春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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最終章

最後のやり直しの日々


 ふかふかのベッドの中、私は目が覚めた。すっかり朝になっていた。

「すぴー……」

 足元から聞こえてくるのは、モフモフワンコのリッカだ。気持ちよさそうに寝ているね。いつまでも眺めていたけれど。

「……!」

 私は飛び起きた。リッカもびくっとなって起きた。

「ごめん、リッカ!」

 この子に悪いとは思いつつ、部屋のカレンダーを見た。

「ああ……」

 私の心は震えた。口元に手を当てた。

「やった。やったぁ……!」
「へっへっへっへっ!」

 カレンダーは十二月――戻ってきたんだ! リッカも嬉しそうに振っていた。うん、やったね?

 ベッドの横にあるのは、『恵みの石』。暖気を放つそれは、この国の生命線だ。私は手に持って下に下りようとした。

「……やり直せたんだ」

 ベッドサイドのテーブルから、机に視線を移動した。机の上にあったのは――犬用の帽子だった。これはフーゴさんからの贈り物で……。

 私は立ち上がって、机の引き出しを開けた。存在していたのは、彼らからの贈り物。
 空になった蜂蜜瓶。発色の良いリップ。サンゴのネックレス。パッチワークのコースター。お手製のベッドもそう。現存しているそれらと。

「……学園、か」

 学園からの紹介状も健在だった。使ってない、渡してない。ああ、戻ってきたんだと尚更実感した。

「ねえ、シャーリー。学園、通うの?」

 リッカが足元にやってきた。見上げながら尋ねてきている。

「……それは」

 私はリッカに合わせたしゃがんだ。今まで学園に通っていたのは、必要だったから。もしも、必要でなくなったとしたら。

「……リッカ」

 春を取り戻せたら、この子はもう――。

「……あのね、リッカ? 私、おうちにいたいんだ――リッカと一緒にいたい」
「シャーリー……」

 リッカの瞳が潤んでいた。うん、私もだね――。


 

「……」

 ――今はもう夕方。この時間になっても、誰も来なかった。

 私は薬の調合をしつつ、リッカはぬいぐるみで遊びつつ待っていたけれど……来ていない。今日一日閉店していたから、不在と思っていたりとか? それでもチャイムを押すだろうし……。

「あ。集合する場所、うちじゃないのかも」

 モルゲン先生の部屋が定番になりつつあったから。今から向かおうかな? リッカもぬいぐるみに飽きてきているようだし。おもちゃ箱に仕舞ったタイミングでもあるし。
 ……でも、こうとも思った。

「……みんな、様子がおかしかったから」

 今回の巻き戻りの前、あの五人は気落ちをしていた。ならフーゴさんや先生はどうなんだろってなる。

「リッカ、お散歩がてら学園に行こうか?」
「うんっ」

 紹介状を持っていけば、いけるはず。前は入学を決めてなくても入れたこともある。お散歩に乗り気なワンコもいることだし、私も準備を始めよう――。

「……ん?」

 外が賑やか……?

「あ!」

 リッカがお散歩以上に嬉しそうな顔になった。真っ先に玄関に向かう。

「――いやいや、俺だけでいいし!? 俺がちゃんと説明しておくし!?」

 騒いでるなぁ……。さては、アルトだなぁ……。

「アルト様はさておきまして――ジェム様、ご在宅でしょうか? ご在宅でございますね?」
「遅くなってごめんねー? ほら、開けて開けて? 近所迷惑にもなっちゃうし。アル君、うっさいから」
「お土産もあるぞっ」

 リヒターさん、リナさん、エドワード君と順々に。そう、近所迷惑はよくないよね。

「うん、今開けるね」

 扉を開くと、リッカが先に飛び出してきた。彼らの周りを嬉しそうに走っている。

「お邪魔します。ふふ、リッカ様? お元気そうで何より」
「……いいよな、オマエは元気でよ」

 優雅に笑うエミルさんと、見た目は女性の……うん、フーゴさんだ。彼はどうしたのか、げんなりしているようだった。

「……はあ。ガチで激詰めしてくること、ねぇだろ。ここまで来るの、しんどいのなんのって……」
「……そう」

 私は思った。文字化したこともだけど……命を投げ打ったこと。事前に一言もなかったこと。きっとそのことに怒ったんじゃないかって。そんな気がするんだ。

「くーん……」

 リッカはお疲れのフーゴさんの匂いをかいでいた。それに安らいだのか、フーゴさんの表情は緩んだ。

 とりあえず外は寒い。家に入ってもらうことにした。


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