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第一章
私は無実です
学園の南方に警備の詰め所がある。その近くにあるのは、教職員が暮らす教職員寮。罰を与えるための独房がある建物。地下にある穴倉。そこが、犯罪者を幽閉する為の牢獄だった。久々の使用となった。
牢獄に入れられた私は窓際に座っていた。そして、手のひらを見る。
「女神像を壊した……?」
本当に見の覚えがないことだった。ただ、もし。
「私は、本当に……?」
おかしな夢をみることもあった。夢うつつのまま、破壊したのではないか。
「大罪っていうけど。どれだけなの……?」
世間に疎かった私にはわかりかねることだった。像破壊の容疑はかかってはいる。前世の頃の善悪を基準として、もっと重い罪もあるだろうとは考える。
「……死罪、とか」
そう口にしたことで、戦慄してしまう。
また、訪れてしまうのか。突然の死というものが。
「……ううん、やってないものはやってない」
私は首をかぶり振った……恐怖を打ち消すように。自分は誓って無実の罪だ。自分を信じたい、そう思うことにした。
「死罪とか、そんなことはさすがに――」
「――ないと思ったか?」
「!?」
足音も気配も無かった。牢を隔て――モルゲン先生が立っていた。
「モルゲン先生……?」
突然過ぎる教師の登場に、私は困惑した。監視か何かだろうとは思うけど……。
「その前に、尋問だ。拷問ともいえるな。お前に、共犯者の名を吐かせる為にな」
「あの……?」
先生は淡々と告げている。
「たとえ、共犯者を吐こうと、吐くまいと――シャーロット・ジェム。お前の死罪は確定している」
「……!」
先生の表情は昏い。彼は問う。
「お前は、本当に像を壊したのか?」
「先生、私は……」
様子が違う先生に惑いつつも、私の答えは決まっていた。
「――私は無実です。モルゲン先生」
私は相手の目を見つめた。偽りがないという思いを込めて。
「……そうか」
先生は片手で顔を覆う。思案していたのは、少しの間。
「……シャーロット」
柔らかい声で私を呼んだ。懐から出したのは鍵だ。
「俺はな? お前がそう言おうが言うまいが――お前を連れ出す。その為に来たんだ」
「!?」
私が驚愕している間に、先生はもう解錠していた。牢の扉は開かれ、内側に踏み入れてきたのは、優しく笑っている彼だった。
「……モルゲン先生、あの、私は大丈夫ですから」
逃走するにしても、私一人でと考えていた。こうして先生が手伝おうものなら、彼こそ罪に問われるだろうと。私はそれを望みはしない。
「お前が思っている以上に大丈夫じゃないんだよ」
「それはわかってます。でも!」
わかっているからこそ、先生を巻き込みたくはなかった。
「……生徒が無実だってのに。見過ごす教師がどこにいるんだ」
先生は生徒……私の手を引っ張り上げて起こす。繋がれたのは手だ。
「モルゲン先生、それは……」
どこまでも生徒思いなのかと。素晴らしい教師、人だ。だからこそ湧き上がってくるのが、前世からの思いだ。こんな人を――。
「シャーロット、わかってくれ……お前を死なせたくないんだ」
「先生……」
先生の切実さに、私は彼から目をそらせなくなった。彼もまた、見つめていた。
「お前はどうなんだ。死にたいのか。死にたくないのか」
「……死にたくはない、です」
「わかった。まあ、さっき同様。どう言おうと、なんだけどな」
ワンパターンとか言うなよ。先生は自虐めいていた。私は笑える心境でもないけれど、心のどこかでは安心していた。
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