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第二章
みんなのアイドル
「うう、流されていたかも……なんとか、なんとか……」
自分の自制心を誉めながら、私は学園の廊下を歩いていた。出口となる玄関口に向かっていた。
「……」
図書室での一時は落ち着いていたのに、聖女と謳われるクラーラ・メーディウムで一気に空気が変わった。この学園、どういうこと……?
「……?」
玄関先で、男女の人だかりが出来ていた。こちらが通ろうにも、そうはいかなかった。
「あの、すみません――」
私は謝って通ろうとするも――。
「――すみません、じゃないっての。あんたの声が入ったじゃないのよ!」
愛らしくもカン高い声でもあった。その声の主は、人だかりの先にいる少女だった。
「わあ……」
私は目をぱちくりとさせた。これはまたもの凄い美少女が……!
黒いツインテールの髪に、大きな目は睫毛は増し増し、唇もぷっくり艶やかだった。自身の可愛さがわかっているうえでの、完成度の高いメイクだった。
彼女は制服を着ているようでも、既存のものからはかけ離れている。フードやフリルまでつけたアレンジしまくりのものだった。
「もう、やり直しだわ!」
一人の男子生徒が撮影用の小型装置を彼女に向けていた。声入りの映像をとっていたようだ。囲んでいる人達は、取り巻きや見学客の人たちなのかな。
「その、お邪魔して申し訳ありませんでした」
邪魔をしたのなら悪いことをしてしまったと、改めてお詫びをした。
「……ま、いいけど。よしとしてあげる。『リナ』は優しいから! わかったら、大人しく見てなさいよ」
「はい、気をつけます」
「ふふん――最初から、おねがーい」
気を取り直したのか、彼女達は撮影を再開した。私もこの撮影が終わるまでは動けない。大人しくしておくことにした。
「はい、てっしゅー! 次は、リナが廊下を歩くシーンよっ」
女生徒の一声で、集団はずらずらと歩いていく。集団は彼女のファンであり。先頭を歩くこの少女は、さながらスーパースターのようだった。
「……すごかった」
最初はただの見物人だった私、見ている内に彼女の表情などに目を奪われるようになっていた。冬花の頃の、アイドルに対する情熱が蘇るようだった。
「というか、あの人――」
私は徐々に思い出していた。都に赴いた時、目にする顔だったから――。
「――リナ。リナ・ゼンガーさん」
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私はこちらの方がピンときた――ゼンガー姓の彼女。国民的歌手『ルイ・ゼンガー』氏。その人の娘さんってことだよね。
「有名歌手の娘さんまで……こう、すごいところに来ちゃったんだ」
私は立ち眩みをしそうになった。すごいところに自分は入学をしてしまったのだと。
「これこそがブルーメ学園」
一部であろうと、私この学園のことを知ることができた。あとは――。
「……カイゼリン様も、すごい方なんだよね」
学園の秩序を守る生徒主導の組織――『自治委員会』の長にして、カイゼリン財閥のご令嬢。
――シェリア・カイゼリン。その人こそが、私の入学の決め手でもあった。
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