春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

朝からリヒター

「うう……」

 ぺろぺろと何者かが私の頬を舐めていた。和足は目をうっすらと開けた。カーテンの隙間から差し込むのは朝の光だ。

「シャーリー、起きた。うなされてたよ? 大丈夫?」
「リッカ……」

 わりとリッカも恐怖の原因だったけど、それ以上の恐怖を味わった……今でも鳥肌が止まらないよ……。

「……ううん。大丈夫。ありがと、リッカ」
「うん」

 リッカを撫でると、私は完全に目を覚ました。

「今日のお散歩、楽しみだね」
「うんっ!」
「ね……」

 リッカは尻尾をぶんぶん振っていた。へっへっと笑うこの子を見ていると、私はたまらない思いだった。
 私は明日から学生となる。リッカとの時間も減るんだ。それをリッカも当然わかっているのに、おくびに出すことはなかった。

「うう、学園に連れていきたい……」

 リッカが平気なふりをしているのだから、私もそうしないといけないのに。そうは思っていても、心は納得はしていなかった。

「僕は大丈夫だよー。寮内ならウロウロしていいって。あのね、モルゲンがお願いしてくれてたの。寮にいるお姉さんたちが可愛がってくれるって」
「うう、リッカ良かったねぇ……モルゲン先生もありがとう……私の部屋も開けておくからね……」

 先生も気を回してくれ、リッカもお利口ワンコでいてくれるんだ……私はぎゅっとリッカを抱きしめ、自身を納得させることにした。

「お散歩―、お散歩―」

 私たちとのの散歩は楽しみのようで。リッカはご機嫌に歌っていた。上手いねぇ……癒されるねぇ……。

「そうだね、お散歩行こうね」 

 もう一度リッカをギュッとすると、私は出かける準備をした。




「……?」

 私はリッカを抱っこしたまま、玄関までやってきた。いつもならここでアルトが迎えにでもきそうなのに……来ていない?

「男子寮行こっか」
「わんっ」

 前よりは平気になったので、私はこちらから迎えにいこうと提案した。リッカも承諾した。

「こういうのも楽しいね。アルト、びっくりさせようね」
「わふっ」

 たまには新鮮だよね。アルトの驚く顔を浮かべて笑んでいた時だった。

「――残念ながら、アルト様はおいでになりません。お帰りになりました」
「へっ!?」

 私は思わず声を上げた。女子寮を出てすぐ真横――そこにリヒターさんが立っていたからだ。気配もなく……どういうこと。服装は自治委員会固有のもので、コートも着ていない。

「……あの人、自治委員会の」
「ここまで来るのめずらしー……」

 出かける予定の女子寮生達が遠巻きに見ていた。リヒターさんの優れた見た目というよりは、自治委員会の人物として恐れている感じでもあった。

「……」

 リヒターさんはあれだけ視線に晒されても、動じていなかった。慣れているのかな。

「……別にアルト様をお呼びしても構いませんが、経緯だけは説明させていただけますか」
「あ、はい。そうですね。そうしていただけると」

 ここでは目立つと、女子寮から離れることにした。




「ああ、失礼いたしました。ジェム様、おはようございます」
「はい、おはようございます」

 リヒターさんが深々と挨拶したので、私も倣った。

「まずはですが、シェリア様に話だけでもさせていただきました――あなたの自治委員会入りのことです」
「え!」

 あの中等部からやり直しの件? やり直すことになったら……どうしたものか。

「いえ、中等部からやり直す件ではございません」
「はい……」

 どうしてこうも考えを読まれてしまうのかな。何気に恐怖の連続だった。

「シェリア様が、私の補佐にどうか。そう仰せでした」
「リヒターさんの補佐ですか……となると、補佐の補佐でしょうか」

 私は真面目な顔をして、リヒターさんに問うた。

「……」

 リヒターさんは表情も変えず、何も言わない。

「リヒターさん?」
「いえ、仰る通りです。私の業務を、しいてはシェリア様を。根底から支えていただけるのなら。主の許可は下りました――『寛容』な方ですから」
「カイゼリン様が……」

 先生はいい顔はしないだろうけど、私はチャンスだと思った。それも相手が許容してくれているのだから。

「リヒターさん。話を通してくださって、ありがとうございました」
「――礼ならば、シェリア様へ」
「……はい」

 そうだった。私もそれはわかっていた。この人は自分への賛辞は喜ばないと。あくまで主さえ讃えていればよいと。

「……」

 それはそれで悲しいと、私は思った。やるせないとさえ思えていた。

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