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第一章
降り積もる雪のように
「どうして……」
また、だった。容疑者とされた私を殺したのは、またしても金糸雀隊だった。
今回もまた女神像は壊されてしまった。警備がついていたにも関わらずだった。
賊は人間の動きをしていなかった。どことなく現れ、一瞬で壊していったという。そのまま立ち去ると、都の方も破壊していったという。
今回もだ。金糸雀隊を殲滅しようとしたアルトも。私を庇おうとした先生も。
最期に聞こえてきたのは、リッカの遠吠えだ。
鐘が鳴る。今回も失敗に終わった。
それからも日々は繰り返される。
アリバイが、というのなら。私は女子寮のフロア。門の近く。十字路にさしかかるところ。いずれも人通りがあるところに留まっていた。
失敗の度、場所を変えていくも。隙をついて抜け出したとされ、失敗に終わった。
手段は選んでいられなくなってきた。モルゲン先生と一緒にいたこともあった。不純な意味はない。一緒に一晩警備についていた。完徹だろうとものともしない。これで疑いが晴れるのならと思っていた。
そうなると、先生との共犯扱いとされてしまった。これも失敗に終わってしまった。
アルトを張ったこともあった。これは先生の提案によるものだ。一回目のループの時にも彼は自分がやったと言っていた。けれどそれは私を庇っているとみなされた。二回目のループの時も、結果論でもアルトが破壊したことになった。
先生が張り込むも、気を失う。意識を取り戻した時には、全てが終わっていた。兵達に協力を仰いでも――結果は同じだった。
「アルトと一晩、一緒にいれば。何か変わりますか」
面談室で話していた時のことだ。変わらぬ現状に、私は疲弊しきっていた。虚ろな目で気づけば口にしていた。
「馬鹿げている。それは許さないぞ……いや、認めないだな。却下だ」
「モルゲン先生……」
そう、そうですね……私、とんでもないことを。
「頼む。早まらないでくれよ……」
ろくに解決策もないまま、今回も繰り返しの日々に挑むけれど――結末は同じだった。
試行錯誤の中、日々は繰り返される。どう試みようと。何を試そうと。
――春の女神像は壊されてしまっていた。
繰り返しの日々を送る中、異変が起こりつつあった。
すっかり起点となった面談室にて、先生が顔を青くしながらやってきた。
「……まずいな。通用しなくなってきている」
「先生、それって」
「ああ、まともに取り合わなくなってきた」
それはループの中で薄々感じていたことだった。記憶を引き継いでいるのは私たちくらいのはずなのに。彼らが覚えているはずがないのに。
金糸雀隊も警備兵達もそう、女神像の警護に回らなくなってきていた。予告状もイタズラだと思われてきているよう。
「なあ、リッカ。他の連中は記憶がないんだよな。おかしくないか? いきなりイタズラ扱いだぞ?」
「……僕もわからない」
私の膝の上で、リッカは落ち込んでいた。答えられない自分を責めているようだった。悪くないよ、と背中を撫でるくらいしかできないよ……。
「……そうか。それじゃ、あれか。記憶がないなりに、どっかで覚えてたりするのか」
そういうこともあるよな、と先生は一つの考えに辿り着いていた。
「覚えているもの、ですか」
「ああ、そうだ。本人たちは覚えてないつもりでも、蓄積されてたりするんじゃないか」
先生の発言に、リッカは顔を上げた。
「――雪みたいだね。積もって、積もりつづけていく。でも、雪みたく溶けない。ずっと残ってるの」
「……なるほどな。でも、ずっとってことはないだろ」
「うん……」
リッカはちらりと私を見た。私は察する。リッカが例えたのは、記憶に関するものだけでないとしたら。
鳥籠の夢。扉にかけられた錠前達。変色していた毒々しいソレ。ソレは大きくなっていってる。ループを繰り返せば繰り返すほどだった。
私は青褪める。口にはしたくない、でも確認せずにもいられなくて。
「……あの。繰り返せば繰り返すほど。不利になるんじゃ」
「シャーロット。まだそうと決まったわけじゃない」
「でも……!」
私は大きな声を出してしまった。リッカがびくっとなった。
「シャーロット」
「……すみません。リッカも驚かせてごめんね」
頭に血が上っていたんだ。私は一呼吸した。
「……でも、先生。兵の人達が当てにならないなら。他にも協力を呼び掛けてみませんか?」
「うん、まあ、そうだな。爆破予告は厳しいだろうし、生徒指導だの。巡回強化だの。女神像鑑賞会だの。理由はいくらでもあるか……ツテもいるんだがな。ガラがなぁ」
「ありがとうございます。私も、私も頑張りますから」
「……ああ、頼むな」
私たちは各方面に頼み込むも、反応はまちまちだった。それでも巡回はしてくれたようでも――女神像は破壊されるまま。
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