春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

希望がみえてきた――


 牢獄を出て、地上に戻る。そこで待ち構えていたのは自治委員会と、警備兵たちだった。
 中央に出てきたのはシェリア・カイゼリンだ。側近の人はいないようだ。

「カイゼリン様、あの子はどうしたんですか」
「あら、まずワンちゃんの心配ですの? ……まあ、逃げられましたの。リヒターに追わせております」

 呆れつつも、カイゼリン様は答えてくれた。彼女はそれより、と問う。私というよりは、モルゲン先生に対して。

「アインスト・モルゲン先生? どういったおつもりかしら? そちらの婦人は、容疑者なのよ? そんな彼女を連れ出す貴方はさしずめ――共犯者、むしろ主犯かしら?」
「おっと。俺のアリバイはあるだろ」
「ええ、抜け目のない貴方ですものの。いくらでも作れますでしょうね」
「……そりゃ、俺も疑われるよな」

 先生は手を上げてお手上げのポーズをとった。さすがに降参だろうか。それでも良かった。まだ、手遅れではないだろうと――。

「なあ、シャーロット――とっくに引き返せないんだよ」
「先生、でも!」
「ってことで、じゃあな!」

 先生はそう告げると、彼は手を振りかざした。その手から生じるのは、炎の魔力だった。火柱となって、障壁と化した。

「モルゲン先生が魔法を!?」

 委員の一人が衝撃を受けていた。彼だけではなく、他の人たちも……カイゼリン様までも。モルゲン先生の魔力のことを知らなかったようだった。

「ああ、言ってなかっただけだ――行くぞ、シャーロット」
「私は……」
「今は逃げるのが先決だ。あの犬やアルト……助けられるのか、今の俺達で」
「……はい」

 今は逃げるしかない。混乱に乗じて、私たち学園の外れへと向かっていく。



 逃亡する二人を、追手が迫る。兵も増援されていた。

「心配するな。逃走経路は確保している」
「先生……」

 森の茂みを走り抜け、アルト愛用の裏口――そこはとっくに抑えられているだろう。
 先生が考えているのは、地下道を通るルートだという。そこは独房も通過することになってるのだと。

「アルトも?」
「……ああ。あいつも只では済まないだろうからな。あの犬にもこっそり伝えていた。伝わってればいいけどな、言葉」
「……はい!」

 逃げるのが優先といいつつも、先生は考えてくださっていたんだ……。

「……モルゲン先生。希望が見えてきました」

 未来が見えてきた。私だって望みたい。

「そうか。それは何よりだ」

 先生が笑った。私だってそう。そう、このまま上手くいくと――。

「――こっちだ!」
「!」

 突如、体を引き寄せられた。先生によるもので、彼はそのまま後退した。

 目の前に現れたのは、頭巾と一体の覆面で顔を隠す者達だった。一同に隊服を着用しており、胸元には国章も携えていた。国公式の部隊なの?

「――金糸雀隊、こんなところまで……走るぞ!」
「はいっ!」

 か、カナリア隊……? 先生に手を引かれるまま、私も駆けていく。

 噂だけは耳にしたことがあった。国直属の部隊、『金糸雀隊』。春の女神が好んだ鳥から名付けられたというその隊は、女神の狂信者で構成されていた。
 表立って動くことはない、影の部隊――その残忍さは計り知れない。

「まずいな……」

 相手はじわりと追い詰めてきた。退路を塞いでいき、誘導されるかのように――破壊された女神像の前まで辿り着いてしまった。
 ――そこで私たちはついに捕まってしまう。

「くっ!」

 地面に伏せられ、押さえつけられてしまった。二人は身動きがとれない。

「あ……」

 私は地面から取り巻く人々を見渡す。

 冷めた目で見ている学園生達。様子を見ている自治委員会達。抵抗しようものなら加勢する気でいる警備兵達。
 ――誰しもが、シャーロット・ジェムを犯人として見ていた。

 誰しもが私を犯人として捉えている。誰もが、敵であると。彼女がそう思えていた時だった。

「シャーロット!」
「!」

 ワンワン吠える犬と共にいたのは、アルトだった。手にもっているのは、鍵束だ。涎つきだったので、どこかのワンコがくわえてきたのかな。

「クソ兄貴、だっせーの」
「はは……」

 先生は耳が痛かったようで。

「……兄貴。助けだしてくれて、ありがとう」

 そう告げると、アルトは金糸雀隊に突進していった。飛び蹴りをくらわすと、兵から武器を奪う。

「シャーロット! 助けるから、待ってて!」

 アルトは襲いかかる金糸雀隊を掻い潜りながらも、こちら目掛けて駆けていく。

「……あいつ一人にやらせるわけにもなっ!」

 隙をついた先生も拘束から逃れた。モルゲン先生も加勢する。

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