春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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最終章

普段通りの彼ら



 私たちはこれからの話し合いをした。みんな、思い思いの席に着く。リッカを誰の膝に乗せるかの争奪戦になっていたけど、リッカ当人は絨毯に座りたいようだった。そうなった。

 それに、彼らが遅くなったのも理由があるという。

「――たとえば……うん、僕の場合はメガホン。女神像に備えつけらているはずなのに、それが無くなっていた」

 エミルさんもそうだし、彼らの欲望を増長させていたもの。それを壊すつもりで各自行動していたようだった。
 でも、すでに無くなっていたと。

「まー、思い返してみればさ? リヒターん時には俺のが無くなっていたわけだし? そういうの、壊れたらそれきりなのかもね」

 確かに、だった。リヒターさんのループの時、アルトのあの心臓みたいなの、消えていたみたいだし。

「……はい」

 リヒターさん? なんか居心地悪そうだった。

「……傍からみたらよ、えっぐい会話、やべぇ関係だよな」

 ……えぐい。やばい。

「……言わないでよ。今はスルーよ、スルー」

 カウンター席にて。隣にいたリナさんが、フーゴさんを肘でついていた。彼も悪い、と口にしつつ切り出す。

「――それでだ。あの巫女がいうに、『三体の女神像』が現存している必要があると」

 そうだ。女神様はあの三体に封印されていたという。どういった意図があってか。やったのはおそらく――日向ちゃんでしょうけど。

「……」
「……」

 私たちもだけど、特にアルトとエミルさんが気まずそうにしていた。うん、女神様がおわしたとなると……こうも顔色が悪くなるのもわかる……。
 あの二人、リッカを挟んで座ってもいた。あ、リッカがフォローしていた。優しい子だね……。

「つか、もう壊さなきゃいい。女神像の警備、警戒。国家権力を要請しとくわ。使えるもんは使っておくってな」
「はい、お願いします」
「ん」

 フーゴさんは女神の巫女。それが出来る立場なんだ。彼が選択したこと、選んだこと。

「うむ、フーゴ殿の言う通りぞ。無論、余らも守護にあたるぞ!」

 ソファの方から元気な声がした。エドワード君たちは学園に在籍している。学園にある女神像は彼らに。

「そうだね。こちらの女神像は今度こそ守ってみせるよ。学園は休んだっていい」

 学園を休学してでも、と。エミルさんはそうするようだった。

「……それな。俺もそうしたい」
「……。うん、お願いします」

 アルトも申し出てきた。いつものようにサボりだと言ったりはしない。私は反対することをせず、託すことにした。私だって学園に通わなくなったんだ。そっちに注力だって出来る。

 女神像を守り抜くこと。そして――式典のこと。

「――はい、通年ゼンガー一族が務めていたことです。そして祭典は女神の巫女様が。フーゴ様、よろしいでしょうか」

 壁際に立っているリヒターさんが切り出していた。これはこちらの推測ではあった。でも、みんなが確信していることでもあって。
 式典はゼンガー一族が務める必要があったのではないか、と。毎年、これまでがそうだった。それを変えたのが、これまでのループの私たちであって……。

「……どっちにもかかってるよな。わかってらぁ、式典で歌いだしたりしねぇよ」

 リヒターさんの発言に、フーゴさんは複雑そうにしていた。
 ……フーゴさん。あなたが窮地を救う為の行動だったこと、それはみんなわかってるよ。紫の花飾りが教えてくれた。そうしようとしたのも、あなただってこと。

「祭典だってやり遂げてみせる。こっちは心配すんな」

 力強い発言だ。彼は――女神の巫女として。役目を全うする気だった。

「……うん。ゼンガーが、だよね」
「……リナさん」

 リナさんは強く手を握っていた。私からの視線に気づくと。

「はーあ、しっかたないなぁ! あの親父に頑張ってもらわないとなぁ? あーあ、お兄ちゃんに資格さえあればなぁ?」

 笑顔に戻ってはいた……大丈夫かな。
 それとリナさんの発言。お兄さん……ケインさん、彼もゼンガーの一族のはずなのに。それでも資格がないってこと?

「あと、私からも話しておかないと。今回のこと、私が起因してもいて――」

 全部を話せることでもなかった……片桐先生のこととか。それでももう、前世の話はした方がいいと思った。頃合いなのだと。
 だから冬花のことと――前世の幼馴染が引き起こしたことだと、私は伝えた。
 その話を受けたみんなは、神妙な顔をしていた。誰も私を責めることはなくても、私には申し訳なさが残るのだと思う――。


 方針は固まった。私たちは最後のやり直しの日々に挑むことになる。

「みんな……」

 ループ前の彼らの様子は確かにおかしかった。それは杞憂だったというの? この雰囲気はいつものものだ。
 あまりにもいつも通り過ぎた。

 最終的に――砂時計は壊すことになった。
 悪用されないようにと。せっかく上手くいったのに、またやり直しになってしまったらって。
 ……残しておくわけにはいかないんだ。備えにって思ってもいたけれど。

「……ううん」

 彼らは何かを覚悟しているようだった。真剣なんだ。なら、私もそうするまで。



 その日はお開きとなった。彼らが帰った後、リッカのお散歩にも行った。夕ご飯も食べて、すごい顔をしているワンコも洗って。乾かして。就寝準備も終わった。あとは寝るだけ。

「……夜空じゃないよね」

 ――空は黒いまま。星は存在しない。雲も月も。
 やり直したけれど、まだ『彼』の影響下にあるんだ……。

「だとしても、今は奇跡のような状況だから。うん、今度こそ」

 明日から運命が決まる日々が始まる。
 今日はもう寝よう――。

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