春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

君は強い子なのに

「ふう……」

 私は息を吐いた。もう魔力を使い果たしてしまった。リッカも一度地面に下ろすことにした。ごめんリッカ、力もほとんど残ってなくて……リッカも地面に座り込んでいた。緊張していた彼の顔も綻んでいた。

「えへへ、シャーリィ……」
「お疲れ、リッカ。頑張ったね……」


 リッカ様様だね。
 リッカが走り回っていたのは、逃げる目的。そして、口にくわえていた魔力増強剤をまき散らすことだった。ぐるぐる回ってもらったんだ。

 凍りきった女神像。油断せずに守り抜けばいい。金糸雀隊だって凍ったままだ――真犯人であった彼も……。

「……可愛い顔して、やることえっぐいわー」
「……!?」

 氷を砕く音がした――アルトが内側から粉砕していたのだ。人間業じゃなかった。

「すっげ、あいつらカチンコチンだねぇ。これ、シャーロットの仕業でしょ? 今、俺がガーンってやったら、こいつら砕け散る?」

 試そうか、とアルトはノリで言っている。

「……アルト」

 彼が……よりにもよってアルトが動けてしまっていた。私はそれでも諦めたくなくて。

「……アルト。もうやめよう。どんな理由があって、君にはさせたくない。私は、止めるから」

 像を庇うように、アルトの前に立ちはだかった。

「シャーロット、へろへろじゃんか。やめなよ、無理するの」
「やめないよ」
「別に君を気絶させるくらい、出来るし。だからどいてよ」
「どかない」
「……シャーロット、勝ち目ないでしょ」
「私に凍らされたのは誰? それに、私だけじゃない。私は一人で戦ったわけじゃない」

 私は譲らなかった。リッカや、モルゲン先生。自治委員会の協力もあったからだ。

「なにそれ。仲間は強い理論? 君はぼっちだったじゃん。人が怖かったじゃん。俺と出逢うまでさ」
「……はは、うん。そうだね。今でも怖いよ。でも、出逢えたんだ」

 ……結構、えぐいこと言ってくれるな。耳が痛い、それでも私は屈しない。アルトはアルトで失言だったかと気にしているようで。

「……今のは言い過ぎた。ごめん、シャーロット――」
「謝らないで。本当の事だし。あのね、アルト」

 アルトに対しては構えたまま、それでも。もう顔が強張ることもないから。彼に伝える。

「このまま、君に女神像を壊されたら困るんだ。未来がなくなっちゃう」
「急に何を言い出して……!?」

『私は、やり直しにきたの。私達が死んだ未来を変える為に』
『うん。女神像が破壊されることになって、私が容疑者なってしまった』

 アルトにはないはずの記憶、それなのに。どこかで覚えている、アルトはそんな感覚なのかな。

「――『私たちが死んだ未来を変える為』に。『容疑者』にならない為に?」

 頭を抱えた彼は、私がかつて言っていた言葉を反芻していたから。

「シャーロットはずっと、ずっと君は……」

 アルトが小さく呟いた。『アルト?』と私が聞き返すと、彼は首を振った。

「……」

 私が伝えたいこと、本当に伝えたかったこと、伝えるね。アルト?

「――アルトも仲間であってほしい。今ならまだ間に合うよ。私達の未来に、君もいてほしいの」
「シャーロット……」

 アルトは立ち尽くしていた。彼は女神像を破壊することもなく。

「信じられない話だとは思うけど――」
「信じるよ」

 アルトはまっすぐに。

「あのさ、シャーロット。俺は心配もするし、しょっちゅう不安にだってなる。これから先もずっとそんなだけど。でも、それは君を信じてないからじゃない。俺が勝手にそうなだけだよ。それにね」

 彼は悲しそうに笑って、私に向けて。

「……君は強い子だって。俺、ずっと知ってたはずなのに。力ばかりが強くなって、それでやっと君を守れるようになるって浮かれて。俺……驕ってたんだ」

 アルトはそう言うと、自分の左胸に手をあてた。

「――こいつ、もういらないや」
「アルト!?」

 アルトは突如、自分の胸部をもぎりとっていた。私は仰天せずにはいられない。けれども。
 実際はアルトの心臓や器官ということではなく、赤黒いゼリー状のような物体だった。それを彼は――握りつぶして消滅させていた。

「……深夜のクエストだったってこと、それだけ覚えてる。なんか、コイツと出くわしたのかな。それから調子が良かったから。まあいいかなって」
「そこは気にしようよ……」

 アルトの暴走もあの物体が原因だったのか。だったらと私は想像してしまって。
 ――アルトがあの日、深夜クエストにいかなければ。それが正解だったのか。

「……ううん」

 それは違うと、私は思うことにした。過ぎた話ではあるし、それに。前のように見過ごしていたら……いずれは爆発していたかもしれない。

「えっと、解決でいいのかな。じゃあ、帰ろうか」
「……」

 女神像は破壊されなかった。私から声を掛けるも、アルトは立ち止まったままだ。

「だってさ、結局……俺は大罪人だよ。像を壊そうとした……壊してきたんでしょ?」
「アルト、それは……」

 諦めのアルトに、私は違うと反論しようとしたところ。

「――いや? 違うぞ、アルト? 像は壊されてないよなぁ?」
「モルゲン先生!」

 のこのことやってきたのは先生だ。傷も相当負っているだろうに、平気そうにしていた。それでもって、何もしていないわけではない――彼は金糸雀隊の一人を拘束していた。

「……前みたいのは、繰り返さないからな」

 ……はい、以前もそうでしたね。一人を見過ごしてしまったから、死を迎えたこともあった。先生はその経験を役立てることが出来たと笑んでいた。




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