春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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最終章

知っているんだろ?

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 共に乗り越えてきた俺達。
 ついに……ついにだ。
 彼女は死に脅かされることは無くなった。
 俺は鳥籠から彼女を解放した。



 そして、今に至る。



 俺は今、『彼女』の夢の中を歩いていた。暗闇の中を、手のひらの炎で辿っている。
 今宵も逢えないかと思っていたが、今日は無理そうだな。しっかし、ただっ広いよなぁ。マッピング、しておくか?

「――よっと」

 俺は暇だったので、新たな炎を生み出した。それをおざなりに宙に放つ。

 そこに映し出されたのは――俺だ。
 そいつは伝統ある国、ここと同じ雪国に移住していた。やる気もない教師と揶揄されていた。俺からみても怠そうだなと思える姿だ。 

 そう、俺だ。俺なんだよ――パラレルワールドのな。
 おそらく、あの襲撃によってシャーロットを失ってしまった『俺』だ。生きる意味を失った。それでも教師にならないと、といった思いだけが残されていた。
 そいつは……俺はそれでも生きて行くんだろうな。虚ろな目はしていても、諦めはしていない。

「……」

 俺もああなっていた可能性があった。いくらでもあったんだ。
 鳥籠から解放できたのも、もちろん彼女の奮闘もあったこと。リッカもありがとうな。弟を含めたヤンデレ達もまあ……彼女の命を繋いでくれた。結果論だがな。

 俺はもう一つの炎を放った――こいつは羨ましくて嫌いな奴だ。
 そう、再会したあの日。俺はあまりの昂ぶりに、お前の部屋を訪れたんだ。起きていたらと、思ったが……寝ていたな。ただ、寝顔を見ていたらあまりにも愛おしくなったんだろうな? 
 眠る彼女に唇を重ね合わせていた。そこで起きた。起きなかった。それでも分岐点が起きていたんだろうな。
 起きた……起きてしまったお前は、最初は驚き抵抗はしたけれど、最終的には大人しくなっていた。そのまま、溺れるように……それ以上はシャットダウンされたな。

 ……寝込みはまずいだろうって、さすがに俺でも思うぞ。ただな、羨ましいのが本音だ。


 こちらの炎が映し出すのも、似たようなパターンだ。こっちも寝込みをやったんだよな……図書室だったか。学園を案内していた日の夕方だったな。
 これも、起きたか起きなかったか。起きたから……まあ、そういうことらしい。こっちは散々見せつけられたのち、強制終了されているからな。その後の彼女はどうなったことか。

「それでもだな、幸せには変わりないんだろうな」

 彼女を失ってしまった俺も。彼女との愛に溺れた羨ましい俺も――この俺もそうだ。
 幸せを願うのは、皆に共通していることだ。

「――どうだ、俺? 俺も幸せだぞ?」

 どうせ、別の世界の俺も見てるだろうからな? こっちも幸せアピールをしておいた。参考にしてくれても構わないぞ?

「……まあ、指輪がな」

 俺の世界線の彼女は――形見であろう指輪を失ってしまった。そうしないと、未来に辿り着けなかったとはいえ……気の毒だよな。

「お揃いで作ったんだがなぁ……」 

 この指輪はお前のを模して作ったものだ。この左手薬指はお前専用だ。

「今度は俺とお揃いになればいいのか……よし、そうするか」

 そうだな。可能性はいくらでもある。これも、彼女と巡り合えたからだ。

「そうだ、巡り合えただけでも幸せだったんだ」

 俺は当時を思い出した――あの黄泉路のことだ。

 今思えば、彼女が春の女神だったんだな。

 当時の彼女の答えはこうだった――『力になれない。黄泉路を引き返すように』だってな。

 おいおい、伝承と違わないか? 強い思いがあれば、それも純粋なる思いなのにだぞ? 力になってくれるんじゃなかったのか?
 俺の思いが足りなかったとは、到底思えない。まあ、やむを得ない事情があったかもしれないな?



 ま、あんたに断れられた代わりに、俺は別の神の力を得た。炎の神……魔神ともいっていたか。あんたとは違い、底知れない神様だ。でも良かった。俺は彼女を取り戻せれば良かったんだ。

 なあ、女神様。あんたが黄泉路にいたのもそうだが、疑問に残っていることもあるんだ。あんたを三体の像に封じ込めたのは――本当に更木日向の仕業なのかって。あいつがわざわざそんなこと、するのかってな。あんな、ストーカー野郎が。

 あんたは黙って封印されていたわけじゃない――何か、知っているんだろ? 
 裏で蠢いていた存在のことを。

「……俺?」

 俺はただ、彼女を愛して守っていただけだ。

 さあ、そろそろ起きるか。明日には逢えるだろうからな。

 本人に。






 彼女が発ってから、一週間後の本日。俺はララシアに到着した。快適な船旅を楽しんだ。ファストトラベルも良かったがな、ひと眠りしたかったんだ。

「しかし、暑いな……」

 前のスーツは反省し、俺はラフ目のシャツとパンツにしておいた。軽装と清涼感第一だ。帽子も欠かさない。
 冬はまだ快適だったが、春でもうこの暑さだ。

「さて、誰か――」

 ギルドの知り合いがいた。これなら話が通しやすい。責任者に通じてもらおう。
 この人は浄化作業クエストでやってきた人だ。ララシアの王に恩義あるとのことで、それで安い報酬でも厭わずに受けたようだった。人徳者だな。

「――はい、私もです。こちらのクエストの審査は通りました。共に励みましょう」

 事前にそういったことは終わらせた。俺のことも歓迎してくれている。有り難いな。

 ――おっと、ララシア人達がこちらを見ていた。挨拶をしよう。

「初めまして、アインスト・モルゲンと申します。この度、こちらの任務に――」

 挨拶は肝心だ。俺は畏まっていたのだが――。

「……ああ」

 ああ、いたな――お前がそこにいた。遠くで驚いた顔をしていても、俺はすぐにわかったぞ。

 驚いたり、喜んだり、不思議に思っていたり。表情がくるくる回って面白いな……可愛いなぁ。いつまでも眺めていたいくらいだ。
 困惑はしていても、一番の感情は喜びのようだった。彼女らしく遠慮がちに近づいてきた。

 彼女は笑ってくれている。
 笑ってくれているんだ――。


 もう鳥籠は無い。いらないんだ。
 自由に羽ばたいてもいいんだ。飛び回ればいい。
 生き生きとしたお前の姿、先生も好きだからな。


 自由に飛び回って。
 ときによそ見もして……いや、それは腹立たしいけどな?
 多くのことを体験して、知っていって。成長していくのも楽しみだ。

 けど、そうやってもな?
 最終的には――俺のところに帰ってくるのだから。
 それは当然のことなんだ。な、そうだろ?

 
 お前が選ぶのは、俺との未来だ。
 いずれも、な?
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