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第一章
守るモフモフワンコ
「……ん?」
夜中に目が覚めた。足元から謎の言葉が聞こえてきた。耳を澄ましてみると……?
「……アリュトモリュゲンアリュトモリュゲンアリュトモリュゲンアリュトモリュゲン」
ブランケットの下で蠢く――モフモフが真夜中に呟いていた。このド真夜中に。一定のリズムでである。リッカなりに克服しようとしていたんだ。未だ、繰り返されている。
「……」
私は恐怖した。それでも……懸命なモフモフの努力を無碍にはしたくはなかった。
「うう……」
私は足元からの呟きに苛まれながらも、ああ、眠らないと……。
ワンコの呟きは続いていた。私はまともに眠れずにいた。
「……今度は、なに?」
扉の方からも音がした――一回だけ回されたドアノブ。
「え……」
足音すらもない。誰かがいるの? ……また去ったかもわからない。
単なる聞き間違い? ……ううん、そうではない。
「ぐるるるる」
リッカが扉の前に向かって唸っていた。ずっと。
「……」
しばらくすると、リッカは静まった。ベッドから下りた彼は、床で体を休めていた。
「リッカ……? 守ってくれたの?」
「……」
寝息を立てたリッカは何も言わない。シャーロットは一息つく。
「だ、誰かが部屋間違えたとか……」
わからないだらけ……この状態で眠るのは困難だ。私は目だけ閉じて体を休めることにした。
ぺちぺちと頬をたたく音がする。私は寝不足の中、目を開ける。
「シャーリー、おはよう」
「おはよ……」
ベッドの上に乗ったリッカが、寝ている私を見下ろしてきていた。
「……あのね、シャーリー。気をつけて。昨日、だれか来てた。匂いもないから、僕にもわからない」
「匂いが、ない」
それはこう、怖い話か何かか。私は顔を蒼白させた。
「でも、ニンゲン。そう思うんだ」
「……そっか、リッカ。ありがとね」
守ってくれたリッカの背中を撫でた。
「じゃあ、朝ごはんだね。リッカのも用意するからね」
「へっへっへっへっ」
リッカは途端におなかを盛大に鳴らした。
自分達の朝食を済ませると。私は仮眠をとることにした。ほぼ一睡もしていない同然でもあった。
「わかった、シャーリー。僕が起こすね」
「ありがとう、リッカ……」
約束の時間となったら、リッカが起こしてくれるようだった。ありがとね。
「……」
「へっへっへっへっ」
リッカが見ている。
「……」
「へっへっへっへっ」
枕元でリッカがお座りをして、私を見ている。じいっと見ている。
「……やっぱ、大丈夫だよ。リッカ」
ごめん、落ち着かないんだ。
「シャーリー。ちゃんと寝るの」
リッカがトントンと叩き始めた。横向きに寝ていた私の肩を布団の上から叩いていた。それは寝かしつけるリズムだった。
「ふふ……」
冬花の頃もそう。孤児院時代のシスターもそうだった。懐かしくて温かい気持ちになったまま、眠りについた。
数時間の睡眠だけでもとれてよかった。私は仮眠から自然と目を覚ました。
「すぴー」
「……」
リッカは枕元で爆睡していた。私は責めはしなかった。その気持ちが嬉しかったし、寝顔も可愛いし……。
「じゃ、行ってくるね」
リッカの背中をひと撫ですると、私は部屋を出た。
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