春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

自治委員会ライフの幕開け



「――学園の細部まで、見落とすことなく。カイゼリン様はそう仰せです」
「は、はい……」
「へっへっへっへっ」

 私たちは今、委員会の巡回路を辿っていた。細部という言葉通り、学園の隅々、端から端まで徒歩で移動していた。
 余裕そうなリヒターさん。息も絶え絶えの私。歩き足りないワンコ。三者三葉だった。





 移動が終わると、今度は校舎内。まずは初等部。そして、中等部の校舎。

「この学園、広いんですね」
「ええ、広いでしょうね。私は慣れたものですが。ちなみに校舎は往復します」
「え!」
「え、とは。あなたも補佐の補佐にあたるのですから、早く慣れてください。音を上げてくださっても結構ですが」

 リヒターさんは、息を切らしてばかりの私を眺めていた。

「は、はい、早く慣れますね……!」

 私は今の無様な姿は承知の上で、そう答えた。これからの苦難と立ち向かうことに比べたら、序の口だと。

「さようでございますか――リッカ様。歩いてくださっても結構ですよ」
「わふっ」

 校舎内では抱っこされていたリッカは、迷うことなく下りた。

「リヒターさん……?」

 校舎内を歩かせていいの? 抱っこする気でいた私は彼を窺う。

「実際は犬を担いでということもありませんから。途中で申し出ていただけたら、善処しましたのに」

 確かにリヒターさんの言う通り、駄目元で頼むのもありだったかもしれない。

「なるほど。でも、約束しましたし。私はこれで良かったです」

 私はそれを良しとはしなかった。自分で決めたことでもあったし。

「……。さようでございますか。ああ、今だけは私が責任を取ります。ご心配なく」
「わかりました。リッカ、トイレ行きたくなったら、早めに教えてね?」

 わんっ! と、リッカは元気よく返事した。

「ええ、是非ともそうしていただけますと。私が躾けなくてすみますから」
「!?」

 リヒターさんは変わらず無表情なのに、この底冷えするような迫力はどうしたものか。

「おかしいでしょうか? 私が責任を持つとなると、そうしたことかと存じますが」
「あ、いえ。ただ、私の方でしっかりしますので。そういうのは、本当に大丈夫なんで」
「かしこまりました」

 リヒターさんがすんなり下がってくれて良かった。リッカにいたっては足がガクブルしていた……怖かったね。

「今回は免じましょうか。このまま部屋に直行し、業務の説明へと移らせていただきます」
「はい、よろしくお願いします」

 往復もそうだし、本校舎内の巡回も容赦してくれたんだ。彼らは活動場所へと向かうこととした。





「失礼いたします。リヒターでございます」

 リヒターさんは部屋の扉をノックした。部屋の主、カイゼリン様からの返事もあったので入室した。

「あら、おかえりなさい。そして、シャーロットさん? 貴女、リヒターの補佐にあたってくださるとか」
「はい。この度はご承諾いただきまして、ありがとうございました。精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」

 カイゼリン様が許可してくれたこともあってだ。私は感謝の気持ちを込めてお辞儀をした。

「……あら、そうなの。そういうことでしたら」
「カイゼリン様?」

 カイゼリン様の声音が変わった気がした。顔を上げてから彼女を見ると。

「ええ、よろしくお願いしますわね――シャーロット?」

 にたりと笑ったカイゼリン様がそこにいた。彼女の目が怪しく光った気がした。というか、シャーロット呼び……? ドキリとしてしまった。

「――ジェム様。続いて、内務での仕事をお教えします。こちらへお越しください」
「はいっ」

 カイゼリン様の様子も気がかりだけれど、私は彼の元へと向かうことにした。

「ほほほほほ――ええ、楽しみだこと」

 カイゼリン様の高笑いと共に、自治委員会ライフが幕を開けた。



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