春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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最終章

最後の一日①



「!」

 私は飛び起きた。いつもの自分の寝室だ。

「ああ……」

 寒いけれど……寒くない! 死をもたらすような寒さじゃない! あの絶対零度の世界は来ていないんだ!

 気持ちが昂ぶるまま、カーテンを開けた。ああ――。
 窓の外はいつもの景色、雪が積もった景色。雪かきに苦労させられる、素朴な村の景色。
 けれども、もう雪で埋め尽くされることがない。ああ、やっと。やっとだ――。

「へっへっへっへっ」

 リッカの呼吸が聞こえていた。振り返ると扉の近くでお座りしていた。それと――。

「えへへ、シャーリー? ――お誕生日おめでとう!」
「リッカぁ……」

 床に並べられたのは、一枚の葉っぱ。並べられたのは木の実だった――誕生日プレゼントだ。

「ありがとう……!」

 たまらなくなった私は、リッカを抱きしめにいった。ふわふわモフモフの感触もまた、たまらないっ!

「あのね、夢の中でとってきたの!」
「うんうん、ありがとうありがとう!」 

 夢の中でとってきたとか、どうやって持ち帰ってきたとかいいの。この木の実、前にもくれたやつだったよね? あの時はループの影響か、残されることはなかったけれど。

 嬉しい、嬉しいよリッカ。君からの贈り物、今回は手元に残せるんだ……。

「一回食べてみたけれどね、すごく美味しくなかったの。僕、ぺってしたんだ……」
「……うん、ありがとう」

 裏事情を暴露してきた……いいんだよ、リッカ。贈り物なのが嬉しいの。

「でもねっ、見た目が可愛いから飾れるよっ! シャーリー、喜んでくれると思ったの!」
「あー……リッカぁ……大好きぃ……」

 私はリッカを抱きしめ続けていた。いい子だねぇ、優しいねぇ……。
 そう、私の誕生日。そして、六花。

「……ねえ、リッカ。君は六花でもあった。確か、誕生日祝いしていたよね」

 女神の眷属である君は、いつかはわからない。けれども六花の方なら。私には覚えがあった。冬花も招待されていたから。

「うん。一月二十日にね、お祝いしてくれてたの」
「そうだね。楽しそうだったね。日向ちゃんもすごく張り切ってた」

 私は思い出し笑いをしてしまった。リッカも笑っている。

 リッカ、君の誕生日は過ぎてしまったね。それならせめて。

「リッカ、合同誕生日だよ。君のもお祝いしようねっ」
「合同……うん、やったぁ!」

 リッカも喜んでくれた。うん、その方が楽しいよね。



 リッカとリビングのソファでまったりしていたら、お昼ご飯の時間になった。

「……くーん」

 リッカは玄関の方に向かって、そこで座り込んでいた。うん、君はさっきからチラチラ見ていたものね。それは私にも言えることだった。

 今朝訪れたのは、手紙の配達人さん。お元気そうで良かった。
 毎年恒例の孤児院からの手紙を届けてくださった。誕生日を迎えた子を気にかけてくれていたもの。

 あとはリッカとまったりして。ソファでとことんまったりして。私のお腹にもリッカが乗ったりして。

 ――彼らが来ることはなかった。

 今回のループ始めは、なんだかんだで来てくれたみんな。でも、今となってはもう違う。
 彼らの思いを、思い出を壊したのは。そう決意したのは私だ。その結果が。
 ――誰も来なくなったということ。もう待っても来ることはないと。

「だよね……彼らとはもう」

 現実を突きつけられているようだった――もう関わりがなくなったのだと。

「……リッカ。お昼、用意するからね?」
「……ありがとう」

 リッカはこちらに背を向けたままだ。尻尾は小さくだけ振ってくれた。

「……」

 私の誕生日でもあって――君との最後の一日。明るく賑やかにって思っていたけれど。彼らもなんだかんだで何事もなかったかのように来るって。それは甘い考えだったのかな……。

「……あのね、シャーリー。僕、おうたも歌うの。たくさん盛り上げるの!」

 気がつけば、リッカはこちらを向いていた。やる気のあるワンコがそこにいた。 

「僕、シャーリーと楽しく過ごしたい。一緒にいたいんだ」
「……うん。うん、そうだね。ありがとうね、リッカ」

 リッカがいてくれて良かった。
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