春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

アルトには話さない



 配達人さんの訪れを待って、学園に向かうことにした。今回も門限を守らせることができ、モルゲンに面談室で話す流れとなった。

「……」

 前と同じ流れだった。それが正しいかは、私にもわからない。

「……ひとまずは、警備強化はしといた方がいいよな。それは間違ってないはずだ」

 先生も確証はもてていない。苦い顔をしながらの発言となった。
 面談室で二人と一匹になった。リッカは抱っこされることなく、椅子の上にちょこんと座っていた。

「……先生。予告状って、本当に届けられたものじゃ――」
「ああ、偽造だ。なりふり構ってられなくてな」
「先生、危ないのでは」
「ああ。承知の上だ……お前達を失わなくて済むならな」

 先生は覚悟を決めていた。現にそれもあって、金糸雀隊や警備兵も巡回してくれている。私は頷いた。

「あとは、アイツだな。アルトさえ大人しくしてくれば」

 そうアルトが暴れなければいい。前にそうさせてしまった原因は、こちらにもあった。そうだよ……私がアルトにも話そうって。それが招いた事態だったから。

「……ごめんなさい! 私なんです、私が余計なことを言いました」
「そんな気はしてた。アルトに話したんだろうなって」
「ごめんなさい。アルトにはもう話さないです。今度こそ、ちゃんとしますから」

 私は謝るしかなかった。それだけでは済まされない。同じ過ちはしないようにしていた。

「シャーロット」
「……?」

 片肘ついた先生は、温かな目でこちらを見守っていた。 

「お前を責めるつもりはないからな。気、張り過ぎんなよ。前にも言ったな」
「……はい」
「お、覚えてるな。なら、それこそちゃんと、な」
「……はい」
「返事だけはいいのかねぇ。まあ、リッカもついてるぞ。なっ?」

 立ち上がった先生は、リッカの背中を撫でていた。汚れようと構わないと思っていた彼だっけれど、手の平をみて不思議そうにしていた。先生、どうかしたのかな?

「リッカ。お前綺麗にしてもらったのか?」
「えっと。前はしてもらったよ。でも、今だとまだ」

 言い方合ってる? とリッカは首を傾げた。可愛かった。可愛いから私たちはヨシとした。

 リッカが言わんとしていること。前のループの時は、面談室から帰ってきた後に体を拭いていた。でも今回の現時点ではそれが行われていない。黒ずみワンコのままのはず。
 リッカは、前回の清潔さが保たれているようだった。それは前々回の彼の空腹状態もそうだった。

「……わからんな」
「……わかりませんね」

 先生も私も不可解と思いつつも、中々に答えを出せない疑問であって。今は置いておくことにした。

「それでは先生。今回もよろしくお願いします」
「ああ、よろしくな――と、帰る前にだ」

 先生はお話があるようだった。帰ろうとした私たちは立ち止まる。

「――アルトとなんかあったか」

 背を向けていた私の後ろに立ち、重苦しい口調で先生は聞いてきた。

「アルトはわかりやすいけどな……シャーロットが、変わった気がしてな」
「私が。それは……前回のループを引っ張ってるだけかもしれないですね」

 先生相手においそれと言うことでもなくて、こちらとしても言いたくはなかった。

「……まあ、いい。アルトには話さないんだな。なら、あいつに嗅ぎつけられないようにな」
「はい……」

 私は思い返した。これまでの失敗。また、得たことを――だから今回はそうすることにした。

 兵隊の巡回は行われている。ならば、私自身は部屋で大人しくしている。リッカの散歩もコソコソした方がよさそう。
 そして――アルトには話さない。明日、彼いわく『学園デート』に誘われている。疑われない程度に距離を置いた方がよさそうかな、そう考えていた。




 その日も女子寮でお世話になり、鍵を受け取り。そして、リッカと就寝。

 ――ガチャ。

「……!」

 今回も一回だけ回されたのは、部屋のドアノブ。起きたリッカが唸っている。

「だ、誰ですか……!?」
「……」

 私は相手に呼びかけてみた。返事はない。リッカは唸り続け、玄関の方を見たままだった。

「見てくる!」
「シャーリー!?」

 相手は得体の知れない相手。それでも何かの手がかりになるはず。私は扉を開けた直後、手を構えた。リッカも慌てて彼女に続く。

「あれ……」

 姿はなかった。左右確認しても、いなかった。リッカも鼻をクンクンとはする。やっぱり匂いはしないとごちていた。

 謎が残るまま、一日が終わっていった。

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