという。別の人が『リナ』であろうとしている。それは彼女自身が卒業するまでは続くと。超絶可愛いリナとして振舞っているのに、今は素になっているようだった。

「あー……いいの、いいの。どうせ、リナのことなんて目にもくれてないんだから」
「それは、まあ……」

 リナさんクラスでも、彼女たちは目を向けてないってことかな?

「……」

 意識してない。相手にしてない。眼中にもない。そのはずなのにね。

「……あんたも思うでしょ? あの男――『フーゴ・メーディウム』が来てから」

 そのはずなのに――。

「……っと、ううん、なんでもない」

 リナさんはそれ以上は、と口を噤んでいない。顔色も悪くなっている。

「……」

 うん、リナさん。わかるよ。
 今、この場にいるのは私たちだけ。それなのにね。
 視線が止まない、そう思えてならない。耳だってすまされているかのような。

 ――私たちは、観察され続けている。

「……そっか」

 そうだよ……そうなんだ。

 今は――おかしいんだ。

 何かが歪んでいる。

 具体的に何か何が? ……そこまで断定できないのが歯がゆい。
 情報がほしい。現状も整理したい。でもね。

「……」

 リナさんが首を振っていた。はい、リナさん。ここではないですね。私たちの挙動、言動を把握しようとしている。それはきっと気のせいじゃないから。

「……面談室。そこも、かもだけど」
「……はい」

 いつも話し合いする時は大体、私の家か面談室だった。リナさんは加える。そこもまずそうだったら、私の家にしようと。門限破ってしまうかもしれない。そこは仕方ないとこだよね。

 ひとまずは、リナさんを始めとした彼らは――いつもの彼らなんだ。そこは安心していいんだよね?
 フーゴ・メーディウム。学園に現れた彼。多くの……ほとんどの人の心を掻っ攫っていった彼。

「……メーディウム」

 彼によって初めて聞いた苗字のはずなのに。私はどうしてこうも懐かしく思えたのか――。

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