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第一章
重ねてしまう――彼と
王立ブルーメ学園。初等部、中等部、そして高等部で構成されている。
正門から臨める大型の校舎が、高等部のもの。石造りの荘厳なる建築物は歴史を感じさせる。門は閉じられており、制服を着た門番兵も滞在していた。他にいるのは――。
「え……」
私の鼓動がより速まっていく。門の近くで待ち構えているのは――。
「!?」
何者かに口元を塞がれる。そのまま茂みへと引きずり込まれた。
「……ごめん、シャーリー。乱暴だったね」
「ふぁふふぉ!」
口を塞がれれてしまったので、彼の名をまともに呼べなかった。ちなみにアルトと言った。
「っと、苦しいよね……ここからは、小声でね?」
口は解放してくれた。だけど体勢は引きずり込んだ時から……後ろから抱きしめたままだ。
「……」
私は落ち着かなかった。この体勢もどうにかしてもらおうと目で訴えるも。
「いやー、下手に動くとさ。バレるというか?」
私の訴え内容を理解したうえで、アルトは白々しく断ってきた。
「んー……ほら俺、門限過ぎてるでしょ。あそこにいるの――うちの先生なんだけど」
「先生」
どきりとした――先生という響きで彷彿させられるのは、あの男性だ。
いや、と私は自身を戒めた。あくまでこの学園、アルト達の先生であると。冬花にもシャーロットにも関係のない人のはずだと。
はっきりと姿は認識は出来ていなかった。次こそは確認したい、そう思っていた。
「……?」
門の近くにいたはずの男性がいない。
「あれ、アイツ消えた?」
アルトも目撃しているのに、幻ということもない。
「帰ったんならそれはそれで。にしても、シャーリー? 俺のこと追っかけてくれたん? 嬉しいな」
「くすぐったいって。ほら、このへんで。ね?」
後ろから抱きしめたまま、アルトは頭をすり寄せてきた。くすぐったいのも本当、他にも理由があって離れて欲しかった。
「……」
そっちは戯れくらいだとしても……こっちは、妙に意識してしまうし緊張もするから。幼馴染、だけど異性でもあって……。
「えー……ひっさびさにハグ出来たのに……ああ、離れたくないぃ……」
「いや、もういいでしょ?」
「いやいや。くっついちゃったらさ、もうネ……?」
アルトはまだイヤイヤしていた。いつになく粘る……。
「ほら不可抗力だから、不可抗力」
彼は不可抗力とまで言ってきた。
「だったら、普通に離れたらいいんじゃ」
「やだやだー、くっついてるー」
ちょっと……困ったな。アルトは楽しそうにしているけど、こっちとしてはこうも続くと。
「いいから、アルト。離れて――」
「――とっとと離れろよ」
「!」
私は首を振った。自分はこんな声も低くもドスもきいた声はしていないと。
二人を覆うのは大きな影だった。その人物は私たちを立って見下ろしていた。
「……」
私は顔を上げると、息を呑んだ。この人を前にして、心臓が竦み上がるばかりだ。
現れたのは大人の男性。ウェーブがかった黒髪は真ん中で分けられている。彫りの深い顔立ちは色気もあり、どこか気怠そうで。そして退廃的でもあった。
いかにもな好青年だった片桐先生とは対称的だった。似ても似つかわないはずなのに。
「どうして……」
わからない。どうして――重ねてしまうのか。
「そいつが失礼した。困ってただろ」
「いえ……」
どうしてこうも結びつけてしまうのか。
「……ううん」
皇 冬花は願った――片桐先生ともう会うこともないように。この人は生まれ変わりではない。無関係のはず、今はそう信じることにした。
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