春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

同じクラスは運命……?


 
 一年生の教室は一階にはある。ただ、肝心のクラスがどこなのかな? 私は伺っていなかった。職員室も同じ階だから、まず、そちらに向かうことにした。

「でさ、同じクラスかな? 同じクラスだよね? だって、俺達運命じゃん……?」
「残念だったな、アルト。運命じゃないんだな」
「……は?」

 廊下の向こうからやってきたのはモルゲン先生だった。彼の隣にいる女性は、華奢で若々しい人。制服を着ていないから、教師……と、私は推察していた。

「先生。彼女がシャーロット・ジェムです。あとはよろしくお願いします」

 モルゲン先生は隣の女性にバトンタッチした。正解だった。

「はーい。初めまして、ジェムさん。私があなたの担任のパロットです」
「はじめまして。シャーロット・ジェムと申します。よろしくお願いいたします」

 モルゲン先生ではなく、彼女が私の担任教師だった。私も挨拶をした。優しそうな先生で良かった。

「それじゃ、行きましょうか。教室はこっちよ」
「はい、お願いいたしします。では、モルゲン先生失礼します。アルトもありがとね」

 私はその場で軽い説明を受けていた。兄弟の会話が否応にも聞こえてくる。

「ええー、同じクラスじゃないとか……なにこれ、悪夢……?」
「諦めろ。現実だ」
「はあ……つか、兄貴だって担任じゃないじゃん。運命とか違うじゃんか」
「――俺はいいんだよ。このくらい気にしない」
「はい、強がりキタ……はあ、兄貴の相手しててもしょうがないし。休み時間の度に逢いにいけばいいか」

 待て、と呼びかけたのはモルゲン先生? 正直その内容は気になるけれど、私は担任の先生に職員室に招かれていた。私は二人に会釈して、部屋に入っていった。

 モルゲン先生……こそこそ話している? え、なんだろ? ああ、二人の会話が聞こえなくなっていく。盗み聞き状態でもあったから、それは仕方ないことなのかな。

「ええー……我慢しろって? でも、シャーロットの為……ぐぬぬ……」

 アルトの耐え忍ぶ声を最後に、職員室の扉は閉められた。


「――このクラスにも編入生がやってきました。仲良くしてあげてねー」
「……」

 授業開始前の朝礼時。私は教室の黒板前、一人で立たされていた。クラスメイトからの視線が集中する。緊張のあまり、背中に汗が伝う。

「……シャーロット・ジェムです。よろしくお願いします」

 私はなんとか口にすると、一礼した。頭を下げながら、頭をぐるぐるさせていた。もっと、気の利いたことは言えなかったのか、とか。趣味とか、好きな食べ物とか、それこそ一発ギャグとか。今からでもやろうとして。

「――シャーリーちゃん、よろしくー!」

 ここで一声がきた。飛び抜けて明るい声。
 それは、一番後ろの席に座っている男子生徒によるものだった。『はい、拍手』と彼が言うと、他のクラスメイト達も拍手をしてくれた。

「って、さっそくあだ名かよ!」
「なんか、響き可愛くない? いい感じだろー?」

 他の生徒に絡まれながらも、楽しそうに笑う彼……あれ、この人って。私に覚えがある人だった。

「あ、オレはね。ロルフ・ヴァールザーガー! 気軽に呼び捨てでも君づけでもいいんでねー!」
「は、はい」
「シャーリーちゃん、かたいかたいってー。オレら、タメなんだからさー」
「……うん、よろしくね」

 この男子生徒、ロルフ君によって私の緊張は解きほぐされた……不思議な感覚だった。

 ロルフ君とはループの中で一度、会ったことがあった。彼が男子寮の寮長であることも知っている。その時も親しみやすく、親身にもなってくれる存在だった。
 あと、犬好きなのかな――リッカのことも可愛がっていた。

 私は本当に不思議だった。ロルフ君に対してこんなにも――懐かしい気持ちになるなんて。

「で、先生! オレの隣、空いてるんだし、いいよね? シャーリーちゃん、こっちこっち」

 ロルフ君の隣は空いていた。後方の窓側の席。良席でもあった。

「そうね。ジェムさん、そちらの席に着いてもらっていい?」
「はい」

 私は指定された席に座ると、さっそく隣の席のロルフ君が話しかけてきた。

「よろしくよろしくシャーリーちゃん! オレ、すげー話しかけるからさ」

 すでにこの勢いだ。よほどのマシンガントークが予想された。

「うん。私も頑張ってついてくね」
「お、その意気。いやぁ、健気な子はいいわー。本当いいわー。隣の席とかもさ、最高!」

 ロルフ君は頬杖ついて、私を眺めていた。喋りの勢いは潜め、彼はしみじみと言う。

「――これってさ、運命じゃね?」
「え――」

 ロルフ君からの突然の言葉。私が戸惑っている時、教室の後ろの扉が開かれた。

「――遅くなりまして、申し訳ございません」

 息を切らしながら入ってきたのは――リヒターさんだった。

「珍しいわね、リヒター君。委員会のお仕事が長引いたの?」
「……いえ、寝坊です。完全なる自己管理不足です。申し訳ございませんでした」

 教室がざわついた。あのリヒターさんがそのような理由で遅刻をするのかと。

「……本当に珍しいわね。いいわ、席に着きなさい」
「はい」

 リヒターさんもまた、後ろの席だった。彼は廊下側。

「……」

 私はひたすら衝撃を受けていた。まさか、同じ学年とは思ってもいなかった。しかも同じクラスだったとは。

「……ああ、ジェム様」
「お、おはようございます」
「おはようございます」

 私に視線を寄越したリヒターさんと挨拶を交わす。彼は今度こそ席に着いた。



 
 朝礼が終わり、休憩時間となった。

「……ねね、シャーリーちゃん? 『リヒリヒ』といつの間に知り合いなの?」
「り、りひりひ?」

 随分と可愛い響き……。

「あっ、リヒター君のことね。オレが勝手にそう呼んでるだけ」
「……出来ることならば、ご容赦願いたいものです」

 遠くから聞こえるは、リヒターさんの声だ。彼は辟易しているようでもあった。

「ごめんて、リヒター君。あれ、どっか行くのー?」
「はい。朝の件で、シェリア様にお詫びをしに参ります」

 自分が寝坊したからってことかな? 徹底してるんだ……。

「……へー。カイゼリン様一色だねー?」

 楽しそうに言うロルフ君に、私がギョッとした。彼が陽の者なのはわかっていても、ここまでぶっこむのかと。

「はい。『私』はシェリア様が全てです」

 対するリヒターさんも迷いなく言っていた。教室内の生徒たちからも声が上がった。一部では黄色い悲鳴もあったり。

「そっかそっか、いっておいでー」
「失礼いたします」

 リヒターさんは誰を見ることもなく、教室をあとにした。

「やっぱり。わあ……やっぱりそうなんだ」
「……あんれー、シャーリーちゃん?」

 ときめいているのは私もだった。それはリヒターさん一人というよりは、彼とカイゼリン様の関係性について。尊い……キュンキュンするよ……。 

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