春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

真犯人――女神像破壊事件


 学園から村へ至る道。途中で国の都につながる道がある。私たちは駆け抜けていた。

『今から通信をつないだままで。共有しておきたくてな』
「わかりました」

 走っている最中だった。先生からの連絡があった。

「それで、先生。そちらは――」

 映像に衝撃を受けてしまった。警戒する先生に対して。

 ゆったりとした動きで現れたのは――今回の事件の真犯人の『彼』。

「……君なんだね」

 あの囚われていたルートも。それだけではなかったんだ。これまでのルートでも。彼だと思えるところはいくつもあった。自白していた時もあったのに、勝手に思い込みで信じてしまっていた。

「君が……そうなんだ」

 私も……先生だってそうでしょう? 君じゃなければって……思っていたんだよ。でも、そうじゃないから。

「――アルト」


 女神像破壊事件の真犯人――アルト・モルゲンが、そこにいた。


 先生からの映像は続いている。リッカが声が聞こえてるのを不思議がっていた。後で仕組みを教えておこう。もうちょっと待っててね、リッカ。

「先生……!」

 先生はみるからに劣勢……防戦一方だった。アルトの強さが尋常じゃない。

『邪魔だよ、兄貴。元々邪魔だったけど。ほんと、今はやめてほしい――俺、今から壊さなきゃなのに』
『アルト、お前……壊さなきゃって、何だよ。まず、どうしてこんなことをしたんだ』
 兄弟の会話も聞こえてきた。そうだよ、アルト。壊さなきゃって……?

『うるさいな……ただでさえ、シャーロット不足で機嫌悪いんだからさぁ。ねえ、兄貴。あの子見てない? あんたなら知ってんだろ』
『さあ? 見てないな』

 先生はしれっと答えた。それがよりアルトを苛立たせていたようで。

『ぜってぇ、嘘だろ。まあ、いないみたいだし。こっち壊してからかな……ってわけで、どいて』
「アルト……」

 アルトが真犯人だとしても、こうして目の当たりにした、してしまった。私は堪えるものがあった。それは、兄である先生も同じなはず。

『それは出来ない相談だな、アルト!』 

 先生は……アルトとやり合う気だった。彼の魔力によって、辺りは炎に包まれる。女神像をも覆う、強い炎の力だ。アルトが飛び込もうにも、炎に阻まれてしまっていた。

『まじ邪魔なんだけど……!』

 火傷しようが、アルトはおかまいなしだった。突入しようとするも、今度は炎に押し返されてしまっていた。

『クソ兄貴……』
『アルト、お前はわかってるよな? どうしたら、これが消えるかってことくらい』

 ギルド知識の復習な、と先生は言っていた。煽りともとれるような。

『うっぜぇ!』
「!」

 アルトは先生を蹴り飛ばていた……! 先生の痛ましい姿に、私は今すぐにでも救援に向かいたいのに……!

「でも、私は……!」

 自分の戦いも待っている。アルトの狙いはもう一つあるのだから。

『ぐはっ……正解だ、アルト……そのまま――俺を殺せば、炎は消える』
『!』

 アルトの動きが止まった。振り下ろそうとした足は、宙で止まったままだ。

『……お前は……無抵抗の人間を……そうするわけだな』

 ――親父と一緒だな、と先生は加えていた。

『……それにな、俺だって黙ってやられるわけにもいかない。お前がその気なら……こっちも覚悟を決めさせてもらう』

 ――俺はしつこいぞ、と。弱っているのは先生の方なのに。

『……っ!』

 圧されているのは――アルトの方だった。

『……くそ、後回しだ。今だけは生かしてやる』

 アルトは足を下ろすと、踵を返した。

 アルトは学園の方は後回しにし、今度は都の大型の方を狙いに行くんだ。今はまだ、理性が残っている……でも次に対峙した時には――先生かアルト、どちらかの最期になってしまう。

『……俺も、かけつける。悪いな、今立ち上がれなくてな』
「先生。今は喋らない方が」

 アルトに相当やられていた。先生は一方的にやられっぱなしだった。あの炎の魔力があれば、アルトも封じ込められたはずなのに、それなのに。

『はは、確かにな……恰好つかないな。そうだな……お前なら、あいつを救ってやれる気がするんだ――頼んだ、シャーロット』
「私は……」

 私は自身に問う。アルトのことをどうしたいのかと。この事件の真犯人でもあり、狂人でもあった彼。私が出せる答え、それは――。

「今は、まだ……でも、私は。未来は見たいです」
『十分だ、シャーロット――』

 通信はそこで途切れた。原因は先生側の機体の故障によるものだった。

「シャーリー。僕もね、未来が見たい!」
「……うん。それじゃ、もうひと頑張りだ!」
「うん!」

 都まではもう少しだ。私たちは走りだしていく――。


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