春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

夢から覚めて


「はっ!?」
 私は勢いよく立ち上がった。衝撃的な内容なあまり、だった。椅子が倒れてしまったので、起こし直した。
 日はすっかり暮れていた。明かりがついてない図書室は真っ暗だった。曇り空なので、月も見えない。

「本、戻さなくちゃ」

 私は手探りで照明の装置を探すも見つからなかった。暗闇の中、シャーロットの目は慣れてきた。

「うう……」

 ある程度は把握出来るし、大体の位置は覚えている。空いたスペースに戻していった。にしても、暗闇の中の梯子は怖い。実に怖かった。

「……」

 戻し終えた後に、私は立ち止まる。触れるのは自分の唇だ。

「……!?」

 あの感覚を思い出してしまったのだ。頬が火照ってしまう。

「いやいや」

 あれは夢のはず……! やけに感触が生々しくても、それでも夢。それにしてはリアルだった。いや、でも、夢だって。私は一人葛藤していた。

「……夢でしょ」

 相手もわからない、そんな夢だと。自分とそういうことをする相手。それは想像もつかないと考えていたところで。

「――まだ、残っていたのか。もう夜だぞ」
「!?」

 私の心臓が飛び跳ねた。やってきたのはモルゲン先生だ。部屋が暗いのが幸いだった。真っ赤になった自分の顔を見られなくて済むと、ホッとしていた。

「せ、先生、あの……」

 あれは夢なんだ。ましてや相手はモルゲン先生のはずがないと。なのに私ときたら彼と目を合わせられることは出来なかった。

「ん? ああ、遅くなったな」

 遅くなった。先生はそう言う。

「……」

 これは、あれなのかな。冷静になって考えた。うん――来るのが遅くなった、か。つまり、先生は今来たばかりだと。夕方に来たはずもないと。

「どうした」
「いいえ」
「そうか? ――ともかく時間だ。今日も女子寮に泊まっていきなさい」
「はい、モルゲン先生」

 私は目を泳がせながらも、笑った。顔が赤いままなのは、仕方ない。あれは単なる夢だと言い聞かせながら、寮に戻ることになった。



 今晩も寮で世話になることになった。夕飯までご馳走になり、快適な部屋で休む。
 今度こそ渡された自室の鍵で、施錠もしっかりとした。

「……明日、うん」
 自分の家もそのままにしてしまった。明日こそは店を開けよう。私は色々考えながら眠りについた。

 次の日は快晴だった。私は世話になった寮生にお礼を告げ、女子寮をあとにした。

「今日は店に行くんだな」
「はい。営業したいなって思いまして。お世話になりました」

 門まで見送りにきていたのは、モルゲン先生。彼にも大変世話になったので、私は頭を下げて礼を述べた。

「それと、アルトのこともお願いします」

 アルトの謹慎二日目。まだ一日ある。彼への自室待機の命は続いていた。

「わかった。生徒で――俺の弟でもあるからな」
「……はい」

 同じ孤児院だったアルト。モルゲン先生は同じ孤児院ということもないだろう。私からは見かけたこともなかった。離れて暮らしていたと考えるのが筋かな。
 いずれにせよ、深入りすることもなかった。アルトも話したがらない。ただ、アルトに関しては彼が話したくなったら聞こう。そして力にもなりたい。私は大切な幼馴染のことを思った。

「それでは、失礼します」

 私は学園をあとにして、帰路に着く。
 あの兄弟以外で考えたのは――あのモフモフの犬のことだった。

「……学園の中の方が安全なのかもね」

 名乗り出ないままだったけれど、モルゲン先生が世話を焼いているみたいだし。あの学園の生徒達も面倒をみてくれているんだよね、優しい彼らが……。



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