28 / 557
第一章
夢から覚めて
「はっ!?」
私は勢いよく立ち上がった。衝撃的な内容なあまり、だった。椅子が倒れてしまったので、起こし直した。
日はすっかり暮れていた。明かりがついてない図書室は真っ暗だった。曇り空なので、月も見えない。
「本、戻さなくちゃ」
私は手探りで照明の装置を探すも見つからなかった。暗闇の中、シャーロットの目は慣れてきた。
「うう……」
ある程度は把握出来るし、大体の位置は覚えている。空いたスペースに戻していった。にしても、暗闇の中の梯子は怖い。実に怖かった。
「……」
戻し終えた後に、私は立ち止まる。触れるのは自分の唇だ。
「……!?」
あの感覚を思い出してしまったのだ。頬が火照ってしまう。
「いやいや」
あれは夢のはず……! やけに感触が生々しくても、それでも夢。それにしてはリアルだった。いや、でも、夢だって。私は一人葛藤していた。
「……夢でしょ」
相手もわからない、そんな夢だと。自分とそういうことをする相手。それは想像もつかないと考えていたところで。
「――まだ、残っていたのか。もう夜だぞ」
「!?」
私の心臓が飛び跳ねた。やってきたのはモルゲン先生だ。部屋が暗いのが幸いだった。真っ赤になった自分の顔を見られなくて済むと、ホッとしていた。
「せ、先生、あの……」
あれは夢なんだ。ましてや相手はモルゲン先生のはずがないと。なのに私ときたら彼と目を合わせられることは出来なかった。
「ん? ああ、遅くなったな」
遅くなった。先生はそう言う。
「……」
これは、あれなのかな。冷静になって考えた。うん――来るのが遅くなった、か。つまり、先生は今来たばかりだと。夕方に来たはずもないと。
「どうした」
「いいえ」
「そうか? ――ともかく時間だ。今日も女子寮に泊まっていきなさい」
「はい、モルゲン先生」
私は目を泳がせながらも、笑った。顔が赤いままなのは、仕方ない。あれは単なる夢だと言い聞かせながら、寮に戻ることになった。
今晩も寮で世話になることになった。夕飯までご馳走になり、快適な部屋で休む。
今度こそ渡された自室の鍵で、施錠もしっかりとした。
「……明日、うん」
自分の家もそのままにしてしまった。明日こそは店を開けよう。私は色々考えながら眠りについた。
次の日は快晴だった。私は世話になった寮生にお礼を告げ、女子寮をあとにした。
「今日は店に行くんだな」
「はい。営業したいなって思いまして。お世話になりました」
門まで見送りにきていたのは、モルゲン先生。彼にも大変世話になったので、私は頭を下げて礼を述べた。
「それと、アルトのこともお願いします」
アルトの謹慎二日目。まだ一日ある。彼への自室待機の命は続いていた。
「わかった。生徒で――俺の弟でもあるからな」
「……はい」
同じ孤児院だったアルト。モルゲン先生は同じ孤児院ということもないだろう。私からは見かけたこともなかった。離れて暮らしていたと考えるのが筋かな。
いずれにせよ、深入りすることもなかった。アルトも話したがらない。ただ、アルトに関しては彼が話したくなったら聞こう。そして力にもなりたい。私は大切な幼馴染のことを思った。
「それでは、失礼します」
私は学園をあとにして、帰路に着く。
あの兄弟以外で考えたのは――あのモフモフの犬のことだった。
「……学園の中の方が安全なのかもね」
名乗り出ないままだったけれど、モルゲン先生が世話を焼いているみたいだし。あの学園の生徒達も面倒をみてくれているんだよね、優しい彼らが……。
あなたにおすすめの小説
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。
若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。
そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。
……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。