春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
14 / 557
第一章

女子寮でおやすみなさい


 アルトの案内によって、女子寮に到着した。階層がある建物だった。
 男子寮と女子寮とで分かれている。この時間ともなると、どの生徒も外には出ていなかった。多分門限とかあるんだろうね。

「失礼します、女子寮の寮長さん、いらっしゃいますか?」

 アルトは呼び鈴を鳴らした。敬語を使うのもそうだし、彼にしては妙に落ち着きもあった。

「はいはい、寮長です。今、開けますよっと」

 中から声がした。寮長である女子生徒がやってきてくれた。内側から解錠をして迎え入れてくるた。中から出てきたのは、ショートカットに眼鏡のしっかりしてそうな女子生徒だった。

「おやおや、君は。珍しい人が来たもんだ。でもって――」

 寮長と名乗る少女はアルトを見る。こうして女子寮に来ることもだが、まともに姿を見たこともなかったようだ。私にも視線が……かなり見られている。

「夜遅くにすみません。寮長さん。この子、シャーロット・ジェム。まだ入寮は決定してないけど、帰せる状況でもないんで。泊めてあげてください」

 アルトが挨拶をしてくれた、うん、私も挨拶を。

「シャーロット・ジェムです。突然ですみません。一晩お世話にならせていただけますでしょうか」

 自分の部屋の準備は出来ているとはいっても、この時間に押しかけることになった。迷惑な話には変わりはない。私は頭を下げた。アルトもそうした。ごめん、アルトまで。

「いんやー、気にしないでって。君の話、聞いてるし。さっきもね、他の子ら案内しとったからね」
「他の子、ですか?」

 私は顔を上げた。不思議な話だった。私以外にも、新しく学園にやってきている生徒がいるってこと? 同じく顔を上げたアルトを見るも、彼も知らなさそうだった。

「そうそう。新たに生徒を増やしたい招きたいとかで。私が知ってる事情はそんくらい。じゃあ、部屋案内するよ。アルト君もお疲れ様。君もたまには寮で休みなよ?」
「わかりました。どうもです」

 アルトは役目を終えたと、男子寮に戻ろうとした。去り際に耳打ちする。

「ここの寮長さん、悪い話は聞かないけど。何かあったら、遠慮なく言ってね」
「それは。大丈夫だと思うけど、心配してくれたならありがとう。おやすみ、アルト」

 私は笑ってお礼を言った。本当にありがとう、アルト。

「……。ん、おやすみ」

 無表情だったアルトも、蕩けるような笑顔を見せた。何度も振り返っては手を振る。いつまでも帰らなさそう……私が早く帰るようにいうと、照れ照れしながら走り去っていった。

「さて、シャーロット・ジェム君。二人の世界の中、ごめんよ?」
「あ……」

 寮長さんのみならず、寮のロビーでたむろっていた他の寮生も見物に来ていたようで。私たちにしてみればいつものやり取り……でも、二人の世界って言われた。誤解されてる?

「あの、すみません。お待たせしました。あと、全然気を遣わないでください」
「そう? 本当にそうー?」

 まずい、本当に誤解されている。訂正を――。

「うんうん、気にしないで。いやぁ、アルト君にあんな面があったとはねぇ」

 寮長はしきりに頷く。誤解続行中だった。

「ね、びっくりだよね。アルト君、あんな顔するんだ」
「聞いてもいい? どういう関係? あ、答え辛かったらいいよ。勝手に妄想するから」

  寮の皆さんまで。アルトの学園での姿、違ったりするの? ともかくは誤解を解くことにした。

「アルトは昔から付き合いがあって、幼馴染なんです。すごく優しい子です」
「……幼馴染。はい、きた!」
「……はい、特別扱い。はいはい、きましたよ!」

 私の発言によって、さらに盛り上がってしまっていた。

「はいはい、そろそろ消灯時間ね。みんな解散解散。シャーロット君、案内するね」
「はい、お願いします」

 寮生達は口々におやすみと告げて、各々の部屋へと戻っていった。見届けた寮長さんは、私を部屋まで案内してくださると。




 
 階段を上り、一番奥の部屋。そこが私の部屋だった。

「一通り必要なものは揃ってるけどね。好きに使ってくれていいよ。あとはそうだな。困ったことあったら言ってちょうだいな? それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい。ありがとうございました」

 寮長さんは後ろ向きで手を振っていた。私もお辞儀した。去っていく彼女を見届けて、部屋の扉を開ける。
 入った途端、温風が漂っていた。部屋の温度は適温で快適だ。浴室に化粧室完備であり、簡易キッチンもある。

「よっと」

 前世からの癖で靴を脱ぎ、ふかふかの絨毯の上を歩く。壁紙や天井に当然シミ一つはない。

「おお……」

 極めつけはベッド! 私は手で感触を確かめる。極上だ。壊れかけのベッドとはわけが違う。
上流の暮らしがそこにあった。私の心は揺らぐ。

「……借りて、いいんだっけ。失礼します」

 私はお風呂を借りることにした。冷えた体が温まり、ぽかぽかな状態だ。着替えまで用意済みだったので、至れり尽くせりだ。髪を適当にかわかし、ベッドに寝転んだ。

「……」

 色々なことがあった一日。どっと疲れが押し寄せてもきた私は。

「ん……」

 すぐに眠りに落ちていった。

感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした

影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。 若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。 そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。 ……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。