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最終章
あなたと過ごした日々①
「――冬休みか」
私は朝、目覚めると部屋のカレンダーで確認した。そう、十二月も下旬にさしかかっていた。私も学園に通っていたら、冬休みに浮かれていたところだろう。
「今のところ、平和だよね……」
「……うん」
私より先に起きていたリッカ。彼は足元の毛布から脱すると、私の顔の近くまでやってきた。
そう、平和だった――更木日向からのアクションが、何もない。
「……準備したら、今日もだね」
都の方の女神像は、今日も健在だった。他の像もそうだった。
朝の準備を終え、リッカと共に出かけようとしていた――鳴ったのは玄関のチャイムだった。
「へっへっへっへっ」
リッカが嬉しそうにしていた。うん、おかしな感じもしないよね。
「――失礼いたします。こちら、『シャーロット・ジェムの魔法屋』でお間違いありませんか?」
「……」
うん、間違ってないんだ。とりあえず開けよう、開けたんだけれど……。
「……リヒターさん? どうしたの?」
声からして、やっぱりというか。来訪者はリヒターさんだった。スマートな私服姿なのも、冬休みだからだよね。
「ジェム様? どうしたの、とは」
「いや、なんでそっちで確認したのかなって。今までそうじゃなかったのに」
「ああ、さようでございましたか。『にわか』とのご指摘がありましたので、そちらを踏まえさせていただきました」
「……あー」
あー、なるほどなるほど。あったあった。アルトによるものだった。
「うん、どちらでもいいけどね。どのみち、お客様はリヒターさんだし」
「では、このくだりはなんだったのでしょうか」
「……うん」
リヒターさんは淡々と指摘してきた。そう言われると……うん。
話の流れを変えよう。
「何か用事でもあったの? 外、寒かったでしょ? お茶でも用意するから――」
「くんくんくんくん」
ここまでのやりとりの間にも……リッカはずっとだった。ずっと、リヒターさんの匂いを嗅いでいた。なんでリッカってリヒターさんの匂い、やたらと嗅ぐの? はなはだ疑問だった。
「……ええ、私も謎でございます。リッカ様に尋ねた時も、首を傾げられました」
「……そっか」
リッカも謎だし……私の心を読むあなたも謎だよ。謎のままなんだよ……!
「……」
ずっと謎のままな気がしてきた。これ、聞いてもはぐらかされそうだし、そもそも聞きづらいし。
「脱線してしまいましたね。突然の訪問をお許しください。願わくば本日一日、お付き合いしていただきたく――」
馬車に揺られて到着したのは、都から外れたところ――小高い丘の上。
「ここは……」
私はリッカを抱っこしたまま、雪の地面に降り立った。先に降りていたリヒターさんが手を差し出したので、私はここは借りることにした。結構高さもあったから……。
馬車が去っていき、私たちだけとなった。丘の上に立つ、ぽつんとした一軒家。そうだ、ここはリヒターさん――リヒトさんの生家だ。
「外は冷えます故――」
冷たい風が吹きつける。リッカも体をぷるぷる震えていた。私だって寒い。寒いけれど……。
リヒターさんは招こうとしている。けれども、この一軒家でのことで色々あったから……。
「……配慮が至らず、申し訳ございません。こちらの用は外で済みますから」
リヒターさんは微かに笑っていた。それでいて……悲しそうでもあって。
「……リッカも一緒だから」
私の腕の中には心強い存在もいるし。
それにね、リヒターさん。
「私はあなたを信じているから」
目の前にいるあなたとは色々あったけれど。それは乗り越えられたことだって。
「……はい」
リヒターさんによって、扉は開かれていく。招かれるのは彼の家。
一度は閉じ込められて、出られなくなったこともあった。がんじがらめで、幾重に錠もかけられていた。でも、今は違う。
「お邪魔します――」
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