春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

自治委員の昼休み


 昼休みとなった。私はお昼をどうしようと考えていた。アルトのことも浮かんだけれど、ここは勇気を出してクラスメイトを誘ってみようと――。

「あなた、シャーロットさんよね? 私達のこと覚えてる?」
「あ、一昨日テラスでご一緒した……」

 声をかけてくれたのは、顔見知りの子たちだった。学園長による校舎案内の時、クラーラさんと一緒にいた彼女たち。

「そうそう。本日、クラーラお姉様はいらっしゃらないけど、良かったらご一緒にいかが?」
「いいの? それなら――」

 なんて嬉しいお誘いなんだろう……! 喜んで返事しようとした、ちょうどその時。

「――お話中、失礼させていただきます。ジェム様、昼も活動時間でございます。参りましょう」

 やってきたのはリヒターさん。そっか、昼休みもなんだ。委員としての仕事なら、そこはちゃんとしよう。せっかくのお誘いだけど……。

「ごめんなさい。また、ご一緒させてもらえるかな?」
「ええ、もちろん。いってらっしゃいな」
「ありがとう」

 彼女達は気を悪くすることもなく、私を送り出してくれた。いい子たちだなぁ……。

 うん、委員会活動頑張ろう。カイゼリン様もいらしているといいな。

「お待たせしました、リヒターさん。お昼もなんですね。大変ですね」
「ええ、大変です。そして、あなたにも言えることで――」

 リヒターさんが言っていたこと――それを私はすぐに思い知らされることになる。




 待ちに待った昼休み、生徒の大半は食堂に集っていた。美味しそうにご飯を頬張り、会話に花を咲かせている。

「ぜえぜえ……」

 授業終了のチャイムと共に、早歩きでやってきたのは私たち……もっとも息を切らしているのは私ぐらいで、リヒターさんは涼しい顔をしていた。

「お疲れのところで恐縮ではあります。ですが、時間もありません。こちら、大至急お読みください」
「はい……おぉ!?」

 リヒターさんにさっと渡されたメモを見る。びっしりと書かれていた内容を見た私は……震えた。

「これは……」

 カイゼリン様の嗜好に関することだった。紅茶に淹れる砂糖ミルクの量や、茶葉の指定。その日の気分や天候によっても変わったりする。
 食堂で頼むメニューもそう。メニューを確認したら、それぞれ好みのカスタマイズがあるという。それを、食堂の従業員さんに言わなくてはならない。

「本日は私が行います。あなたは側について見ていてください」
「はい、覚えます……」
「ええ、暗記は大前提です。そこからシェリア様のご様子からの判断、そちらもお願いいたします」
「はい、空気を読みます……」

 私は気が遠くになりながらも……取り組むことにした。

「あら、ごきげんよう。リヒターにシャーロット」
「ご機嫌麗しゅうございます、シェリア様。テラス席をご用意しております。本日、一番湖が綺麗に見える席です」

 リヒターさんがいつの間にか席を押さえていたみたい。カイゼリン様を案内していた。

「ああ、ご苦労様。わたくし……本日は非常に疲れましたの。たまたま課題を忘れただけですのよ。なのに、モルゲン先生にネチネチと責められましたの。ああ、大人げないこと!」
「ええ、誠に遺憾でございますね――それでは、カイゼリン様。本日のメニューをお持ちします。しばしお待ちくださいませ」
「お願いね」

 主とやりとりをしたリヒターさんは、私の元に戻ってきた。

「……」

 私は置いてきぼりだった。カイゼリン様への挨拶をする間もなく、この二人だけで話が進んでいたのだから。

「……!?」

 待って。今のやりとりで食堂のメニューを確認していたの? ……わかったの!? どこにも食べ物の名前が出ていなかったのに!?

「では、ジェム様。私は食堂のメニューを取りに行って参ります。その間、紅茶の提供をお願いします」
「……すみません。私だと判断できなくて。本日だけでも、カイゼリン様が好まれるものを教えていただけませんか?」

 リヒターさんには容易くとも、私には困難だった。というより、あれで理解できるのはリヒターさんくらいなんじゃ……。

「……確かに」

 リヒターさん、今になって気づいたようだ。彼としては出来て当たり前のことなのかな。

「明日からはちゃんとしますから。覚えますし、察するようにもします。私に与えられた役割ですから」

 今回の委員会参加のこと、無理を言って通ったものなんだ。私もちゃんと出来るようになりたい。うん、このメモも引き続き借りられるか確認しよう。それで頭に叩き込んで――。

「……必死ですね」

 ――またしても言われてしまった。彼の目にそう映ったんだ。

「……それは」

 結局は煽りだったのかな――それとも別の何か? わからずじまいだけれど、この際それは良かった……私はそうなんだから。

「はい、必死です」

 嘘偽りのない思いで、私はそう答えた。こうして委員として活動をしているのも、未来を勝ち取ることを信じてこそだから。


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