春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第六章

あんたに見てほしいもの



「――あの子らもさ、招集かけても良かったけど。なんか、予定もあるっていうじゃない?」

 リナさんが道中、そう話していた。確かに。でもって、彼女はそれだけじゃないようで。

「……ちょっとね、先にあんたに見てほしいものがあったの。本当は私の部屋でって思ったけど」

 リナさんの手元にあるのは、小型のアイテム。映像の再生機のようだった。

「そっか……うん、わかった」

 リナさんは思いつめているようだった。私でよければ、と。

「ん、ありがと……」

 リナさんはそれだけじゃなかった。『リっちゃんもね? あんた達、コンビだから』と、リッカにも笑いかけていた。リッカは嬉しそうに尻尾を振っていた。私も嬉しい。


 教職員寮にあるという、面談室。リナさんと一緒に、リッカも抱っこしたまま。扉の前に来た。

「やった、空いてるっ。入ろ入ろっ」

 リナさんは小さくガッツポーズしていた。可愛い。もちろん、私も嬉しい。

「ん? 鍵、閉まってる?」

 リナさんは扉を何度もガチャガチャさせていた。そうだ、確か――。

「そうそう、モルゲン先生が管理しているって。許可もらった方がいいかも」

 一教師がってのも、不思議な話だけど。そこは正直、そう思っていたりする。

「まじで。それもそっか。じゃあさ、モルゲン先生に許可とりにいこ!」
「そうそう、許可を……」

 そう、それはそう。そうだけど、許可をとるとなると――。

「モルちゃんの部屋に突撃だー!」
「え!」

 リナさん、ノリノリだし、両手を上に突き上げたりもしているけど……!

「なによ? いたらいたでラッキー。いなかったら探すまで。どのみち、ちょっと許可もらいに行くだけじゃないの」
「それは……うん」

 ジト目の彼女からの指摘、その通りだった。気構えすることなんて、ないよね? ないはず……。
 軽く許可をとりに行くだけ。軽い気持ちでいい。私たちは寮の地図を見て、先生の部屋を訪れることにした……うん、さらっといこう。




 さらっと、そうは言うけれど。

「……」

 駄目だ、妙にドキドキしてしまう。そ、そんなね? 片桐先生の部屋じゃないんだから。モルゲン先生の部屋なんだから。理解者で優しい先生の……!

「じー」
「!」

 リナさんからの視線を感じる。すごくもの言いたげな目を……! 私は笑顔を作ると、今度は据わった目になった……。

「……ま、いいけど。今はね」
「?」

 今は? 
 と、そうしたやりとりをしつつ。階段を上っていき、ついには先生の部屋までやってきた。

「失礼しまーす。リナでーす。シャーロットとリっちゃんまでいるよー?」
「――お前達、どうしたんだ?」

 扉をノックして名乗ると、モルゲン先生が。先生は扉を少しだけ開けて、出てきてくださった。

「ハーイ、モルゲン先生? わあ、モルちゃんの部屋、どんなんどんなん?」
「覗くな覗くな」

 リナさんがさっそく部屋を覗こうとすると、先生はすっと間に入った。先生は大き目の体格だから、うまい具合に部屋の様子は隠れている。いえ、見ないように、見ないように。

「どうした、シャーロット?」
「っ!?」

 突然、私に振られてしまった。私がビックリすると、リッカもビクッてなってしまった。ごめん……。
 そう、お願いをしにきたから。早く用事を済ませないと。

「……突然すみません、先生。面談室の使用許可をいただきたくて」
「そうなの。オッケーくださいっ」

 先生、私服というのかな。ラフな恰好だった。お休みのところだったんだよね。うん、手短にしないと。

「……面談室、か」

 先生はぽつりと。それから熟考していた。先生はどうしたのかな。いつもならすんなりと了承してくださるのに。

「……まあ、そうだな。本日の進路の相談も終わったし、もう使えるぞ」

 先生はすぐに表情を戻した。それもそうですね、私たちだけの面談室ではない。

「進路相談かー。三年生ってとこ? フーゴ先輩とか、今日だったり?」

 リナさんがそれとなく尋ねると、その言葉を受けた先生は。

「ああ、なんとか無事に終わったようで……人だかり、すごかったぞ……」
「あー……想像つくわぁ……」

 すごく遠い目をしていた。先生は三年生の担任ではないにしろ、整備に駆り出されたのかな。苦労された姿が浮かびます。リナさんもそうだし、皆さんお疲れ様です……。
 そっか、それでなんだ。女子寮に帰った直後、人がほとんどいなかったの。皆さん、面談室に押しかけていたんだ。先生、本当に本当にお疲れ様でした……。

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