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第一章
冬花の記憶――教師との恋①
これは前世の頃の夢かな? 珍しい、こうして見るなんて。うん、この日も雪が降っていた。それも記録的な大雪。
『大雪により、交通規制されております。なお、○○線でも大雪により運行が止まっており――』
だって、スマホの動画ニュースが教えてくれた。突然の大雪、それによる影響。私も含めた首都に住む人々らは、大雪にさらされていた。駅前の大型スクランブル交差点、信号を待つ彼らにも容赦はしてくれない。傘をさしても、強風でひっくり返っていた。
「あ」
信号は青になった。人々は一斉に動き出す。私もスマホの画面を閉じた。イヤホンの接続も切っておこう。
雑踏の中にいる一人、ありふれた女子高校生。それが私、皇 冬花だった。
今は高三の十二月、大事な時期だけど私は―どうしても向かいたいところがあったから。
目的地へ向かうバスも運休……そうなるよね。
「……歩こう」
猛吹雪が私の体を打ちつけてこようと。強風によって視界はさえぎられようと。積もる雪によって歩くこともままならないけれど。
それでも私は、ひたすら歩き続けていた―。
「ふう……」
マンションのエントランスに到着して、ようやくひと息つけた。ドアのガラスに映った私の姿……大変なことになってる。結構メイクとか頑張ってみたけど、台無しにもなるよね。髪だけでも手で整えておこう。
うん、そろそろいいかな。オートロックのインターホンを鳴らそう。こうして待つ間、そわそわしてしまう。笑みも零れてしまう。
――あ、応答がきた! ふふ、待ってるだって!
「……」
――逢いたい人がいる。久々に二人きりで逢える。
その為ならば、背伸びをしたオシャレも。猛吹雪だろうと嵐の中だろうと、私は厭わなかった。
さあ、行こう。背後も確認して―。
「――あら、あなた? 『彼』に何か用?」
突然だった。入口のドアが開いたのは。背後から私に声をかけてきた人。綺麗で……大人の女性。
「……へえ、『今度』はあなたが。ま、丁度いいわ。これ、返しておいてくれる? ――『合鍵』」
私の浮上しきった心が――叩きつけられていた。
「……」
不安がまとわりついてしまう。合鍵、合鍵……って。
「……中々上がって来ないと思ったら。具合、悪いのか?」
「あ……」
息を切らしながらやってきた男性。下ろされた前髪、着崩れたシャツ。羽織っただけのコートに、ひっかけただけのサンダル。いつも外で見せる完璧な姿と違う、素の彼だった。
「歩けるか? 冷えてるな、このまま俺の部屋行こう」
「私は……」
「歩けないのなら抱えていく」
男性は私の返事を待たずに、抱き上げようとしている。返事しないと!
「すみません、歩けます。歩けますから」
「そうか。じゃ、掴まって」
「はい……」
私は遠慮がちに彼の腕に掴まった。筋肉質の腕、体格もそう。精悍な顔立ちもそう。自分とは年が十分に離れている。大人の男性だった。
エレベーターに乗り込む私たち。
「それは……」
彼の目についたのは、私が手にしている合鍵。私……持ったままだった。
「……彼女、来てたのか。その合鍵は違うんだ」
「違うって……?」
「お前に誤解されたくなくてな。知り合いではあるけど、お前が考えているような人じゃない」
「はい……」
私の返事はそれだけだった。そうとしか言えなかったとも。
「……」
私は信じていいんだよね……?
さっきの女の人の態度も気になるけど、でも私は。
あなたを信じたい。信じさせてください。
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