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第二章
クラスメイトでしたね
私は自販機で二つ分購入した。両方とも紅茶。
「……すみませんジェム様、ご用意まで。代金お支払いします」
「いえいえ。私もご馳走になりましたから。これでプラマイゼロです」
「ぷらまい……?」
「貸し借り無しということで、お願いします」
冬花の名残で、ついこの世界では使わない言葉を使ってしまった。訂正しておいた。
「わかりました。では、いただきます」
「はい、どうぞ」
私のは予め砂糖もミルクも投入済み。リヒターさんの好みはわからなかったので、そっちは無糖ミルク無しにしておいた。
「事後承諾になっちゃいますけど、リヒターさんの分はそちらで調整してください」
一緒に砂糖とミルクも食堂の卓から持ってきた。そこから彼に足してもらうことにした。
「……」
リヒターさんはカップと砂糖を交互に見ている。彼は一向に何も入れようともしない。飲もうともしなかった。
「紅茶、お好きじゃなかったですか? 私、二杯は余裕でいけますので。コーヒー買ってきますね。それとも、他にご希望のがありましたら――」
「……わからなくなってまして」
そう呟いたのはリヒターさん。彼はどこか気まずそうにしていた。わからなくなった?
「付き合いで飲むことはありましたが、自分の嗜好などとうに忘れてしまっていました」
「リヒターさん……」
私はリヒターさんを思った。この人は、どれだけリヒターであろうとしたのか。こうも考える――本当の自分を抑えつけてきたのかと。
「ただ、良い機会かもしれません。ジェム様、よろしければなのですが。あなたの方をいただけませんか?」
「はい、もちろんです。口もつけてませんから、安心してください」
「……」
なんでそこで黙ったんだろう……って。
「……はい、すみません」
特に意識をしていなかっただろうに、余計な気を回してしまったってことか。これは恥ずかしい……。
「……。ジェム様も、座ってください。婦人を立たせたままなのも、気が引けます」
妙な間があったものの、リヒターさんは無かったことにしてくれたのかな? 正直助かりました。
「はい。ではそこらへんの席にでも」
「隣りにどうぞ」
「それは……」
私は前にも体験したことがあった。そのソファ席はかなり密着することになるって。でも、リヒターさんだし。この人が意識することとかはないだろうけれど、構えてしまうのは私の方で。
「……前に座りますね? 向かいに」
「……ええ、強制はしてませんので」
自分が飲もうとしていたカップを彼に手渡した。それから私は彼の真向いに椅子をもってきて、座る。その……そのソファの密着ぶりを体感している身からしたら……ハードルがすごく高くて。
「……強制はしませんので、はい」
「はい」
同じようなことを言っている、あのリヒターさんが。いつもの無表情なのに、ほんの少し眉間に皺を寄っているような? ……気のせいか。
私も失敬して、砂糖とミルクを入れていった……うん、控えめに。あっちの紅茶で大量に使っちゃったし、つい自宅感覚で。コーヒーではないので、この量でも私は十分美味しく飲める。
「……?」
リヒターさんが飲まない。私が飲むのを待っているのかな。私としては、先にあなたに飲んでほしいのだけれど。
「ジェム様、お先にどうぞ」
「いえいえ、リヒターさんがお先に」
「……ジェム様。私が先輩だとお思いですか?」
だから先を譲っているのかと、リヒターさんは言ってきた。いや、それは……。
「あの、同じクラスってこと、わかってますので。さっき、普通に会話してましたよね?」
同じ教室でやりとりしていたのに。私もさすがにわかってはいます。敬語はうん……流れでもあったかな。ズルズル、とも。
「……別に敬語である必要はありません。私はあなたの先輩でもありませんので。敬語喋りが標準でいらっしゃいますか?」
「いいえ……」
「失礼しました。敬語のままでしたので」
「あ。そうですね、そのままでした。でも、なかなか抜けなくて」
リヒターさんがそう言ってくれるのなら、そうしよう。リヒターさんは敬語喋りを崩さないだろうけど、私はそこまでこだわっているわけでもなかった。
「……うん。それじゃ、リヒターさん。一緒に飲もうか」
まだ呼び捨ては難しい、普段の喋り方で接することにした。
「……はい」
返事はそれだけだった。特に嫌がっている様子ではないかな。私も安心して、カップを口に含んだ。
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