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第二章
ベッド
「……シャーリーやアルトからもらったの、無くなってる。僕、失くしちゃったのかな」
「そんなことないよー。リッカは悪くないよー」
さらにリッカがしょげてしまった。私が用意したおもちゃ箱や、アルトからのぬいぐるみも。それから、リッカ用の水が出てくる装置も――跡形もなくなくなっていた。
「……また、買わなくちゃ」
私もしょげてしまっていた。いい値段がするのもだけど、装置自体も大きいので持って帰るのも大変だったんだよね。リッカが心配そうに見てきたので、私は安心させるように笑ってみせた。
つい弱気になっちゃった。私にとってはなんのその、可愛いリッカの為なんだ!
「……こんなん、プレゼントチャンスでしょ。好感度上がるでしょ」
虎視眈々と狙っている人がここにいた。アルトがブツブツ言っている。自作してもいいが、買った方が早いのではないか、とか。これは株が上がるだろうと、とか。ブツブツと。
「これは喜ぶ。もっと貢ぎてぇ……」
「アルト。こっちで用意するから。私のことはいいから」
「おっと。リッカにですが? シャーロットと同じで、リッカの為に貢ぎたいのですが?」
「はっ……!」
いくらなんでも自惚れが過ぎた……! 私は顔が赤くなる。これは恥ずかしい……。
「なんてね……俺が一番、貢ぎたいの、君だし」
「!?」
アルトに迫られ、至近距離となった。かなりの顔の近さに私の赤面は止まらない。自分から迫っておいて、アルトまでも顔が赤くなっているという……。
「そうだよね、シャーロットはもうわかってるもんね」
「な、なにをかな」
「俺が君のこと、本当に好きだってこと。真っ先に君を喜ばせようと思ってるって……嬉しいなぁ」
アルトは幸せそうに言っていた。
「二人はとっても仲良しだね……ふわぁ」
足元のリッカは、素直な感想を述べた。眠そうだね。
「そうだろそうだろ。こんなん、もう付き合ってんじゃん……?」
「その、付き合ってはいないかな。リッカ、まだ早いからね。寝てたら?」
「現実つれぇ……」
ばっさりと言われたアルトは落ち込む。口にした当のモフモフは本当に眠そうだった。
「うん、おやすみなさい……そうだ、アルト。ベッドはね、変わってたよ。ふかふかなんだ……ふわぁ」
わふっ、と無垢なモフモフはそう言い残し、暖炉の前のソファまでとてとて歩いていった。ソファまでジャンプして乗ると、そのまま爆睡した。
「……ベッド。シャーロットのお部屋のベッド」
「あわわわわわ」
なんという発言を残していったのか。私はうろたえる。
そうだった……私の部屋は維持されているものがいくつかあった。まず一つが、自室のベッドだった。これは、まずい。非常にまずい……使っておいてだけど。
「そ、その、ベッドはね……?」
作ったのは――別のアルトだ。しかも、『あの時』のアルトであって。
こちらの本心としてはね、快適な眠りを送れるようになったので感謝はしたい。このアルトにだってお礼は言いたい、でも、私の心情的にどうしても言えないことで……! ごめん、アルト……! ごめん――。
「……繰り返しの日々でね、『君』が……うん、見かねたということで作ってくれたんだ」
良心の呵責に耐えられなかった。間違っても嘘でもない……うん。
「ほんとずるい。俺だけどずるい……!」
アルトは別の自分に向けても、不満を向けていた。
「でもベッド、使ってくれて――」
一方で、アルトは顎に手をあてて考えていた……顔を真っ赤にしながら。
「――というかね、君も作ろうとしてくれていたのにね、そこはごめん! おかげ様で快適だよ? 大熟睡大熟睡! ベッドは快適な睡眠ライフの為だから!」
私はまくしたてた。今のアルトが大丈夫とはいえ、不安要素は潰しておきたい。たとえ説明過多だろうと、捲し立てていた。
「う、うん、わかった。わかった、シャーロット……」
あのアルトが圧されるほどだった。私はこっそりと一息ついた。これでよし、と。
「……ベッド、ねえ」
そのことに夢中な私は気にしていなかった――アルトのその時の表情など。
「……」
……それにしても。あのベッドをまた使うとなると……どうしても思い出してしまう。平気になるまで、新しいベッドでも買おうかな……? 中古とか探してみたりして。
せっかく作ってくれたのは、うん……使ってない部屋で待機してもらって。
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