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第一章
うちの子なんです……!
その日も晴れていた。私は焦燥していた。村の馬もよりによって貸し出されていて……学園への道のりがさらに遠く感じていた。
やっとの思いで学園に到着する。広場を通り抜けて、まずは男子寮に向かおうとした。
「……?」
広場には人だかりが出来ていた。これではまともに前に進めない。合間を縫って進もうとするも。
「……これ、まじかよ」
「ありえないよ……」
騒然とするのは、集まっている人達だった。彼らは今、信じられない光景を目にしていた。それは私も同様だった。
あの美しき女神像が――粉々に打ち砕かれていたのだ。木っ端微塵だった。
「おいおい、まずいだろ! これ、誰がやったんだ!?」
「罰当たり……」
誰しもが青ざめていた。春の女神信仰のこの国で、女神像の破壊など不敬が過ぎる。
「聞いたか? ――都の方も壊されたらしいぜ?」
――学園の像のみならず、都にある像まで破壊されていたようだ。
「なんてことを……」
私は胸元を手繰り寄せた。こんな、信じられない光景を目にしたとなると。私の顔色も悪くなるばかりだ。
「くーん、くーん……」
人に混ざって悲痛な鳴き声を上げていた存在。その犬は、女神像を仰ぎながら鳴き声を上げていた。
「……おい、なんだこの犬。きたねぇな」
「ちょっと。なんで野良がいんの。追い出してよ」
生徒達は見下す目で犬を見ていた。怯えた犬は、体を小さくする。それでも壊れた女神像からは離れようとしなかった。というか、その子は……。
「……なんで、どういうこと」
学園の生徒達はどうしてしまったの。あれだけ優しかったのに。
「って、女神像に近寄んなよ! つまみ出すぞ!」
汚物を持つような手で、乱暴な男子生徒が犬を掴み上げる。犬は抵抗し暴れた。なんてことを……!
「ま……」
私は声を出そうとする。それに気がついたのは生徒達だった。一斉に注目を浴びる。それはどれも好意的なものなど決してなく。露悪的なものだった。
「あ……」
――あの子が。
――ほら、あの子。
――片桐先生との。
冬花の時の記憶が蘇る。針のむしろにされ、大勢の前で晒された……前世の記憶。
喉が渇く。伝う汗は止まらない。生まれ変わった後でも、トラウマは消えてくれない。
「……だとしても」
私は手を握った。あの犬がなにをしたというのか。あんな仕打ちを受ける必要があったというのか。今、私の中にあったのは――小さな怒りだった。
「わ、私の……うちの子です!」
私は目を瞑って叫んだ。周りはしんとなった。彼らが呆けているのならば、と目を開けて犬を奪い返した。
「よって、この子に酷い事するなら。う、う、訴えますから!」
弱りきった犬を、私は抱き留めた。意地でも離さないんだから……!
「……」
腕の中の犬は、こっちを見上げていた。ただじっと。見つめていた。
やっとの思いで学園に到着する。広場を通り抜けて、まずは男子寮に向かおうとした。
「……?」
広場には人だかりが出来ていた。これではまともに前に進めない。合間を縫って進もうとするも。
「……これ、まじかよ」
「ありえないよ……」
騒然とするのは、集まっている人達だった。彼らは今、信じられない光景を目にしていた。それは私も同様だった。
あの美しき女神像が――粉々に打ち砕かれていたのだ。木っ端微塵だった。
「おいおい、まずいだろ! これ、誰がやったんだ!?」
「罰当たり……」
誰しもが青ざめていた。春の女神信仰のこの国で、女神像の破壊など不敬が過ぎる。
「聞いたか? ――都の方も壊されたらしいぜ?」
――学園の像のみならず、都にある像まで破壊されていたようだ。
「なんてことを……」
私は胸元を手繰り寄せた。こんな、信じられない光景を目にしたとなると。私の顔色も悪くなるばかりだ。
「くーん、くーん……」
人に混ざって悲痛な鳴き声を上げていた存在。その犬は、女神像を仰ぎながら鳴き声を上げていた。
「……おい、なんだこの犬。きたねぇな」
「ちょっと。なんで野良がいんの。追い出してよ」
生徒達は見下す目で犬を見ていた。怯えた犬は、体を小さくする。それでも壊れた女神像からは離れようとしなかった。というか、その子は……。
「……なんで、どういうこと」
学園の生徒達はどうしてしまったの。あれだけ優しかったのに。
「って、女神像に近寄んなよ! つまみ出すぞ!」
汚物を持つような手で、乱暴な男子生徒が犬を掴み上げる。犬は抵抗し暴れた。なんてことを……!
「ま……」
私は声を出そうとする。それに気がついたのは生徒達だった。一斉に注目を浴びる。それはどれも好意的なものなど決してなく。露悪的なものだった。
「あ……」
――あの子が。
――ほら、あの子。
――片桐先生との。
冬花の時の記憶が蘇る。針のむしろにされ、大勢の前で晒された……前世の記憶。
喉が渇く。伝う汗は止まらない。生まれ変わった後でも、トラウマは消えてくれない。
「……だとしても」
私は手を握った。あの犬がなにをしたというのか。あんな仕打ちを受ける必要があったというのか。今、私の中にあったのは――小さな怒りだった。
「わ、私の……うちの子です!」
私は目を瞑って叫んだ。周りはしんとなった。彼らが呆けているのならば、と目を開けて犬を奪い返した。
「よって、この子に酷い事するなら。う、う、訴えますから!」
弱りきった犬を、私は抱き留めた。意地でも離さないんだから……!
「……」
腕の中の犬は、こっちを見上げていた。ただじっと。見つめていた。
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