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第一章
理解のある幼馴染クン
「おー、おっちゃんらじゃんか」
入口側からアルトがやってきた。あの人たちは村のギルドの一員で、アルトとも友好な関係を築けているようだった。
「よー、アルト。お前はいつもここばっかだな」
「まあね。俺の家みたいなもんだから」
「まーた、いってら! いつものヤツかよ」
いつもの軽口かと、彼らは盛大に笑った。アルトもつられるように笑っていた。
「シャーリー。水、汲んでくるよ。バケツ借りるね。これ終わったら清掃しとく。扉の汚れ気になってたんだ」
「うん、ありがとう――って、待って。アルト、ギルドの仕事はいいの?」
自然にアルトが店を手伝う流れとなっていたので、突っ込んだ。
だって今日は世間では休日でしょ。アルトはギルドの仕事もあるのではないのかと。確認しておこう、うん。
「だって。シャーリーが無理するなって」
「え。いや、言ったけど」
「なんてね。俺、深夜のクエストいってきたから。もう、休んでいいかなって。だから、今日はギルドの仕事はお休み」
「そうなんだ。って、結局休めてないじゃない!」
アルトは夜勤でギルド仕事をやってきたみたい。終わらせた分、正真正銘、彼のオフ日となった。それでやるのが、私の店の手伝い……。
「アルト、もう行っちゃったぜ?」
と、私が思い巡らせている間に、いつの間に!
「もう……」
アルトはつまり寝てないことになる。徹夜だからああもハイだったのか。
「……シャーロットちゃんさ。俺らいつものだからさ。ちゃっちゃと済ませてよ。で、あいつ追っかけてやんな」
「あの、すみません」
いつもは世間話で長く滞在することが多い。それを今日は無くして、アルトを追いかけろといってくれた。
「いいんだって。アルトが、俺達とこの店をつないでくれたもんだしな」
「はい、その通りだと思います」
それは私も心から思っていた。消極的な私に代わって、店の宣伝を行ってくれたり、紹介してくれたりもしていた。力仕事も店に訪れた際に、やってくれたりもしていた。
アルトがこうして、尽力してくれたからこそ。私は店をやっていけてもいた。
気の良い彼らは購入後、退店していった。さあ戸締りをして、アルトを追おう。
アルトが向かっていったのは、清らかな水が流れる川だった。店の裏手から近いこともあり、追いつくのはあっという間だった。
「あれ? 店どうした?」
アルトはバケツどころではなく、どこから持ち出したのか水用タンクまで抱えていた。それらを軽々と持っていた。腕力すごいな……。
「皆さんのご厚意に甘えて、いったん閉めてきた」
「えー? 迎えにきてくれたのー? でもさぁ」
アルトは満更でもなさそうだったのに、眉を下げていた。
「店、閉めなくても良かったんだよ。ちゃんと店のこと大事にしてんだからさ。俺、そこはわかってるから」
「アルト……」
アルトはいつもそうだった。何かにかこつけては、店にやってはくる。それでも、邪魔をするわけではなく、他の客がいたら下がる。
「アルト、本当にありがとう。君こそ、店のこと思ってくれてるんだって。アルトがいたから、ここまでやって来られたんだよ」
感謝の気持ちを伝えたくなった。店のこともそう。
「アルトの明るさにも助けられてる」
社交的なアルトを通して、私は多くの人と出逢えたんだ。彼の明るさにつられるように、やっと笑えるようになったんだ。
前世の時のドス黒い感情とは違う。アルトは大切な幼馴染だ。妬み嫉みや自己嫌悪に陥ることもない。温かい心をもたらしてくれる相手でもあった。
「……いまいち、伝わってないのかなぁ」
あさっての方向を見ていたアルトは、ぼそりと呟いていた。何が伝わってないの?
「……まあ、いいか。でさ、シャーリー? なんで追いかけてきたの? なんでなんで?」
「なんでって。アルト、徹夜したんでしょ? 寝てないんじゃない」
「いや、軽く仮眠はとってきたし。全然大丈夫」
「全然大丈夫じゃない。一旦寮に戻った方がいいよ」
アルトは学生寮で暮らしている。名門の寮だけあって、立派な造りだ。そこなら十分に休めるよね。
「えー、また戻るの? 山の上まで? 徹夜明けで可哀そうな俺に? シャーリーは温厚そうな顔して鬼なの?」
「くっ……」
それはアルトの言う通り、歩いて戻るとなるとそれなりの距離になる。
「そこは頑張ってもらうしか」
「わあ、ここで根性論……ねえ、シャーリー?」
アルトの方から寄ってきて、目線を合わせてくる。しかも、うるうる涙目で。
「俺、シャーリーと一緒に休日過ごしたくて。それで、徹夜ハイになりながら討伐終わらせてきたのに。夕飯のメニューとか張り切って考えてきたのに」
「くっ……」
「シャーリーは、俺の事金ヅルとしか見てないの? うう、だから買い物したら帰れ、なんだ」
「うっ……」
アルトが背中を丸めてしょげている。私までもが居たたまれなくなっていた。
「……部屋のソファ貸すから。せめてそこで休んで」
「わあ、シャーリーのお部屋!」
アルトはしょげ顔はどこへやら、一気に顔を華やがせた。私の部屋の話になった途端に。
「ごめんね、客間とかあれば良かったんだけど」
部屋はあるんだけど、物置と化しているというか……泊まりとか縁がなかったから。
「せめてお布団もう一組とか」
「俺、家具とか自作するし。シャーリーのも作りたいし。ほら、ベッドぼろいとか言ってたじゃん……? ベッドとか、作るしかないじゃん……?」
「気持ちは有難いけど。アルトに負担かけすぎかなって」
「シャーリーがつれねぇ……」
アルトは世知辛さを嘆くも、気を取り直した。
「とりあえず借りるね。夕方くらいになったら、起こしてくれる?」
アルトは荷物を抱え直すと、欠伸をした。寝ると決めたから? 眠さを隠さなくなったよう。
「わかった。それにしても、徹夜ハイか。だからテンション高かったの?」
アルトのテンションの高さはいつものこと。にしても、今朝はいつにも増してすごかった。徹夜明けのテンションというなら、納得がいくかな。
「……通常運転じゃない?」
アルトはただ、そう答えた。
入口側からアルトがやってきた。あの人たちは村のギルドの一員で、アルトとも友好な関係を築けているようだった。
「よー、アルト。お前はいつもここばっかだな」
「まあね。俺の家みたいなもんだから」
「まーた、いってら! いつものヤツかよ」
いつもの軽口かと、彼らは盛大に笑った。アルトもつられるように笑っていた。
「シャーリー。水、汲んでくるよ。バケツ借りるね。これ終わったら清掃しとく。扉の汚れ気になってたんだ」
「うん、ありがとう――って、待って。アルト、ギルドの仕事はいいの?」
自然にアルトが店を手伝う流れとなっていたので、突っ込んだ。
だって今日は世間では休日でしょ。アルトはギルドの仕事もあるのではないのかと。確認しておこう、うん。
「だって。シャーリーが無理するなって」
「え。いや、言ったけど」
「なんてね。俺、深夜のクエストいってきたから。もう、休んでいいかなって。だから、今日はギルドの仕事はお休み」
「そうなんだ。って、結局休めてないじゃない!」
アルトは夜勤でギルド仕事をやってきたみたい。終わらせた分、正真正銘、彼のオフ日となった。それでやるのが、私の店の手伝い……。
「アルト、もう行っちゃったぜ?」
と、私が思い巡らせている間に、いつの間に!
「もう……」
アルトはつまり寝てないことになる。徹夜だからああもハイだったのか。
「……シャーロットちゃんさ。俺らいつものだからさ。ちゃっちゃと済ませてよ。で、あいつ追っかけてやんな」
「あの、すみません」
いつもは世間話で長く滞在することが多い。それを今日は無くして、アルトを追いかけろといってくれた。
「いいんだって。アルトが、俺達とこの店をつないでくれたもんだしな」
「はい、その通りだと思います」
それは私も心から思っていた。消極的な私に代わって、店の宣伝を行ってくれたり、紹介してくれたりもしていた。力仕事も店に訪れた際に、やってくれたりもしていた。
アルトがこうして、尽力してくれたからこそ。私は店をやっていけてもいた。
気の良い彼らは購入後、退店していった。さあ戸締りをして、アルトを追おう。
アルトが向かっていったのは、清らかな水が流れる川だった。店の裏手から近いこともあり、追いつくのはあっという間だった。
「あれ? 店どうした?」
アルトはバケツどころではなく、どこから持ち出したのか水用タンクまで抱えていた。それらを軽々と持っていた。腕力すごいな……。
「皆さんのご厚意に甘えて、いったん閉めてきた」
「えー? 迎えにきてくれたのー? でもさぁ」
アルトは満更でもなさそうだったのに、眉を下げていた。
「店、閉めなくても良かったんだよ。ちゃんと店のこと大事にしてんだからさ。俺、そこはわかってるから」
「アルト……」
アルトはいつもそうだった。何かにかこつけては、店にやってはくる。それでも、邪魔をするわけではなく、他の客がいたら下がる。
「アルト、本当にありがとう。君こそ、店のこと思ってくれてるんだって。アルトがいたから、ここまでやって来られたんだよ」
感謝の気持ちを伝えたくなった。店のこともそう。
「アルトの明るさにも助けられてる」
社交的なアルトを通して、私は多くの人と出逢えたんだ。彼の明るさにつられるように、やっと笑えるようになったんだ。
前世の時のドス黒い感情とは違う。アルトは大切な幼馴染だ。妬み嫉みや自己嫌悪に陥ることもない。温かい心をもたらしてくれる相手でもあった。
「……いまいち、伝わってないのかなぁ」
あさっての方向を見ていたアルトは、ぼそりと呟いていた。何が伝わってないの?
「……まあ、いいか。でさ、シャーリー? なんで追いかけてきたの? なんでなんで?」
「なんでって。アルト、徹夜したんでしょ? 寝てないんじゃない」
「いや、軽く仮眠はとってきたし。全然大丈夫」
「全然大丈夫じゃない。一旦寮に戻った方がいいよ」
アルトは学生寮で暮らしている。名門の寮だけあって、立派な造りだ。そこなら十分に休めるよね。
「えー、また戻るの? 山の上まで? 徹夜明けで可哀そうな俺に? シャーリーは温厚そうな顔して鬼なの?」
「くっ……」
それはアルトの言う通り、歩いて戻るとなるとそれなりの距離になる。
「そこは頑張ってもらうしか」
「わあ、ここで根性論……ねえ、シャーリー?」
アルトの方から寄ってきて、目線を合わせてくる。しかも、うるうる涙目で。
「俺、シャーリーと一緒に休日過ごしたくて。それで、徹夜ハイになりながら討伐終わらせてきたのに。夕飯のメニューとか張り切って考えてきたのに」
「くっ……」
「シャーリーは、俺の事金ヅルとしか見てないの? うう、だから買い物したら帰れ、なんだ」
「うっ……」
アルトが背中を丸めてしょげている。私までもが居たたまれなくなっていた。
「……部屋のソファ貸すから。せめてそこで休んで」
「わあ、シャーリーのお部屋!」
アルトはしょげ顔はどこへやら、一気に顔を華やがせた。私の部屋の話になった途端に。
「ごめんね、客間とかあれば良かったんだけど」
部屋はあるんだけど、物置と化しているというか……泊まりとか縁がなかったから。
「せめてお布団もう一組とか」
「俺、家具とか自作するし。シャーリーのも作りたいし。ほら、ベッドぼろいとか言ってたじゃん……? ベッドとか、作るしかないじゃん……?」
「気持ちは有難いけど。アルトに負担かけすぎかなって」
「シャーリーがつれねぇ……」
アルトは世知辛さを嘆くも、気を取り直した。
「とりあえず借りるね。夕方くらいになったら、起こしてくれる?」
アルトは荷物を抱え直すと、欠伸をした。寝ると決めたから? 眠さを隠さなくなったよう。
「わかった。それにしても、徹夜ハイか。だからテンション高かったの?」
アルトのテンションの高さはいつものこと。にしても、今朝はいつにも増してすごかった。徹夜明けのテンションというなら、納得がいくかな。
「……通常運転じゃない?」
アルトはただ、そう答えた。
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