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第六章
女王である日々④
さて。私はフーゴさんのことを知らなくてはならない。積極的に関わっていかなくては。まずはお昼を誘ってみることにした。
リッカの様子も気になる。本音はお昼にでも顔を出したいけれど……ここは放課後に。今はまず昼食から。
「……行こう」
……いざ誘うとなると緊張する。それでも動かないことにはだった。私は重い足取りながらも教室を出ていった。
「あ、シャーロット!」
「!」
教室を出てすぐのところ、いたのはリナさんだった。びっくりしたけれど、彼女が愛らしく手を振っていたので、私も振り返した。
「あんたさ、フーゴ先輩のとこまで行くんでしょ? リナが付き添ってあげる!」
「リナさん……」
リナさんの顔を見て心が軽くなったところで、この提案だった。それなら。
「リナさんも良かったら一緒に……」
「うーん、それは流れを見て決めるかなー? その場のノリっていうか? ほんとはね、リナだって一緒に食べたいけどー? あー、リナってば健気―」
「そっか……」
リナさんは私を案じてくれる。その上、心配で付き添ってくれるみたい……状況を見て一緒に食べるかどうかまでも。
心強い。本当にそう思えた。私には味方がいるんだ。ときにトラウマに苛まれたり――。
「!」
廊下を歩いていると、後ろから気配がした。水がかかってくる気配を察知した私は、凍らせてそれを防ぐ。
「な、な、なに! なんなの!? あんた、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。未然に防げたから。リナさんにもかからなくて良かった」
「そ、そう……? ――とはいってもね、何してくれるのよ!」
私と共にリナさんも後ろを振り返った。水をかけた人たちの顔は確認するも、彼女たちは後方に走って逃げていく。
「――ちょっと! あんたたち、待ちなさいよ! ほら、追いかけるわよ!」
リナさんが追跡しようとしたけれど、私は留まったままだった。
「なんで追いかけない――って、あんた……」
最初は私に疑問をもったリナさん、それでも私の顔を見て、彼女は何かを察する。
「……こういうの、慣れるわけでもないよ。でも今は――流してみせるから」
堪えるし、辛くないわけがない。それでも今は――現状打破をしたいから。ここで挫けているわけにはいかない。
「そうはいっても、リナさんを巻き込むのも――」
私の言葉は途中で途切れた。両頬をむぎゅっと手で挟まれたから……リナさんによって。
「ふふ、やっぱりしまらない顔」
そう、前にもしてやられたこと。やった当人は小悪魔っぽく笑う。
「付き添ってあげるの! ……あいつらがいないなら尚更、あんたを支えたいの」
私の両頬から手を離したあと、真剣な顔で告げてきた。
「……ありがとう」
私は頷いた。
三年生のいる階を目指し、階段を上っていく……あ、まただ。
聞こえるは笑い声、上方にはバケツを手にした生徒たちの姿。上から水が降ってこようとしていた。私は凍らせようとするも。
「こっち」
リナさんに腕をぐいっと引っ張られた。そのまま壁際の方へ。バシャっと離れた位置で水がぶちまけられていた。階段を伝って流れていく水。どこかの拭き掃除で使ったのか、汚水だった。
「うわっ、なにこの水!」
「誰の仕業!?」
通りがかりの生徒からも非難ごうごうだった。バケツを手にした人たちは、またしても逃走しようとするけれど。
「……ちょっとー? 片づけておきなさいよー?」
リナさんが張本人たちに言い放った。それでもまだ、相手は逃げようとしていた。
「リナ、いくらでも証拠は抑えてるんだぞ? 今は片づけだけで許してあげるって話だけど?」
リナさんは撮影道具を手にしていた。笑顔ながらもちらつかせている……そんな彼女からは逃れられず。いそいそと掃除用具入れに近づき、片づけ始める……。
「行こ?」
「は、はい……ありがとう、助かったよ」
リナさんが助けてくださった。私が感謝すると、私の腕を掴んだままの彼女は言う。
「あんたの大事な力、使わないで済むならでしょ? ……こんなことで」
「大事な……」
「そうでしょ?」
私の氷の力のこと――守ってくれてきた力のこと。
「……うん」
私は微笑んだ。ありがとう、リナさん。本当に――。
ようやくともいうべきか。私たちは彼の教室に到着した。ここまで来るまで、嫌がらせは続いたままだった。なんとか無事着いて良かった……。
「――わりぃ、一緒に食べるのは……っと」
フーゴさんの声がした。扉が開くと同時に、彼が出てきた。私たちのことも目に入ったのか、そこで足が止まっていた。
「こっちから迎えに行こうとしてた。そっちから来てくれたのか……」
生徒たちに囲まれながらも、フーゴさんの目元は笑んでいた。なんだろ、嬉しいといった感情が伝わってくるというか。
「こっちで昼飯は用意してる。一緒に食べね?」
フーゴさんが手にしているのは、バスケットだった。その中に昼食が詰められているってこと? 彼の手作りだったりなのかも。
「……?」
どうして私はそう思ったの? それもすんなりと? 市販品だってありえるのに。
「むー……」
「!」
隣でリナさんが頬を膨らませていた。そこで私はハッとする。つい考え込んでしまっていた。
「……っと、リナ・ゼンガーも一緒か。そっちも食べるか?」
「むー……」
「なんだってんだ……」
唸り続け、ジト目で見ているリナさん。フーゴさんもタジタジだった。
「……はあ、空気読むわ。いっといで。私はリっちゃんの様子でも見てくるから」
「リナさんっ……」
リナさんが手をひらひら振りながら去っていく。追いかけたくなるも、止めた。彼女は考えた上でなんだ。私たちを二人きりにさせると。
「……うん」
私は私のできることを。
「はい。ご一緒に――」
フーゴさんの提案で、校舎の外に出ることにした。
「――迎賓館の花園? 入っていいんですか?」
「いいんだよ。許可は下りてるからよ」
フーゴさんって、話によると男子寮暮らしだとか。そこは聖なる一族、許可ももらえたってことかな。
刺すような視線の中、私たちは歩く。フーゴさんには羨望のもの、私には敵意。極端だった。
「……」
私は平気。平気なのだと。暗示をかけるかのように、思い込む。ノーダメージを装って、私は彼と雑談をしていた。
「オマエ……」
時折、彼は辛そうな表情をしていた。そして小さく呟く。
――このままでは、と。
リッカの様子も気になる。本音はお昼にでも顔を出したいけれど……ここは放課後に。今はまず昼食から。
「……行こう」
……いざ誘うとなると緊張する。それでも動かないことにはだった。私は重い足取りながらも教室を出ていった。
「あ、シャーロット!」
「!」
教室を出てすぐのところ、いたのはリナさんだった。びっくりしたけれど、彼女が愛らしく手を振っていたので、私も振り返した。
「あんたさ、フーゴ先輩のとこまで行くんでしょ? リナが付き添ってあげる!」
「リナさん……」
リナさんの顔を見て心が軽くなったところで、この提案だった。それなら。
「リナさんも良かったら一緒に……」
「うーん、それは流れを見て決めるかなー? その場のノリっていうか? ほんとはね、リナだって一緒に食べたいけどー? あー、リナってば健気―」
「そっか……」
リナさんは私を案じてくれる。その上、心配で付き添ってくれるみたい……状況を見て一緒に食べるかどうかまでも。
心強い。本当にそう思えた。私には味方がいるんだ。ときにトラウマに苛まれたり――。
「!」
廊下を歩いていると、後ろから気配がした。水がかかってくる気配を察知した私は、凍らせてそれを防ぐ。
「な、な、なに! なんなの!? あんた、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。未然に防げたから。リナさんにもかからなくて良かった」
「そ、そう……? ――とはいってもね、何してくれるのよ!」
私と共にリナさんも後ろを振り返った。水をかけた人たちの顔は確認するも、彼女たちは後方に走って逃げていく。
「――ちょっと! あんたたち、待ちなさいよ! ほら、追いかけるわよ!」
リナさんが追跡しようとしたけれど、私は留まったままだった。
「なんで追いかけない――って、あんた……」
最初は私に疑問をもったリナさん、それでも私の顔を見て、彼女は何かを察する。
「……こういうの、慣れるわけでもないよ。でも今は――流してみせるから」
堪えるし、辛くないわけがない。それでも今は――現状打破をしたいから。ここで挫けているわけにはいかない。
「そうはいっても、リナさんを巻き込むのも――」
私の言葉は途中で途切れた。両頬をむぎゅっと手で挟まれたから……リナさんによって。
「ふふ、やっぱりしまらない顔」
そう、前にもしてやられたこと。やった当人は小悪魔っぽく笑う。
「付き添ってあげるの! ……あいつらがいないなら尚更、あんたを支えたいの」
私の両頬から手を離したあと、真剣な顔で告げてきた。
「……ありがとう」
私は頷いた。
三年生のいる階を目指し、階段を上っていく……あ、まただ。
聞こえるは笑い声、上方にはバケツを手にした生徒たちの姿。上から水が降ってこようとしていた。私は凍らせようとするも。
「こっち」
リナさんに腕をぐいっと引っ張られた。そのまま壁際の方へ。バシャっと離れた位置で水がぶちまけられていた。階段を伝って流れていく水。どこかの拭き掃除で使ったのか、汚水だった。
「うわっ、なにこの水!」
「誰の仕業!?」
通りがかりの生徒からも非難ごうごうだった。バケツを手にした人たちは、またしても逃走しようとするけれど。
「……ちょっとー? 片づけておきなさいよー?」
リナさんが張本人たちに言い放った。それでもまだ、相手は逃げようとしていた。
「リナ、いくらでも証拠は抑えてるんだぞ? 今は片づけだけで許してあげるって話だけど?」
リナさんは撮影道具を手にしていた。笑顔ながらもちらつかせている……そんな彼女からは逃れられず。いそいそと掃除用具入れに近づき、片づけ始める……。
「行こ?」
「は、はい……ありがとう、助かったよ」
リナさんが助けてくださった。私が感謝すると、私の腕を掴んだままの彼女は言う。
「あんたの大事な力、使わないで済むならでしょ? ……こんなことで」
「大事な……」
「そうでしょ?」
私の氷の力のこと――守ってくれてきた力のこと。
「……うん」
私は微笑んだ。ありがとう、リナさん。本当に――。
ようやくともいうべきか。私たちは彼の教室に到着した。ここまで来るまで、嫌がらせは続いたままだった。なんとか無事着いて良かった……。
「――わりぃ、一緒に食べるのは……っと」
フーゴさんの声がした。扉が開くと同時に、彼が出てきた。私たちのことも目に入ったのか、そこで足が止まっていた。
「こっちから迎えに行こうとしてた。そっちから来てくれたのか……」
生徒たちに囲まれながらも、フーゴさんの目元は笑んでいた。なんだろ、嬉しいといった感情が伝わってくるというか。
「こっちで昼飯は用意してる。一緒に食べね?」
フーゴさんが手にしているのは、バスケットだった。その中に昼食が詰められているってこと? 彼の手作りだったりなのかも。
「……?」
どうして私はそう思ったの? それもすんなりと? 市販品だってありえるのに。
「むー……」
「!」
隣でリナさんが頬を膨らませていた。そこで私はハッとする。つい考え込んでしまっていた。
「……っと、リナ・ゼンガーも一緒か。そっちも食べるか?」
「むー……」
「なんだってんだ……」
唸り続け、ジト目で見ているリナさん。フーゴさんもタジタジだった。
「……はあ、空気読むわ。いっといで。私はリっちゃんの様子でも見てくるから」
「リナさんっ……」
リナさんが手をひらひら振りながら去っていく。追いかけたくなるも、止めた。彼女は考えた上でなんだ。私たちを二人きりにさせると。
「……うん」
私は私のできることを。
「はい。ご一緒に――」
フーゴさんの提案で、校舎の外に出ることにした。
「――迎賓館の花園? 入っていいんですか?」
「いいんだよ。許可は下りてるからよ」
フーゴさんって、話によると男子寮暮らしだとか。そこは聖なる一族、許可ももらえたってことかな。
刺すような視線の中、私たちは歩く。フーゴさんには羨望のもの、私には敵意。極端だった。
「……」
私は平気。平気なのだと。暗示をかけるかのように、思い込む。ノーダメージを装って、私は彼と雑談をしていた。
「オマエ……」
時折、彼は辛そうな表情をしていた。そして小さく呟く。
――このままでは、と。
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