春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

彼らしさ

「うん、美味しい。質からして違うと、こうも違うんだ」

 私が美味な紅茶を味わっている一方で。

「ぶふっ!」

 リヒターさんは……むせていた。手持ちのハンカチを口に当てながら、咳き込んでいた。

「リヒターさん!?」
「ご、ご心配なく……ごほっ、ごほっ」
「大丈夫……? そこの自販機だし、変なものとか入ってなかったと思うけど。気管に入っちゃったんだね」

 椅子から立ち上がった私は、リヒターさんの近くへ。辛そうな彼の背中をさすっていた。

「……ジェム様」

 リヒターさんが涙目に見てきた。どこか怒り気味でもあった。私はハッとして、さするのをやめた。つい、アルト相手にやっていたことをやってしまっていた。

「……いえ。失礼ながらも言わせてください……! なんなのでしょうか、この、砂糖とミルクの量は……!」
「なんなのと言われても。私の好みの量としか」
「こ、こんな量は健康にも害を及ぼします。あなたの舌は馬鹿舌ですか……!」
「馬鹿舌……」

 私は言われてしまった。

「あ……過ぎた口を申しまして」

 リヒターさん、もしかして。言い過ぎたって、謝ろうとしている?

「あはは、そうかもね。自分でも最近まずいかなって思っていたし」

 私は気づけば笑っていた。ここまではっきり言われたら、妙に納得がいくものでもあった。

「……まずいと自覚したの、最近ですか」
「……そこは、うん」

 私は認めた。

「ふふ、怒ってる」

 私はなんだか可笑しくなってしまった。あの無表情に定評があった彼が――こうして怒って、呆れもしていることが。

「……何一つとして、面白いことなどないでしょうに。しかし、すごい味ですね。というか、一緒に入れるものなのでしょうか」

 リヒターさんは残りの紅茶も飲んでいた。砂糖とミルクでドロドロのそれを。

「リヒターさん。無理して飲まなくてもいいんじゃ。ごめんね、リヒターさん。せめて口直しに水でも」

 むせる程だったわけだし……備え付けのテーブルに水差しとグラスもあった、私が注いでいると。

「……ジェム様――でしたら、交換しますか?」
「……」

 この人にとっては何てこともない……私からしたらとんでもないことを持ちかけてきた。さすがに遠慮します、しますって。

「いいえ。健康を考えてこっちを飲む。そっちはまあ、もったいないけど」
「……私が責任持って飲みます。ええ、そうです。予め、心構えさえできれば」

 そう言いつつ、リヒターさんは甘い物を飲んでいるのに、苦々しい顔をしていた。どうにか飲み切ったようだ。

「お水、有難うございました……では、仮眠をとらせてもらいます」

 口直しにと水を飲んだあと、リヒターさんは仰向けになってソファに身を預けた。私はその間、メモを覚えることに費やすことにした。

「うん。時間になったら起こすね」
「ありがとうございます――」

 リヒターさんはお礼を言うと、即寝た。もう寝息を立てている。

「疲れてるんだね、リヒターさん」

 無防備に寝ているリヒターさんが意外だった……そっか、そうだよね。

「……頑張ってるんだよね。それって」

 私は今、ここにいない女性のことを思った――カイゼリン様のこと。
 カイゼリン様の為ならば、リヒターさんはここまでも頑張れるのかと。そう考えると。

「ふふ、尊いね」

 無理はして欲しくないものの、彼の恋路を応援したい。私はそう思いながらも、心地よい風を感じていた。




 その後、リヒターさんは自力で目覚めた。時間ピッタリ過ぎて、私は一人恐怖していた。


 その後の授業は遅れることなく参加した。二人揃っての入室もなって。

「……なーんか、怪しくね? 二人してサボりとかさー?」
「ううん? 私とリヒターさん、委員会絡みくらいだし。遅刻確定したから、それなら委員会の仕事しようってなって」
「うっわ、悪い生徒」

 早速、隣の席のロルフ君に突っ込まれた。私は委員の仕事の関係でと誤魔化していた。

「モルゲン先生、ブチギレてたからなぁ? 謝っといたらー?」
「!」

 ブチギレ……! 元々謝るつもりのものが、謝りにくくなってしまった。

「っと、次の授業。始まるわー。シャーリーちゃん、サボっちゃだめだぜー?」
「うん、もう、サボらない」

 初日でやらかしてしまった。私は今度こそ真面目に授業を受ける所存だ。

「……?」

 ふと、視線を感じた。リヒターさんからだ。なんだろ、私が笑ってみると、彼はすぐにそらした。たまたま、こっちを見ていただけかな?



 
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