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第二章
自治委員になるには
それからも、リヒターさんのお話は続いていた。
リヒターさんのおかげだった。カイゼリン様のこと、それから自治委員会の現状を把握することができた。そう――自治委員会。
「あの、自治委員会ってすごく大変なんですよね? もし、何かお手伝いできましたら。お声がけくださいね。雑用でもなんでも」
リヒターさんの苦労は見てきたから。その事を実際に言うことは出来なくても、力になれたらと思っていた。
そう、リヒターさんこそが大変ではないかと。ちょっとしたことでも、カイゼリン様に遣わされ。逃げた犬の後も追わされ。深夜の巡回もさせられる。あれ、と私は気づいた。
「……」
カイゼリン様はリヒターさんをこき使いすぎではないかと。
「……シェリア様は何も間違ってはおられません」
「は、はい!」
タイムリー過ぎた。私は自分の考えが読まれたのかとドキドキしていた。
「――そして、ジェム様。それは、自治委員会に所属したいとのことでしょうか」
「……所属、できるのですか?」
てっきり選ばれし者の集まりだと思っていた。自分のような生徒でも出来るということ?
「それは、逆質問でしょうか」
「あ、いえ……そうですね。もし、所属することでお手伝いできるのなら」
私は願ったり叶ったりだった。
「さようでございますか」
「……!」
リヒターさんが微かに笑った気がした。これは承諾してくれるということ? 私の期待は膨らむばかりで――。
「――では、中等部から入り直しでお願い致します」
「え!?」
私は仰天した。背後の先生は『おいおい』と言いたげ。リヒターさんの説明は続く。
「当委員会はまず、試験があります。それに突破した後、晴れて準所属となります。主な業務は、雑務。正委員の補助。ジェム様が望まれる業務はこちらになるかと。それから三年間、自治委員たるものを学んでいただきまして、高等部進級と共に正式な委員となります――その頃には我々は卒業しているでしょうが」
「は、はい……」
一気に説明されたけど、整理しよう……ええと。
まず、中等部に入り直す。試験を突破しても、下積み期間があって。高等部に入って、ようやく正委員となる――その頃にはカイゼリン様はいない。
「私も補佐にあたりますが、シェリア様の補佐でございますので。委員長に次ぐ重責と心得ております」
「は、はい……」
私は気の遠くなるような話をされたばかり。ただ、中等部からの入り直しはさすがに遠慮したかった……さすがにそれは、と。
「……このへんでいいぞー」
大人しくしていた先生が呼びかけていた。彼の言う通り、もう玄関口まで来ていた。
「ありがとな、リヒター。随分とおしゃべりだったな」
「おしゃべり、とは。あくまでシェリア様の事をお伝えしたに過ぎませんが」
揶揄うような口調の教師に、リヒターさんは真顔で返していた。
「では、私はこれにて失礼させて頂きます」
「はい、色々とありがとうございました」
頭を下げたリヒターさんは、姿勢を正して颯爽と去っていた。どこも隙のない人だ。それは彼の後ろ姿からしてもそう。
「――それで、だ。シャーロット? 面談室な」
「はい、モルゲン先生……?」
先生までもが真顔だった。これは良くない話だと、私はは予想がついてしまった。
「――あれぇ? おかえり、待機してみるもんだわー」
「わーい、おかえりー!」
「――からの、お手。はい、逆もお手」
「はいっ、はいっ」
アルトとリッカはまだ面談室にいた。ちょうど芸を仕込んでいるところだった。
「おいおい。お前達、どうして残ってるんだ?」
「どっかの教師が施錠していかなかったせいでーす。ま、結果オーライだけどね」
「……あ。ああ、悪かったな」
面談室の鍵を所持していたのは、先生。彼のミスだった。
「いいけど。密室二人きりイベント発生阻止っと。危ない危ない」
「……今はやめてくれ……散々絞られたんだ」
先生は委員の二人に教師としての在り方を説かれたばかりで、勘弁してくれといった様子だった。
「ああー。言われるだろうね。自業自得じゃん」
「ぐっ!」
さらりと言ったアルトに対して、先生はかなりのダメージを受けていた。
「……まあいい、本題だ。シャーロット、自治委員会に入るのもそうだが、シェリアにも近づきたいようだな」
「なにそれ、まじ? ……ううん、続けて」
先生は不満そうな顔だった。アルトも気にはなっているようで。
「……俺は、お勧めしたくないけどな。不用意に近づいて、容疑者候補に挙がるのが目に見えているからな」
先生の発言も当然のものだった。今回は被害者との距離を縮めようというのだ。より疑惑も深まりやすくなるだろうって。
「……はい、モルゲン先生のおっしゃる通りだとは思います。ただ、多少無理したからこそ、乗り越えられたこともありました」
先生が心配してくれたとしても、私は引き下がることはなかった。
「はあ、それなんだよな……」
無茶をしたのは先生もだったから。アルトは気まずそうにしていた……。
「ただ、委員会入りは難しそうなんですよね。今はそれとなく様子を見るしかないんでしょうか」
「……だな。まあ、おかしな話なんだよな。シェリア嬢にはガチガチの警備がついているだろうになあ」
「ですよね……」
出鼻をくじかれた思いをしたまま、私たちは面談室をあとにした。
リヒターさんのおかげだった。カイゼリン様のこと、それから自治委員会の現状を把握することができた。そう――自治委員会。
「あの、自治委員会ってすごく大変なんですよね? もし、何かお手伝いできましたら。お声がけくださいね。雑用でもなんでも」
リヒターさんの苦労は見てきたから。その事を実際に言うことは出来なくても、力になれたらと思っていた。
そう、リヒターさんこそが大変ではないかと。ちょっとしたことでも、カイゼリン様に遣わされ。逃げた犬の後も追わされ。深夜の巡回もさせられる。あれ、と私は気づいた。
「……」
カイゼリン様はリヒターさんをこき使いすぎではないかと。
「……シェリア様は何も間違ってはおられません」
「は、はい!」
タイムリー過ぎた。私は自分の考えが読まれたのかとドキドキしていた。
「――そして、ジェム様。それは、自治委員会に所属したいとのことでしょうか」
「……所属、できるのですか?」
てっきり選ばれし者の集まりだと思っていた。自分のような生徒でも出来るということ?
「それは、逆質問でしょうか」
「あ、いえ……そうですね。もし、所属することでお手伝いできるのなら」
私は願ったり叶ったりだった。
「さようでございますか」
「……!」
リヒターさんが微かに笑った気がした。これは承諾してくれるということ? 私の期待は膨らむばかりで――。
「――では、中等部から入り直しでお願い致します」
「え!?」
私は仰天した。背後の先生は『おいおい』と言いたげ。リヒターさんの説明は続く。
「当委員会はまず、試験があります。それに突破した後、晴れて準所属となります。主な業務は、雑務。正委員の補助。ジェム様が望まれる業務はこちらになるかと。それから三年間、自治委員たるものを学んでいただきまして、高等部進級と共に正式な委員となります――その頃には我々は卒業しているでしょうが」
「は、はい……」
一気に説明されたけど、整理しよう……ええと。
まず、中等部に入り直す。試験を突破しても、下積み期間があって。高等部に入って、ようやく正委員となる――その頃にはカイゼリン様はいない。
「私も補佐にあたりますが、シェリア様の補佐でございますので。委員長に次ぐ重責と心得ております」
「は、はい……」
私は気の遠くなるような話をされたばかり。ただ、中等部からの入り直しはさすがに遠慮したかった……さすがにそれは、と。
「……このへんでいいぞー」
大人しくしていた先生が呼びかけていた。彼の言う通り、もう玄関口まで来ていた。
「ありがとな、リヒター。随分とおしゃべりだったな」
「おしゃべり、とは。あくまでシェリア様の事をお伝えしたに過ぎませんが」
揶揄うような口調の教師に、リヒターさんは真顔で返していた。
「では、私はこれにて失礼させて頂きます」
「はい、色々とありがとうございました」
頭を下げたリヒターさんは、姿勢を正して颯爽と去っていた。どこも隙のない人だ。それは彼の後ろ姿からしてもそう。
「――それで、だ。シャーロット? 面談室な」
「はい、モルゲン先生……?」
先生までもが真顔だった。これは良くない話だと、私はは予想がついてしまった。
「――あれぇ? おかえり、待機してみるもんだわー」
「わーい、おかえりー!」
「――からの、お手。はい、逆もお手」
「はいっ、はいっ」
アルトとリッカはまだ面談室にいた。ちょうど芸を仕込んでいるところだった。
「おいおい。お前達、どうして残ってるんだ?」
「どっかの教師が施錠していかなかったせいでーす。ま、結果オーライだけどね」
「……あ。ああ、悪かったな」
面談室の鍵を所持していたのは、先生。彼のミスだった。
「いいけど。密室二人きりイベント発生阻止っと。危ない危ない」
「……今はやめてくれ……散々絞られたんだ」
先生は委員の二人に教師としての在り方を説かれたばかりで、勘弁してくれといった様子だった。
「ああー。言われるだろうね。自業自得じゃん」
「ぐっ!」
さらりと言ったアルトに対して、先生はかなりのダメージを受けていた。
「……まあいい、本題だ。シャーロット、自治委員会に入るのもそうだが、シェリアにも近づきたいようだな」
「なにそれ、まじ? ……ううん、続けて」
先生は不満そうな顔だった。アルトも気にはなっているようで。
「……俺は、お勧めしたくないけどな。不用意に近づいて、容疑者候補に挙がるのが目に見えているからな」
先生の発言も当然のものだった。今回は被害者との距離を縮めようというのだ。より疑惑も深まりやすくなるだろうって。
「……はい、モルゲン先生のおっしゃる通りだとは思います。ただ、多少無理したからこそ、乗り越えられたこともありました」
先生が心配してくれたとしても、私は引き下がることはなかった。
「はあ、それなんだよな……」
無茶をしたのは先生もだったから。アルトは気まずそうにしていた……。
「ただ、委員会入りは難しそうなんですよね。今はそれとなく様子を見るしかないんでしょうか」
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「ですよね……」
出鼻をくじかれた思いをしたまま、私たちは面談室をあとにした。
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