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第二章
兄貴ってさ
「……はあ、いってら。リッカとお留守番してるわ。あ、でも。兄貴は先行ってて」
「どうしてだ」
「リッカのことで話があるんだよ。ほら、行った行った」
「……なんなんだ。職員寮の外で待ってるな」
先生の退室を確認すると、アルトがリッカを抱え込んだ。彼の話は何かと緊張する私と、アルトの部屋行きで緊張しているリッカ。アルトだけが飄々としていた。
「この子のトイレ事情の話、しときたくて。リッカ、なんか緊張しっぱなしでさ。ここで、ようやくした」
「ここでって……なるほど」
リッカは面談室で致したようだ。
「ごめんなさい。ここ、シャーリーの匂いがして、安心して……」
当人は気まずそうに目をそらしていた。私は怒ることはしなかった。緊張してたんだから……。
「そっか。次、気をつけようね。でも、そうだね。場所とか決めてなかったな」
シャーロット・ジェム家だと、リッカの申告で外に出してさせていた。
「うん。次はちゃんとお外でする。学園でもそうする」
「うん、そうしようね」
次に期待して、私はリッカをなでなでした。
「……アルトのお部屋は、我慢する」
「我慢しなくていいっての。リッカ、即席だけどトイレ用意するから。そこでするよう、覚えような?」
「……うん」
リッカは頷いた。リッカのトイレ問題は片付いた。アルトの話はこれで終わりかと思ったけれど。
「あと、シャーロット。なんか言わないのもだから、言っとくね――兄貴、独身だから」
「……え」
「なんかー、薬指チラチラ見てるからー、俺としては面白くはないけどー。あ、ちなみに相手は知りません。そのうち親にでも紹介するんじゃない?」
知らんけど、とアルトはどうでも良さそうにいった。アルトにとってはどうでもいいこと。自分だってそうだと、私はそう考えた。結局はお相手がいるということ。それ以上でもそれ以下でもないと。
「……うん。教えてくれてありがと。同じ薬指に指輪がある者同士、どうしても目についちゃって」
「あー、それね。……呪いとかは、もう言わないけど。謎だよね」
私にもある、左手の薬指の指輪。生まれた時からあるものだった。成長した私の指にもジャストサイズにはまっている、謎は謎の代物だった。
「じゃあ、そんなとこだけど。ああ、行かせたくねぇ……でも、大事な話なんだよなぁ……」
アルトはリッカを盾にして、私に『行って』とお願いした。去りゆく私を彼は見ないようにしていた。
「う、うん。またね、アルト」
「はい、またね来た! うん、またね!」
リッカを盾にしながらも、浮かれきった声が聞こえてきた。うん、リッカを迎えにだし。それまでアルトにお願いして、と。
「あとね、シャーロット! 明日は俺とデート、お願いしまっす!」
明日? ……前なら確かに学園を案内してもらっていたけれど。というか。
「デート?」
「……うん、あれだ。学園案内。明日、女子寮に迎えにいくからー」
「う、うん……?」
アルトの中で決定事項のようだった。そうだね、反対することもないよね。
「アルトと一緒にお散歩だね」
「うん!」
私の言葉に、リッカは嬉しそうに頷いた。楽しみだね!
「あれ? 俺、華麗にデート回避された……?」
明日は休日。授業が始まるのは、明後日からだ。リッカとの時間も減る。束の間の休日を楽しむことにした。
「お待たせしました、モルゲン先生」
教職員寮の外で、先生が待機していた。雲が流れるのを見ていた先生、こちらの方を向く。
「いや、全然だ――アルトがよく解放してくれたな」
「……。アルトもわかってくれてますから」
先生に故意はないんだって、それでも私はドキッとしてしまった。
「この後、吹雪くんだよな」
「……はい」
これだけ晴れているのに、この後天気が大荒れになる。そう、モルゲン先生も私も知っている――この日を迎えたことがあるから。
「不思議だよな……なあ、シャーロット。また、始まってしまったな」
「……ですね」
ようやく訪れた平穏の日々も、今は遠ざかってしまっている。また、大切な人を失う日々の始まりなんだ……。
「心配するな。俺がついている」
「!」
私の頭をぽんぽんと撫でると、先生は笑った。
「ああ、今のな。アルトの前でやったのが、悪かった。あいつ、妬くしな」
「……いえ、アルトの前とかでもなくて。私としても」
私としても……困るものだった。複雑、私の心境はその一言に尽きた。
「ああ、すまなかった。今のご時世厳しいしな。撫でるのは控えるか……」
「そうですね」
先生が控えるというなら、こちらもどうこう言うこともなかった。
私たちが向かうは、本校舎にある自治委員会の活動本拠地――シェリア・カイゼリン様も待っている。
「どうしてだ」
「リッカのことで話があるんだよ。ほら、行った行った」
「……なんなんだ。職員寮の外で待ってるな」
先生の退室を確認すると、アルトがリッカを抱え込んだ。彼の話は何かと緊張する私と、アルトの部屋行きで緊張しているリッカ。アルトだけが飄々としていた。
「この子のトイレ事情の話、しときたくて。リッカ、なんか緊張しっぱなしでさ。ここで、ようやくした」
「ここでって……なるほど」
リッカは面談室で致したようだ。
「ごめんなさい。ここ、シャーリーの匂いがして、安心して……」
当人は気まずそうに目をそらしていた。私は怒ることはしなかった。緊張してたんだから……。
「そっか。次、気をつけようね。でも、そうだね。場所とか決めてなかったな」
シャーロット・ジェム家だと、リッカの申告で外に出してさせていた。
「うん。次はちゃんとお外でする。学園でもそうする」
「うん、そうしようね」
次に期待して、私はリッカをなでなでした。
「……アルトのお部屋は、我慢する」
「我慢しなくていいっての。リッカ、即席だけどトイレ用意するから。そこでするよう、覚えような?」
「……うん」
リッカは頷いた。リッカのトイレ問題は片付いた。アルトの話はこれで終わりかと思ったけれど。
「あと、シャーロット。なんか言わないのもだから、言っとくね――兄貴、独身だから」
「……え」
「なんかー、薬指チラチラ見てるからー、俺としては面白くはないけどー。あ、ちなみに相手は知りません。そのうち親にでも紹介するんじゃない?」
知らんけど、とアルトはどうでも良さそうにいった。アルトにとってはどうでもいいこと。自分だってそうだと、私はそう考えた。結局はお相手がいるということ。それ以上でもそれ以下でもないと。
「……うん。教えてくれてありがと。同じ薬指に指輪がある者同士、どうしても目についちゃって」
「あー、それね。……呪いとかは、もう言わないけど。謎だよね」
私にもある、左手の薬指の指輪。生まれた時からあるものだった。成長した私の指にもジャストサイズにはまっている、謎は謎の代物だった。
「じゃあ、そんなとこだけど。ああ、行かせたくねぇ……でも、大事な話なんだよなぁ……」
アルトはリッカを盾にして、私に『行って』とお願いした。去りゆく私を彼は見ないようにしていた。
「う、うん。またね、アルト」
「はい、またね来た! うん、またね!」
リッカを盾にしながらも、浮かれきった声が聞こえてきた。うん、リッカを迎えにだし。それまでアルトにお願いして、と。
「あとね、シャーロット! 明日は俺とデート、お願いしまっす!」
明日? ……前なら確かに学園を案内してもらっていたけれど。というか。
「デート?」
「……うん、あれだ。学園案内。明日、女子寮に迎えにいくからー」
「う、うん……?」
アルトの中で決定事項のようだった。そうだね、反対することもないよね。
「アルトと一緒にお散歩だね」
「うん!」
私の言葉に、リッカは嬉しそうに頷いた。楽しみだね!
「あれ? 俺、華麗にデート回避された……?」
明日は休日。授業が始まるのは、明後日からだ。リッカとの時間も減る。束の間の休日を楽しむことにした。
「お待たせしました、モルゲン先生」
教職員寮の外で、先生が待機していた。雲が流れるのを見ていた先生、こちらの方を向く。
「いや、全然だ――アルトがよく解放してくれたな」
「……。アルトもわかってくれてますから」
先生に故意はないんだって、それでも私はドキッとしてしまった。
「この後、吹雪くんだよな」
「……はい」
これだけ晴れているのに、この後天気が大荒れになる。そう、モルゲン先生も私も知っている――この日を迎えたことがあるから。
「不思議だよな……なあ、シャーロット。また、始まってしまったな」
「……ですね」
ようやく訪れた平穏の日々も、今は遠ざかってしまっている。また、大切な人を失う日々の始まりなんだ……。
「心配するな。俺がついている」
「!」
私の頭をぽんぽんと撫でると、先生は笑った。
「ああ、今のな。アルトの前でやったのが、悪かった。あいつ、妬くしな」
「……いえ、アルトの前とかでもなくて。私としても」
私としても……困るものだった。複雑、私の心境はその一言に尽きた。
「ああ、すまなかった。今のご時世厳しいしな。撫でるのは控えるか……」
「そうですね」
先生が控えるというなら、こちらもどうこう言うこともなかった。
私たちが向かうは、本校舎にある自治委員会の活動本拠地――シェリア・カイゼリン様も待っている。
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