91 / 557
第二章
入学の件、謹んで
何度目の来訪かになるのかな。ここは、王立ブルーメ学園。
石造りの歴史ある建物に、いくつもの建物が連なる。校舎は初等部、中等部、高等部と分かれていた。正門から見えるのが本校舎、そこに、高等部の教室もあった。
「あの、すみません。シャーロット・ジェムと申します。推薦状の件で参りました」
門番さんに挨拶をした。向こうも挨拶をすると、推薦状を確認していた。国章もしっかりとある、正式なもの。
「――かしこまりました。しばらくお待ちください」
「はい。お願いいたします」
門番さんは責任者を呼んでくれるようだ。いつもならここでモルゲン先生が来てくれる。げんなりするアルトを宥めつつも、待つことにした。
しばらくして、校舎の方から男性がやってきた。先生かと思ったけれど……あれ?
「……?」
「ふぉふぉふぉ」
先生ではなくて、ご年配の男性が立っていた。迎えにやってきたのは、こちらの方?
「あ、学園長じゃん。こんにちはー」
「学園長……?」
犬を抱っこしたアルトがさらりと言う……なるほど学園長。私の推薦は匿名だという、承認したのはこちらの学園長ということで。
「……初めまして。シャーロット・ジェムと申します。この度はお招き預かりまして光栄です」
「ふぉふぉふぉ。私はポラールです。学園長じゃよ……お、ワンちゃんかい? かわいいのう」
人の良さそうな男性だ。リッカも尻尾を振っている。学園長は笑みを浮かべた。
「――して、シャーロットさん。前向きに考えてくれておるかのう?」
「!」
向こうから話してくださったこと、私は驚いてはしまった。うん、願ったりかなったり。話が早く済むよね。返答しよう。
「――はい。入学の件、慎んでお受けいたします」
「……シャーロット!?」
アルトも大きく反応していた。
「神展開だけど……。つかさ、断る、それか保留かと思ってたのに……」
と、アルトは戸惑いが勝っているようだった。
「ふぉふぉふぉ。では、爺に付き合ってくれんかのう。手続き諸々もあるのじゃ。私の秘書も紹介するぞい」
「はい、ありがとうございます……アルト、またあとでね」
今は学園長についていくことにした。先行く彼に、私も慌ててついていくことに。
「……うん、話聞きたいし。リッカ、俺の部屋で預かっておくから」
「ありがとう。お願いね。リッカもいい子にしてるんだよ……リッカ?」
アルトの腕の中のワンコが、がたがた震えていた。
……うん、アルトの部屋。こう、アレな気持ちになるよね。リッカにとっても良い思い出ではない場所。そんなリッカは別のことに恐怖しているようで。
「……できない。僕、おしっこ、あそこで絶対にしちゃいけない」
リッカは小さな声でもらしていた。アルトの腕から下りると、そこらの茂みに入っていった。
「ああ……」
私も納得した。あの整理整頓され過ぎた、綺麗な部屋だ。糞尿で汚そうものなら、どうなることか。
「いや、そこまで怒りはしないけど。つか、しつけるだけだし――って、こっちはいいよ。ほら、学園長あんな遠くだし」
「あっ」
マイペースなおじいさん。かなり先に行っていた。
「あとは頼みましたっ! ――遅れてすみません、今参ります」
いつまでも来ない私に、学園長は一旦立ち止まって待ってくれていた。うん、追いかけないと……!
「……一応あいつと話、しておくか」
アルトの呟く声が聞こえた気がした。
私は学園長室に通された。本校舎の学園に関する説明。諸々の手続き。学園長の秘書によって行われた。何枚もの書類に必要事項を書いては確認し、そして、また書いてを繰り返す。
「……」
保護者の項目があった。そこで私の筆が止まるも、学園長が教えてくださった。出身のジェム孤児院、そこの院長が保護者となってくれたと。
「……院長先生」
優しい女性だった。私たち孤児も懐いていた。涙ぐみそうになるのを抑え、項目を埋めていく。
残すは、実印――学園に入学するか、これで本決定となる。
「――よろしくお願いいたします」
私は押印した。晴れて、ブルーメ学園の学生となった。
「ふぉふぉふぉ。よろしくのう」
学園長は新たなる生徒の入学を歓迎した。
石造りの歴史ある建物に、いくつもの建物が連なる。校舎は初等部、中等部、高等部と分かれていた。正門から見えるのが本校舎、そこに、高等部の教室もあった。
「あの、すみません。シャーロット・ジェムと申します。推薦状の件で参りました」
門番さんに挨拶をした。向こうも挨拶をすると、推薦状を確認していた。国章もしっかりとある、正式なもの。
「――かしこまりました。しばらくお待ちください」
「はい。お願いいたします」
門番さんは責任者を呼んでくれるようだ。いつもならここでモルゲン先生が来てくれる。げんなりするアルトを宥めつつも、待つことにした。
しばらくして、校舎の方から男性がやってきた。先生かと思ったけれど……あれ?
「……?」
「ふぉふぉふぉ」
先生ではなくて、ご年配の男性が立っていた。迎えにやってきたのは、こちらの方?
「あ、学園長じゃん。こんにちはー」
「学園長……?」
犬を抱っこしたアルトがさらりと言う……なるほど学園長。私の推薦は匿名だという、承認したのはこちらの学園長ということで。
「……初めまして。シャーロット・ジェムと申します。この度はお招き預かりまして光栄です」
「ふぉふぉふぉ。私はポラールです。学園長じゃよ……お、ワンちゃんかい? かわいいのう」
人の良さそうな男性だ。リッカも尻尾を振っている。学園長は笑みを浮かべた。
「――して、シャーロットさん。前向きに考えてくれておるかのう?」
「!」
向こうから話してくださったこと、私は驚いてはしまった。うん、願ったりかなったり。話が早く済むよね。返答しよう。
「――はい。入学の件、慎んでお受けいたします」
「……シャーロット!?」
アルトも大きく反応していた。
「神展開だけど……。つかさ、断る、それか保留かと思ってたのに……」
と、アルトは戸惑いが勝っているようだった。
「ふぉふぉふぉ。では、爺に付き合ってくれんかのう。手続き諸々もあるのじゃ。私の秘書も紹介するぞい」
「はい、ありがとうございます……アルト、またあとでね」
今は学園長についていくことにした。先行く彼に、私も慌ててついていくことに。
「……うん、話聞きたいし。リッカ、俺の部屋で預かっておくから」
「ありがとう。お願いね。リッカもいい子にしてるんだよ……リッカ?」
アルトの腕の中のワンコが、がたがた震えていた。
……うん、アルトの部屋。こう、アレな気持ちになるよね。リッカにとっても良い思い出ではない場所。そんなリッカは別のことに恐怖しているようで。
「……できない。僕、おしっこ、あそこで絶対にしちゃいけない」
リッカは小さな声でもらしていた。アルトの腕から下りると、そこらの茂みに入っていった。
「ああ……」
私も納得した。あの整理整頓され過ぎた、綺麗な部屋だ。糞尿で汚そうものなら、どうなることか。
「いや、そこまで怒りはしないけど。つか、しつけるだけだし――って、こっちはいいよ。ほら、学園長あんな遠くだし」
「あっ」
マイペースなおじいさん。かなり先に行っていた。
「あとは頼みましたっ! ――遅れてすみません、今参ります」
いつまでも来ない私に、学園長は一旦立ち止まって待ってくれていた。うん、追いかけないと……!
「……一応あいつと話、しておくか」
アルトの呟く声が聞こえた気がした。
私は学園長室に通された。本校舎の学園に関する説明。諸々の手続き。学園長の秘書によって行われた。何枚もの書類に必要事項を書いては確認し、そして、また書いてを繰り返す。
「……」
保護者の項目があった。そこで私の筆が止まるも、学園長が教えてくださった。出身のジェム孤児院、そこの院長が保護者となってくれたと。
「……院長先生」
優しい女性だった。私たち孤児も懐いていた。涙ぐみそうになるのを抑え、項目を埋めていく。
残すは、実印――学園に入学するか、これで本決定となる。
「――よろしくお願いいたします」
私は押印した。晴れて、ブルーメ学園の学生となった。
「ふぉふぉふぉ。よろしくのう」
学園長は新たなる生徒の入学を歓迎した。
あなたにおすすめの小説
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。
若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。
そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。
……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。