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第一章
再会
私は目を覚ます。体を起こしてカーテンを開く。朝日が差し込んだ――いつもの朝。
「……生きてる」
ああ、ようやく実感できた。
日付はをレンダーで確認――この日の夜。初めて学園を訪れた。思ったより直近だった。
「!」
ならば、彼らも生きているはず……!
私は焦る気持ちのまま、着の身着のままで、部屋を飛び出していった。
晴天の空の下、私は店の前に立っていた。そこで目にしたのは―。
「へっへっへっへっ」
「ああ……!」
私は感極まった。木の下でお座りをしながら待っている犬……リッカだ!
リッカが。体を震わせながら、体に雪をくっつけながら、健気に待っていた。涙が溢れそうになったのだけど――。
「――って、待って。いつからいたの?」
その涙は引っ込んだ。はリッカに触れてみる。これはかなりの時間、外にいたんじゃないの……?
「ねえ、リッカ……?」
「わふっ」
リッカは犬語で返した。確か人間の言葉を話せたよね?
「あっ」
リッカは急に走りだしてしまった。どうしてって思ったけど、その理由はすぐにわかることになった。
「シャーリー! おはよー!」
「……!」
いつものアルトがやってきた。人懐っこい笑顔、いつもの彼。
『……僕、ニンゲンきらいじゃない。こわい』
リッカがそう言っていたことだ。それはアルト相手でもそうだったんだ。それで逃げたんだ。ああ、安心させてあげないと。アルトは優しいよって――。
「……あれ? シャーリーいつもより早くない?」
「……アルト」
うん……アルトだ。優しい彼、アルト。
目の前にアルトがいる……生きている。それがとても嬉しくてたまらない。私、泣きそうな顔をしているよね。
「……シャーロット?何があったの……さっきの犬が関係してる?」
「……!」
アルトが近寄ってきた。心配というよりは、暗い顔つきだった。
私の泣きそうな顔も、恰好だってそう。起きたばかりの姿は、私としてもイレギュラーだったかも。人前なら身なりをきちんとするようにしていたから――アルトが何かあったと考えるのも。
「つか、あの犬はなに」
「……野良犬。前に保護しただけだよ」
「名前までつけて?」
「まあ、うちの子になってくれたらなって……うん」
期間限定のうちの子だよ、って話をしようにも……アルトの様子がその、なんだろ。
「そんなに気になるんだ……ふーん」
アルトはあからさまだった。彼はリッカに対して煙たそうな目を向けていた。あまり引き合わせない方が良さそう……?
リッカは話があるようだった。あと、落ち合えそうな場所は学園くらいでしょ? そこで待っていてくれているだろうと、私は予測をつけていた。せめてあったかい場所にいてくれますように……!
「……」
アルトにはどこまで話していいのかな。考えあぐねいた私、話せるところまでにしておいた。嘘でもないので、鋭い彼でも見抜いてくることはないよね?
「……本当に何でもないから。さっきの子も何も悪くないよ」
「犬の件はもういいけどさ。何かはあったんじゃない」
アルトは引き下がらない。彼の目を見たら、私は取り繕うことは出来なかった。
「……何かあったとかじゃ、本当になくて。アルトに会えてよかった。いつものアルトだなって、安心したから」
私は素直な気持ちを打ち明けた。理由になってないと、納得してくれないかもしれない。
「……そっか。俺もそうだよ」
「アルト……?」
いつもなら……『シャーリーがデレた!』とか。『ご褒美かな、ねえ、ご褒美?』など。アルトが騒ぎ立てるところだったのに。アルトはそうはせず――私を抱きしめていた。
「シャーロット。本当に問題ない?」
「うん。問題ないよ。ないんだけど……」
私の両手は彷徨っていた。後ろに回すわけにもいかず、かといって突き放すわけにもいかない。アルトが悪ふざけでしていることではないと、わかっていたから。
「ないんだけど、なに?」
「その、問題はないんだけどね? ……アルトこそ大丈夫かなって」
抱きしめられていることもあって、私からは彼の表情が見えない。どういう顔してるのかわからない。
「俺? ……俺は大丈夫だよ。ねえ、シャーロット。何かあったら、言ってね。話しづらいことだったら、待つから」
「……アルト。うん、ありがとね。私も大丈夫」
「……」
「……アルト?」
「……」
話は終わったはず。アルトはまだ抱きしめたまま。まだだった。
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