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第一章
アルトと学園デート~下心編~
私はドキドキしていた。あらゆる意味で――思い知らされることとなったから。
翌日となった今、アルトが学園内を案内していた。断れない流れでもあった。
同じ場所を巡るだろうと、私は考えていた。知らない振り、知らない振りと自己暗示をかけながらやってきたのだけれど。
――アルトはがらっと趣向を変えてきたのだ。
「ね、シャーロット。ここ穴場。俺もサボりにくる時にくるんだ――綺麗だね」
アルトに連れてこられたのは、校内水族館だった。主に授業目的のここ、休日は立派なデートスポットになっていた。辺りは薄暗く、水槽の中で魚たちが泳いでいる。幻想的な光景だった。
アルトはこっちしか見ていない。綺麗。もう一度言いながら、見つめ続けていた。
「ここ、滑るから気をつけてね。ほら、お手をどうぞ――拒否は駄目だよ。ふふ、手繋いじゃったね」
今度は鍾乳洞だった。ここも二人きりになるには、絶好のスポットだという。確かにアルトに手をとってもらわないと、私は足を滑らせてしまいそうだった。目が離せないとアルトは笑う。手は繋がれたままだ。
「そっか。今日休みだっけ。なら尚更だ。ここもさ、結構おススメ。こうやって、人の目につかない場所に移動して。ほら、わかりづらいでしょ? ふふ、シャーロットがすっぽり――ね、誰にも見えないね?」
ここは私も訪れたことがあった――図書室。お気に入りとなった場所であり、知識を学べる清く正しき場所でもある、そのはずなのに。
アルトは死角になる所まで私を連れていき、自らの体躯で覆い隠していた。私は本棚を背に。アルトに迫られている状態だった。
「……いやいやおかしいよ。デートって、こうもっと。健全な場所じゃないの?」
「健全て」
「健全。ほら、アルトが案内しそうなのは、もっとこう――」
売店。湖のほとり。温水プールは不純な理由はあったようだけど、一応。空中庭園。そして、告白定番スポットの鈴が鳴る木。なんともロマンチックなものばかりだったのに。
でも、今はどうなの。そう思わずにはいられなかった。
「普通のデートスポットだけど? ……そういう発想、してくれてるんだ?」
「ア、アルト……!」
「あ、怒っちゃった? 俺、必死なんだよ。もっと、意識してくれないかなって」
本棚に手をついたアルトは、私の顔を近づけて囁いた。今にも、二人の唇が重なりそうな距離で。
「まあ、さすがにチューとか、それ以上はね。君が望んでくれるまで待つかなぁ」
「……」
アルトは顔を離した。私は睨みたくなった。前は問答無用だったのに……。
「――ねえ、シャーロット。俺、夢見るんだ」
「……夢」
アルトはどんな夢を語るというの。彼は向かいの本棚にもたれかかりながら、遠くを見ていた。
「君にキスする夢。感触がリアルで、すごく柔らかかった。俺は歯止めが効かなくなってて……君に拒まれているのに、俺は止まらないんだ」
「アルト……」
アルトは目を伏せていた。彼にとって、望ましい夢のはずなのに。誰よりも彼が悲しそうだった。
「最初は、自己嫌悪で目が覚めていたのに。今じゃもう、それも薄れていた――ああ、現実になったらなって。そう願うばかりになっていた」
アルトは私を見つめていた。
「シャーロット。俺、もう止まらないんだ。君への愛が溢れ過ぎていて……どうしようもなくて」
アルトは切なそうに言う一方で。その顔は――多幸感に満ち溢れてもいた。
「さてと。あと一箇所くらいは回れるかな?」
今回は一箇所ごとの滞在時間が長かったから、もうそのような時間となっていた。
「……ううん、充分。今日はありがとう。楽しかった」
「そう」
アルトはあっさりと応じた。これでお開きになるのなら、と私の心も軽くなった。
「……時間は、たっぷりあるからね」
よく聞くようになった、アルトの言葉。不安が残るものだった。
女子寮への帰り道。明日も一緒に過ごさないか。アルトからの誘いがあった。
「まだ案内したいところあるし……下心満載だったの、反省してます」
アルトは肩を落としていた。『健全じゃなかった』とも自白していた……うん。
「今度は明るいとこ、行こう? 園芸部がハーブティー提供してくれたり。ほら、モフモフスポットもあるから。従業員さん達が飼ってる子らがいて、人懐っこいみたいだよ」
まだまだデートスポットはあるんだって。自分の欲望寄りだったのを反省し、私が喜びそうなところまで提案してきた。
「あの、アルト。すごく魅力的なんだけど。私、女子寮の人達とお話してみたいなって」
私はやんわりと断った。女子寮の人と交流したいという理由もつけた。
「……そう」
アルトはそれだけだった。これも応じてくれた。何も言わないのが……逆に怖かった。
「ねえ、アルト――」
「気にしなくていいんだって――時間はまだまだあるんだから」
「……」
時間なんてない。あと、一日二日だけなのに。それをどうにかしたくて、私たちは繰り返しているのに。アルトはそればかりだ。
女子寮で時間を過ごして、自室でモフモフと戯れる。散歩にいけない分、リッカと遊んだ。
「……」
窓の外にあるのは、春の女神像だ。私は目に映しながらも、焦れてもいた。
ただ、待つ身である自分に――。
翌日となった今、アルトが学園内を案内していた。断れない流れでもあった。
同じ場所を巡るだろうと、私は考えていた。知らない振り、知らない振りと自己暗示をかけながらやってきたのだけれど。
――アルトはがらっと趣向を変えてきたのだ。
「ね、シャーロット。ここ穴場。俺もサボりにくる時にくるんだ――綺麗だね」
アルトに連れてこられたのは、校内水族館だった。主に授業目的のここ、休日は立派なデートスポットになっていた。辺りは薄暗く、水槽の中で魚たちが泳いでいる。幻想的な光景だった。
アルトはこっちしか見ていない。綺麗。もう一度言いながら、見つめ続けていた。
「ここ、滑るから気をつけてね。ほら、お手をどうぞ――拒否は駄目だよ。ふふ、手繋いじゃったね」
今度は鍾乳洞だった。ここも二人きりになるには、絶好のスポットだという。確かにアルトに手をとってもらわないと、私は足を滑らせてしまいそうだった。目が離せないとアルトは笑う。手は繋がれたままだ。
「そっか。今日休みだっけ。なら尚更だ。ここもさ、結構おススメ。こうやって、人の目につかない場所に移動して。ほら、わかりづらいでしょ? ふふ、シャーロットがすっぽり――ね、誰にも見えないね?」
ここは私も訪れたことがあった――図書室。お気に入りとなった場所であり、知識を学べる清く正しき場所でもある、そのはずなのに。
アルトは死角になる所まで私を連れていき、自らの体躯で覆い隠していた。私は本棚を背に。アルトに迫られている状態だった。
「……いやいやおかしいよ。デートって、こうもっと。健全な場所じゃないの?」
「健全て」
「健全。ほら、アルトが案内しそうなのは、もっとこう――」
売店。湖のほとり。温水プールは不純な理由はあったようだけど、一応。空中庭園。そして、告白定番スポットの鈴が鳴る木。なんともロマンチックなものばかりだったのに。
でも、今はどうなの。そう思わずにはいられなかった。
「普通のデートスポットだけど? ……そういう発想、してくれてるんだ?」
「ア、アルト……!」
「あ、怒っちゃった? 俺、必死なんだよ。もっと、意識してくれないかなって」
本棚に手をついたアルトは、私の顔を近づけて囁いた。今にも、二人の唇が重なりそうな距離で。
「まあ、さすがにチューとか、それ以上はね。君が望んでくれるまで待つかなぁ」
「……」
アルトは顔を離した。私は睨みたくなった。前は問答無用だったのに……。
「――ねえ、シャーロット。俺、夢見るんだ」
「……夢」
アルトはどんな夢を語るというの。彼は向かいの本棚にもたれかかりながら、遠くを見ていた。
「君にキスする夢。感触がリアルで、すごく柔らかかった。俺は歯止めが効かなくなってて……君に拒まれているのに、俺は止まらないんだ」
「アルト……」
アルトは目を伏せていた。彼にとって、望ましい夢のはずなのに。誰よりも彼が悲しそうだった。
「最初は、自己嫌悪で目が覚めていたのに。今じゃもう、それも薄れていた――ああ、現実になったらなって。そう願うばかりになっていた」
アルトは私を見つめていた。
「シャーロット。俺、もう止まらないんだ。君への愛が溢れ過ぎていて……どうしようもなくて」
アルトは切なそうに言う一方で。その顔は――多幸感に満ち溢れてもいた。
「さてと。あと一箇所くらいは回れるかな?」
今回は一箇所ごとの滞在時間が長かったから、もうそのような時間となっていた。
「……ううん、充分。今日はありがとう。楽しかった」
「そう」
アルトはあっさりと応じた。これでお開きになるのなら、と私の心も軽くなった。
「……時間は、たっぷりあるからね」
よく聞くようになった、アルトの言葉。不安が残るものだった。
女子寮への帰り道。明日も一緒に過ごさないか。アルトからの誘いがあった。
「まだ案内したいところあるし……下心満載だったの、反省してます」
アルトは肩を落としていた。『健全じゃなかった』とも自白していた……うん。
「今度は明るいとこ、行こう? 園芸部がハーブティー提供してくれたり。ほら、モフモフスポットもあるから。従業員さん達が飼ってる子らがいて、人懐っこいみたいだよ」
まだまだデートスポットはあるんだって。自分の欲望寄りだったのを反省し、私が喜びそうなところまで提案してきた。
「あの、アルト。すごく魅力的なんだけど。私、女子寮の人達とお話してみたいなって」
私はやんわりと断った。女子寮の人と交流したいという理由もつけた。
「……そう」
アルトはそれだけだった。これも応じてくれた。何も言わないのが……逆に怖かった。
「ねえ、アルト――」
「気にしなくていいんだって――時間はまだまだあるんだから」
「……」
時間なんてない。あと、一日二日だけなのに。それをどうにかしたくて、私たちは繰り返しているのに。アルトはそればかりだ。
女子寮で時間を過ごして、自室でモフモフと戯れる。散歩にいけない分、リッカと遊んだ。
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ただ、待つ身である自分に――。
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