春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

愛される日々④

 
 
 眠気がやってきた。ああ、眠い……。

「おやすみ、シャーロット……」

 私は瞳を閉じて眠りの中へ。うん、アルトは優しく頭を撫でてくれていた。お先に眠るね、アルト……。

「……」

 アルトはずっと無言で……私を撫で続けていた。アルト、君が眠るまで、そうしてくれるんだね……うん、本当にね。

 ――わたしは、しあわせ。

 幸せだった。彼の愛に包まれて、満たされていた。




 溶けない雪のようだと。そう言っていたのは誰だったのかな。

 唯一溶かしてくれるというなら。終わりを、結末を迎えられるとしたら。

 それは、彼に溶かしつくされること。彼との未来を選ぶことなのかな。



 
 懐かしい夢を見ていた――鳥籠に囚われる夢。アルトの恋人になってからは、見なくなっていたのに。

「……恋人?」

 待って、いつから? いつからアルトとそのような関係になったの? 私は頭を抱える。考えても考えてもわからない。
 違う――思い出せない。その方が的確だった。

「ううん」

 考える、やめよう。私はアルトに愛されている。それだけでいいと納得しようと。

「鳥籠か――囚われているのかな」

 もし自分が囚われているというのなら。私は包囲している鳥籠を見渡した。
 柵は人の血管のような色をしていた。脈打っていて、生きているようだ。
 巨大な赤黒い錠前も主張していた。鍵穴が唇の形をしており、舌ものぞかせる。今か今かと他の錠前達を飲み込もうとしていた。

「……アルトみたい」

 自分を愛し、自分も愛している彼を彷彿させた。あんなグロテスクなものと重ねるなんてと、私は苦笑いした。そう、気色悪い見た目だ。それでも私にとっては、心惹かれるもので。

「アルトに囚われるなら、いいかな」

 血のような鳥籠に囚われた私は、幸せに酔いしれていた。

「……?」

 鳴き声がした。くーんと悲しそうな鳴き声が。暗闇の中から現れたのは、小型犬だ。私の前に現れると、お座りをした。

「君は――」

 私は犬の名前を呼ぼうとするも……思い出せない……犬の記憶すらない。

「シャーリー」

 それなのに。犬が喋ったのに……私は驚くことはなかった。自然とさえ思えていた。

「……シャーリーは、幸せ?」
「え……」
「これが、シャーリーが幸せなこと? 望んだこと?」
「それは……」

 犬は責めているわけではない。そう、犬は。

「私は、しあわせ。うん……しあわせだよ」
「そっか……シャーリーが幸せならいいや」

 責めなどしなかった。犬は口元を緩めて笑っていた。ただ私の幸せを純粋に願っているかのようだった。犬は後ろ姿を見せて、歩いていく。

「あ……」

 行っちゃうの……君は。どこへ行こうというの。

「待って!」

 何故だかわからない。それでも、去る犬を呼び止める。

「……」

 何を言うこともなく、犬は暗闇に溶けていった。




「!」

 私は目が覚めた。息が荒く、冷や汗も止まらない。部屋は暗い、夜も明けてない。

「……シャーロット、怖い夢でもみた? 途中まで幸せそうだったのに、なんかうなされてたから」
「起こしてごめんね」

 アルト、目が冴えている感じ。起こしちゃったんだ……ごめんって、そう思った私は彼に謝った。

「ううん、全然。ほら、おいで」

 アルトは腕枕をやめると、私を包み込んだ。うん、安心する……。

「……」

 夢の内容はもう覚えてはいないのに。それでも、私の胸の痛みは消えてなかった。



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