春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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最終章

貴女と過ごした日々②



 ここも懐かしい場所だった。森の中にあり、焚火で囲んだ場所。そこにいるのは、リッカとエミルさんと私。当時と同じだった。
 エミルさんがくべてくれた焚火を囲んで座った。炎の揺らめきって、本当に安心する。

「貴女にね、話しておきたかったんだ。リッカ様にも聞き届けてほしくて」

 焚火を中心に向かい合う私たち。リッカも『頼まれたっ』と目を輝かせていた。可愛いね。

「僕にはそんな資格がないって思ってた。けれども後悔もしたくないから。だから――伝えたいんだ」

 エミルさんにしては珍しい。緊張しているのか、声が震えていた。

「僕は貴女が好きだ」
「……」

 ……?

「……ええと、シャーロット?」
「……えっ!?」

 思考が止まってしまっていた。あまりにも衝撃的な内容だったから、時間差で来たというか。

「……いえ、それって」

 自惚れとかじゃ? 殺し合いの関係にならなくなっただけ、奇跡的ともいえるのに。あくまで友愛的なものであって。
 彼の顔が赤いのも、炎にあてられるからかも。口を引き締めて緊張しているのも。

「貴女への想いは変わらない――いつかは伴侶になりたい」
「……」

 ……自惚れじゃないということ。そう思うほどに、彼の瞳から思いが伝ってきてしまう。

「……」

 相手は冗談ということもない。私、私は……。

「エミルさん、私は……」
「……ごめん。困らせるってわかってて、口にした。伝えたかった」
「……」

 私は言葉を詰まらせてばかりだ。視線だって泳がせたままだ。

「エミルはシャーリーのこと、大切にしたいんだね。守りたかったもんね」
「そうだよ、リッカ様」
「僕、聞き届けたよ」
「ありがとうございます、リッカ様」

 リッカの無邪気でいて、まっすぐな言葉。エミルさんもしっかりと頷いていた。

「そうなんだよ、シャーロット。これから待ち受けることが、たとえ――」 

 エミルさんは首を振った。それでも彼は綺麗に微笑んだままで。

「たとえ、どうなろうと――僕の想いは変わらないから」



 あの後、どう帰ってきたのか覚えていない。また爆睡モードに入ったリッカは、ええと、エミルさんが抱っこしてくれてた。お礼を言わないと……ああ、ちゃんとお礼を言えてたっけ?

 ……あ、家に着いた。歩いて帰ってはいたんだ。

「……普段通りにしてくれたら、ってのも難しいよね。今日のところは、おやすみ」

 私にリッカを託し、彼は距離を取った。私のことを気にしている。そう、私は……。

「……上手く返せなくてごめんなさい。それに、そういうこと考えられなくて」

 私はリッカを抱っこしたまま、頭を下げた。私もあなたに好意は持っていても、恋愛……伴侶とまでなると。
 そこまでの覚悟も……思いも。私には無かった。

「……うん」
「……すみません。どうにか普通の態度にはするので」

 好ましく思っている相手だからこそ、心が痛んでもいた。

「……ううん。気を遣わせてるよね。貴女は充分よくしてくれてるよ」
「……いえ」

 むしろ気遣っているのは、あなた。そんなあなただから……。

「おやすみ、シャーロット」
「おやすみなさい……」

 傷つけたでしょうに、彼は優しい声音のままだった。私はそんな彼の瞳も見れずにいた。




「あああ……」

 家に入り、扉を閉め切ってすぐ。私は呻いていた。リッカ、今ので起きてないようで良かった。

「まさか、まさかって思うじゃない……あんな人がって」

 一人になった途端、私の思いはこみ上げてきた。顔だって真っ赤になっていると思う。何度見とれてきたかわからない。何度、その穏やかな物腰に癒されてきたことか。

「……本好きだし」

 本のことで語り合うともう、時間泥棒だ。話し下手な私でも、話題が尽きないほど。

「……それでいて、金糸雀隊」

 つい最近までは敵対していたのに。そんな人が私にって……自惚れでもないという。

 情緒がぐちゃぐちゃだった。もう徹夜覚悟だ。眠れるとは思えない。

「でも、私にはしたいことがある。平和になったからこそ――」

 ララシアの復興。薬師としての研鑽。店を手放したなら、取り戻したい。孤児院の仕送りを増やしたい。オーナーさんにも家賃をもっとって――。
 やることが尽きないほど、忙しいほどいいと思ったの。春になった先のことを考えていたいの。打ち込んで、打ち込みまくって。落ち込んでいる暇もないほどに――。

「……リッカ」

 私の腕の中、安心しきっているリッカ。
 春は近づいているよ。
 立ち止まっていたら、過ぎていってしまう――。
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