春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

制服を着てみた


 私は失念していた。アルトとの待ち合わせの場所まで決めていなかった。階段を下りていったところで、寮長さんとばったり会った。

「おお、シャーロット君。丁度良かった。アルト君が迎えにきていてね。玄関で待っていてくれているよ」
「はい、ありがとうございます」
「――ああ、そうだ。制服も用意されているからね? 君の部屋にすでにあるんじゃないかな」
「はい、わかりました……?」

 突然の制服に関する話。ニヤニヤしている寮長さんを不思議に思いつつも、アルトの元へと向かった。


 またしても寮生達が遠巻きに見ていた。リッカがモフモフ欲に駆られるのなら、こちらは近寄りがたい憧れの存在といえた。

「……」 

 視線が集まるアルトは無表情だったけど、彼の顔はパッと明るくなった。

「おはよー、シャーリー!」

 アルトは手をぶんぶん振っていた。その姿は大型犬を彷彿させるものだった。

「おはよ、アルト――」
「……あの、さ。シャーリーにお願いがあってさ。制服着てくれないかな? もちろん、嫌だったらいいんだけど! と言いつつも、着て欲しいです、お願いします!」

 アルトが着ているのは開かれたコート、そして制服だった。一方私は。昨日洗って乾かしたものの、若干汚れが残っているいつもの服だった。

「また待たせることになるけど。いい?」
「全然いいです!」

 それならと、私は自室に戻ることにした。


「ぐーすぴー」

 部屋に戻ると、リッカは仰向けになって寝ていた。大爆睡だった。でも、すぐに飛び起きた。

「はっ!? シャーリー、僕寝てた!」

 うん、リッカは寝ていたね。それでもいいんだよ、と私はええ顔をした。

「うん……」

 リッカはすぐ落ちた。また爆睡していた。

 寮長さんの話し通り、クローゼットに制服がかけられていた。サイズのことが気になっていたが。

「おお」

 試しに着用してみると、サイズが伸縮し始める。シャーロット・ジェムにぴったりのサイズとなった。デザイン自体はシャツにブレザー、スカートと定番のものだった。
 アルトが着ていたのも、ブレザータイプのもの。そういえば、彼は制服はきちんと着ていた。

 リボンの種類がいくつかあったものの、待たせるのも悪い気がしたんだ。
 一番左のものを選んだ。アルトのネクタイと同じもの、色が被っても彼は文句を言ったりはしないだろうし。赤いリボンを着用し、コートも羽織る。

 さあ、アルトの元へ。





「お待たせ、アルト」
「シャーリー!」

 野次馬寮生達は散り散りになっており、ぽつんとアルトが待っていた。彼には悲愴感は全くなく、終始笑顔だ。

「お待たせ、とか。こんなんデートの待ち合わせじゃんか……!」

 アルトは常時テンションが高かった。というか、前から何気に気になっていたけど……デート?

「おおお、制服シャーリーだ! こんなん制服デートじゃんか……!」

 シャーロットの周りをぐるぐると回る。なんだろ、堪能されている? ……いやいや。

「おおお、リボンとネクタイ同じ色だ! こんなん運命じゃんか……!」
「き、奇遇だね?」

 コートから覗かせているリボンについて。文句どころか、感激までしていた。うん、適当に選んだことは黙っておこう……。

「じゃ、じゃあ、行こうか。シャーリー、お手をどうぞ!」
「お手を、って」

 顔を真っ赤にしながら、アルトは手を差し出してきた。手を繋ぐということかな。私が逡巡していると、アルトはみるからに落ち込んでいた。

「だよね、まだ早いよね! ……はあ、いつかは繋ぎたいなぁ」

 落ち込みと思いきや、切り替えは早かった。夢まで見ていた。

「そ、そう……?」 

 彼がちょっとわからなかった。急に抱きしめたりもするのに、極端に奥手にもなったりする。
 ……っと、そんな重く考えないように。デートってのもそう、案内をそう称したかっただけだったり。真に受けない、真に受けないと。

「――今日はよろしくね」
「よろしくされたんで、頑張ります!」

 張り切るアルトと共に学園巡りを開始した。

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