春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

幼馴染を追いかけて


「まあ、平気平気。裏口から入るから!」
「……平気、なのかな」
「平気平気! ってことで、またね! 俺も充電できました!」

 アルトはあっけらかんと笑っていた。この笑顔を見てしまったら、私も笑うしかない。

「……うん。今日もありがとね、アルト」

 彼のおかげで今日も楽しい一日となった。アルトといるといつも楽しい。シャーロットはそう思いながら微笑んだ。

「っしゃ! デレいただきました!」
「デレ……」
「……シャーリー、遠い目しないで」

 帰る直前までも騒々しいアルトは、扉を開けた。彼は――扉を開けたまま硬直していた。どうかしたのかと、私も彼の後ろから見てみると。つい声が出てしまった。

「うわあ……」

 うわぁ、と声に。これはひどい。
 外は雪が猛威をふるっていた。昨日も大雪、今日の方が激しかった。

「アルト、これ危ないよ」

 棒立ちのアルトもさすがに考えているよね。この猛吹雪の中から、そこそこ距離がある学園まで。歩きという強行をしないとならないと。

「うーん……」

 泊まりを許可しない。そう告げていたのは私自身。
 さすがに泊まりはね……アルト自身は紳士で、単なる幼馴染相手に手を出してこないとしても……気になりはする。
 かといって、この状況で彼を帰すのも望ましくなかった。

「……泊まってく? 安全を考えたら、そうした方が」
「はい! 安全とか関係なく泊まりたいです!」
「うん、やっぱり無し」
「ええ!? 引いた? ドン引きした!?」

 振り返ったアルトは興奮状態だった。息も荒くなっていた。彼のテンションは高い。

「……でも! 狼確定なので、俺は帰ります! それじゃ、また明日も来るから!」
「ちょっと、アルト!」

 そのテンションを維持したまま、彼は荒れ狂う天候の中を突進していった。

「……アルト?」

 アルトの姿は見えなくなっていた。彼の無茶無謀ぶりはいつものことだけれど、この猛吹雪の中では無理が過ぎないかな。

「……?」

 胸がざわつく。手にしていた推薦状を握りしめた。私は何かに駆られるかのように、一歩踏み出すと走りだしていった。

「――ちょっと、大人しくしててね」

 シャーリーは走りながら、手を前方に振りかざす。阻むような雪は消滅していった。これで私のゆく手を阻むものはなくなった。

「最初から付き添ってれば良かった!」

 私が失念していたことでもあった。うっかりしていた。

「アルト、いたら返事して?」

 アルトだって人の子だ。この強風の中を駆け抜けられる? ――どこかで倒れている可能性もある。見落とさないように、かつ、急がないと……!





 エーデル村を抜けて、私は走り続けていた。アルトの姿は無い。

 雪が積もった木々は風にうちつけられている。山道を駆けあがっていく。山道の横道から入ると、ダイヤノクトの首都へと通じている。とがった三角屋根や色とりどりの建物が目を楽しませてくれる。景観が美しい都。その奥にあるのが、王族が住まう城だ。

 用があるのは、ブルーメ学園。というよりは、アルト。アルトさえ発見出来れば良い。

「無事に着いてるのかな」

 別ルートを通ったと言わればそれまで、アルトは無事に寮に着いてないのかも。

 山道をある程度進んだ時点で、ランダムに敷き詰められた石の舗装路となっていた。特殊な加工をされているのか、雪を溶かしていた。植えられた木々の実もそう、ランタンのように辺りを照らしていた。

 このまま進めばブルーメ学園だ。私が招待されているところである。

「……この感覚、なんなの」

 学園に近づくにつれ、胸騒ぎが止まらない。心臓がギュッとなるようだ。

 引き返した方がいい。

 このまま帰った方がいい。

 頭の中では警告が続いているのに。

「……」

 私はそのまま走り続けていた。
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