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第二章
新たなる事件、発生――財閥令嬢殺人事件
私が死ぬ度に訪れるのは、よく見る夢――鳥籠の中だった。
「なに、なんで、なんでなの……?」
私は床に座り込みながら事態を整理しようとしていた。でも考えれば考えるほど……頭がぐちゃぐちゃになってしまう。
突然の逮捕もそう……共犯者ということは、実際に殺人を行った者がいるということ。そして、殺されたのが――。
「どうして、カイゼリン様が……」
そう、殺されたのは『シェリア・カイゼリン』。
シェリア・カイゼリンはブルーメ学園、自治委員会のトップだ。朗らかで、信頼も厚くて。時には対立もし、時には助けられた。彼女が殺される理由こそ、シャーロットにはわからなかった。
「シャーリー……」
くぅーんと鳴くのは純白の犬。リッカだった。私があげたケープもつけている。
リッカはこうして夢に訪れてくる。
この子との出逢い、それは学園の女神像の下だった。
最初は汚れきっており、傷だらけだった彼。人間が恐くて仕方がなかった彼だったけれど、次第に心を開いてくれた。彼が人語を喋れることも判明した。
春の女神がご主人様、リッカはそう言う。女神のように、人の助けになりたいと望んでいた。
リッカはこの繰り返しの日々の記憶も持つ。私の相棒として、共に力を合わせて乗り越えようと誓ってくれたんだ。
「リッカ!」
そうだよ、突然殺された身からしてみたら。その後、リッカ達がどうなったかわからなかった。
「僕も、よくわからないんだ。放送が聞こえて、シャーリーを探そうとして……そこまで」
この平和な国に起きた事件は、殊更重要視された。犯人確定、もしくは容疑者の段階でも国中に知らせる放送が響き渡る。この放送によって知らされることもしょっちゅうだった。
「そっか……」
突然だったもんね。本当に突然過ぎて。ただ、わかることは。
「このまま平和でなんて、いさせてくれない」
「うん……」
また事件が発生したのだから。となると、繰り返しの日々を送ることになる。あの、死が容易に訪れる日々を過ごすことになるということ。
「……」
怖い。私にとって、死は怖ろしいままだよ。
「リッカ。私は逃げないよ――また力を合わせよう」
だとしても。乗り越えたからこそ、手にした未来もあった。私は前を向く。
「うん、シャーリー!」
リッカもやる気だ。二人は頷き合った。
「それじゃ、寝ようか。おやすみ、リッカ」
「おやすみ、シャーリー……」
次、目覚めた時は。苦難の日々が待ち受けていることでしょう。私は丸まるリッカを見た。君はね、私にとってかけがえのない存在なんだよ。
「乗り越えようね、リッカ」
私も瞳を閉じた。日々の訪れを待つ。
囚われの少女は――今宵も鳥籠の中で眠る。閉じ込める錠前は、籠の中の鳥を逃しはしないのだと。
錠前は、大型が一つに中型が三つあった。
その一つが、揺れていた。
まるで、新たに捕らえようとする存在を――知らしめるかのように。
鳥のさえずりがする。このエーデル村にも朝が訪れていた。私は自室のベッドで微睡んでいた。近寄るのは小さな影……?
「ん……」
頬に何かの感触を感じていた。何かがに舐められているようだった。小さい舌でチロチロと? 不快感はないものだった。
「――シャーリー、起きてー」
「……リッカ? おはよ」
子供の声、これはリッカによるもの。目を覚ました私は、リッカの顎あたりを撫でていた。リッカも嬉しそうにしていた。
「アルトが来てるよ」
「……アルト?」
ああ、と私は思い出した――また、ループが始まったとしたなら、この日は十二月の初めのはず。徹夜明けでハイになったアルトがやってくる日でもあった。
アルト・モルゲン。同じ孤児院出身の幼馴染だった。彼の明るさに助けられてきた。ところが強い執着心によって、彼は暴走してしまっていた。
私が見る鳥籠の夢。かけられた錠前の一つは、このアルトによるものだった。一連の事件を経て、彼はその錠前を自ら破壊した。
『君を解放するね』
この言葉と共に。
「……」
あれから、アルトは変わったともいえるし、変わってないともいえた。
「……ありがと、リッカ。行ってくるね」
「うん、おやすみ」
と言うと、モフモフはおやすみの体勢になった。直後、爆睡した。アルトならって、安心したんだね。私は静かに部屋の扉を閉めた。
待たせているということもあり、私は最低限の身支度をした。いつもはまとめている長い髪はそのまま。服はいつもの着慣れたものに、コートを羽織っただけ。玄関の外にいるアルトの元へと急ぐ。
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