春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第一章

君は知らない① ※某人物視点

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 これは君が知らないこと。選ばなかった未来。



 ね、やっとだね。最後まで繋がったんだ。やっと――俺達は結ばれたんだ。

 腕の中に君がいる。やっと、やっとだ。

 やっと、君を手にいれたんだ。君は俺の物になった。

「あれ、起こした?」

 まだ夜明け前なのにね。起こすつもりはなかったんだ。まだ寝てていいよ。え、俺? 俺は眠くないし。ずっと君を見ていたい。

「あれ、なんで顔隠すの? ねえ、見せて?」

 照れてるんだろうけどね。恥ずかしいよね。わかってるけどね。でも、見たいじゃん。 

「今日は疲れたでしょ?」

 だってさ、籍入れに村の役所まで行って? そこから、君の着替えを手伝って。俺、髪いじるのも上手かったでしょ? 我ながら、すごいと思ったね。

「そりゃ、素材がいいのもあるけどさ」

 あ、言っちゃった。本当に、綺麗な髪だよね。俺、結構ビビってるんだ。あまりにも綺麗過ぎて、なんだろ、こう汚しちゃいけないみたいな。

「メイクもしてくれた。大人っぽくて、こう、なんか、こうって感じ!」

 いつもの君も可愛いけど、大人びた君も好き。俺、結構きょどってなかった? いつもそうだって? また、そういうこと言うんだから。

「えー? そういうこといっちゃうの?」

 俺も格好良かっただって。いや、可愛いんだけど。こんな精一杯って感じでいってきて、本当に可愛いんですけど! 俺も、ここはね。自分は適当でいいとかいってられなかったからさ。君の隣に立つわけだし。気合も入るわけで。

「二人だけの、結婚式だったね?」

 ね? 神父さんもいない。俺と君だけの結婚式。指輪の交換も行ったね。そう、お互いの薬指に。

「あの指輪、いつの間にか無くなっていたよね。いや? ない方がいいでしょ。邪魔だし」

 ねえ、不思議なんだけど。君の指にあった、あの指輪。俺、よく言ってたでしょ? 呪いのアイテムって。あ、怒った。今でもだめ? 怒っちゃう? うん、わかってるよ。君の心の支えだったって。でもね。

「俺がいるよ。だから不安なんてない」

 俺が左手をかざすと、君も合わせるようにそうしてくれた。ほんと可愛いわ。ね、お揃いの指輪。赤い宝石、綺麗だね。

「ん? 振り返っているのかって? そうだよ、一生の記念日だし。ほら、君のベールを上げてさ――誓ったでしょ?」

 君の頬は一気に赤に染まった。たった今、俺がキスしたからね。この流れでしょ。こんなん、するでしょ。

「ああ、可愛いなぁ……」

 何回してても初々しいんだから。俺も人のこと言えないけど。俺もきっと赤くなってるから。

「まだ、家族の話? いいんだって、そんなの」

 君はいつまでも気にするな。そりゃね、好きな人の家族に挨拶したいって、そういうことでしょ? あ、好きな人とか言っちゃった。まあ、事実だけど。いいんだよ、あんな奴ら。

 初夜にする話じゃないでしょ。でも、君は悲しそうな顔をしてるから。そうだね、さわりだけね。

「嫌いにならないでね」

 あれ、何言ってんだろ。俺。この子はそんな子じゃないのに。ほら、俺がそんなこと言うから傷ついてる。何やってるんだろ。俺、初めての夜だよ。こんな幸せな時にさ。話すことじゃないだろ。
 でも、君はそれでもいいって。俺がいいならって。そっか、うん。

「薄々気付いてたでしょ。俺は愛人の子、で、兄貴が本妻の子。母親がひどくてさ、産んだくせに育てきれなくなって……捨てたんだって」

 なら産むなよって。つか、子供作るなよ。二人ともちゃんとしとけよ。俺は絶対そうはしない。ちゃんとする。

「どういうつもりか知らないけど。孤児院にいた俺を引き取るとか。それからの生活を思い出すと……正直さ、孤児院にいた頃の方が幸せだったよ」

 父親も大概だよ。産んだ時には認知もしなかったくせにさ。君には言わないけど、あいつこそクソだからさ。弱者をいたぶるのは当たり前。搾取し放題。うん、クソ。俺は絶対、ああはなりたくなかった。絶対にならないからね。

「君も気にしてたよね。俺、自分のこと気持ち悪いって。よく言ってたでしょ?」

 まあ、君と出逢ってからはね? 恋をして、愛してからはね? まあ、言動はアレだったよね。もう暴走しまくってたでしょ。あれは思っていい。あれは気持ち悪い。うん、キモイ。

「君といる時はいいんだ。でも、君と出逢う前のこと。母親がね、もうしょっちょうね」

 言われるのが当たり前だったんだ。だから俺はそうなんだって。本当は傷ついてたのにね。平気なふりをしてた。だから、あんなんだったんだろうね。他人に興味ないって。そんな感じになってた。

「うん、君といる時の俺がさ。こんな俺でも好きになれるんだ。ね、『シャーリー』?」

 懐かしいでしょ。『シャーリー』って響き、可愛いよね。君も気にってくれたでしょ。ずっとそう呼んであげたかったんだけど。正直に言うね。

「俺ね、ずっと。『シャーロット』って呼び続けたかったんだ。君の服にシャーロットって刺繍されていた。だから本名だよ。君の元々の名前、一字一字、そう呼びたかったんだ」

 君は気がついていたかな。明るく振る舞っていた時はね、君が安心して、笑ってくれるようにって、シャーリーって呼んでた。

「でも、シャーロット呼びになってたって? それは、まあね?」

 たまに、シャーロットって呼んじゃってたけど。その時の俺は、余裕がなかったんだよ。あとは、ガチトーンな時とかもか。バレバレだったかな。

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