春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

教師と巡る学園


 運動場に案内されると、部活動が行われていた。乗馬部が手招きしてきたので、近づいてみることにした。

「はい、部員ゲット!」
「わっ」

 女子部員さんに抱きつかれてしまった。モルゲンは軽くたしなめる。

「こらこら。強制勧誘はやめるんだ」
「はーい、先生。あなたもごめんね? でさ、馬乗ったことある? なくてもいいよ? 楽しいよ? 楽しいよ!?」

 ぐいぐい迫ってきた。私はたじろぎながらも答える。

「馬は好きです。たまに、乗ったりもします」

 私が馬が好きなのは本当。仕入れなどで遠出する際、馬を借りたりもする。アルトと相乗りをしたりもする。考えていると自然と笑いがこぼれていた。

「……あらぁ、可愛いこと。じゃあさ、一緒に乗ろ? うちの馬にも乗ってみてよ!」
「え、あ、そうですね。それではお願いします」

 さらにさらにと迫られた。私はその勢いに飲まれつつも、乗らせていただくことにした。
「よし、じゃ行くよー」
「わっ」

 部員さんは馬を飛ばした。広い運動場を駆けていく。寒い風が頬を撫でるが、不思議と心地が良かった。

「あ、編入生の子? よかったら、弓術部も見学にきてねー」
「お! うちもマネージャー募集だ! よろしくな!」

 駆けた先で私は勧誘されていた。わあ……。

「だーめ! うちの部の子にするんですー」

 馬術部の彼女が勝ち誇った顔をする。ブーイングだってものともしない。さらに勢いつけて馬を走らせた。

 ひとしきり走ったあと、私たちは馬からおりた。

「――よし、このへんで」
「ありがとうございました!」

 なんという爽快感! この速さで馬を駆けることも早々なかった。

「ま、あいつらの恨み買いたくないからね。他の部もね、見学してみて? 楽しいよ?」
「はい!」

 自分でも返事が良いと思った。そんな私の後ろから噴き出す声がいた。先生だ。

「……あ」

 そうだ……『はい!』じゃなくて。私はまだ入学すら決めかねているのに。
 部の皆さんに挨拶をし、待たせていた先生の元へと戻る。彼はまだ笑っていた……。

「いや、悪いな……ずいぶん元気のよい返事だなって……」
「……はい、初等部の子に負けないくらいに」
「はははっ、そうだな。いい勝負だな」

 私なりの意趣返しのつもりだったが、笑って流されてしまった。ただ恥ずかしい……そんな私に先生は話しかけた。

「いいんじゃないか、部活動。そうだな……せっかくの学生生活なんだ。楽しんだ方がいい」
「……先生」

 そう話す先生の顔は、とても優しかった。



 初等部と中等部の校舎は、戻りがてらに確認した。通常ならば、私も通っていたはずだった。

「心配することはない。高等部一年生からだ。中途にはなるけどな」
「はい」

 私の年齢的にもそうなると納得した。



 また広場に戻ってきた。ここで十字路奥、まっすぐに進むと。高等部の校舎となる。

「……いない」

 あの犬の姿はなかった。ひょっとしたら戻ってきているかと思っていたのに。そうではなかった。

「どうかしたか?」
「いえ、すみません」

 モルゲン先生が先を行っていた。私は急ぎ走っていく。



「まずは購買部だ。校舎外にもあるにはあるが、ここが一番大きい。大抵のものは揃っている。あとは、食堂だな。寮や自室でもいいけど、本格的だぞ。それから――」

 先生は玄関にある掲示板で示していく。そして、一通り口頭説明は終えたようだった。

「承知しました。こちらの案内図、参照にしていきますね」

 手短に済ませてくれたんだなと、私は了承した。これで彼の案内が終わったと思っていたけど。

「いや? 直接回るぞ? まさか、説明だけで終わりと思ったか?」
「はい、思いました」
「正直だな……」
「はい。十分ですし、わかりやすかったですし」

 さすがは教師、短時間っで学園をある程度掌握することが出来た。そもそも通うのも本決定ではないから、これ以上時間を割いてもらうのも申し訳なかった。

「……わかった。よし、行くぞ」
「えっ」
「終わりじゃないってことだ。まだ俺についてきてもらうからな?」
「よいのでしょうか……」
「野放しにはしない、そういうことだ」
「はい……よろしくお願いします」

 それを言われると。ともかく先生は面倒見の良い方なんだと思った。

「……」

 我ながら勝手。先生と二人きりになること、最初は渋っていたのに。でも実際に二人で歩いているとなると。

「ん? どうしたシャーロット?」
「……いえ、お待たせしました」

 こうして名前を呼ばれて、微笑まれると。
 ――嬉しくて笑ってしまう自分もいた。



 モルゲン先生の語り口は見事だった。私も興味津々になって、あれこれ尋ねてみる。嬉しそうに回答するのが、先生だった。実に生徒思いのようだった。仕事熱心なんだね。

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