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第二章
本格的に、活動開始
編入初日の授業はひとまず終わった。放課後となった。
「ジェム様。放課後は委員会の時間です。本日は内務作業になります」
「うん、よろしくね。それじゃロルフ君、また明日」
リヒターさんが席まで迎えに来た。友人と雑談していたロルフ君にも挨拶をした。
「おー、頑張ってねー? ――でさ、それでどうなったんだっけ?」
もう友人との雑談に集中していた。あっという間に彼の周りに人も集まってきている。すごい人望だな……眩しい。
「……」
無言でリヒターさんが見てきた。なんだろ、無言の圧力なのかな? そっか、待たせちゃいけないよね。私はロルフ君から目を離し、リヒターさんの方を向く。
「お待たせ、リヒターさん」
「……いえ」
それはそれで、リヒターさんはすっと目をそらす。うん、まあいいか。
「行きましょうか、ジェム様」
「うん」
気を悪くしたわけではなさそうだから。彼の目元は微かに――笑んでいたから。
委員会の部屋まで、リヒターさんは説明をしていた。しっかり聞かないと。
「……おーおー、不良コンビじゃないかぁ?」
不機嫌まじりに声を掛けてきたのは。
「モ、モルゲン先生……!」
私は恐る恐る振り返る……引きつった顔のモルゲン先生がいた。
「よぉ、シャーロット? 初日で俺の授業、サボりとはなぁ?」
「ごめんなさい、モルゲン先生。次こそは気をつけますので」
「ああ、そうしてくれ。あまりサボりが酷いとな? ……『特別補習』な?」
「……!」
先生は妖しく笑った。彼の意味深で思わせぶりな態度に、私は狼狽えた。
「――モルゲン先生、我々は申したはずですが」
「……っと、自治委員会め。単なる補習だが? 後ろめたいこともないし、なんならお前も一緒に受けるか?」
度重なるコンプラ違反の指摘にも、先生は気にしなくなった。なんなら挑発までしていた。先生……私の目は遠くなっていた。
「気にすることありませんよ、ジェム様。真面目にやっている分には、モルゲン先生も何も言えませんから」
「うん、わかった」
「――では、我々はこれにて失礼致します。行きましょうか、ジェム様」
「うん。では、モルゲン先生。さようなら」
このまま自治委員会に赴こう、話の続きをしながら向かうことにした。
「……おーい。リヒターの方だ、リヒターの方」
先生はリヒターさんに言いたいことがあるようだった。
「まあ、シャーロットもだけどな。でも、リヒターだ、リヒター!」
「要領を得ませんね。大変恐縮にございますが、手短にお願いして頂けますと」
「それだ、それ! 俺とかにはそうだよな。というより、シャーロットにもそうだった……前まではな」
近づいてきた先生は、眉を寄せながらもリヒターさんに向けて言い放つ。
「――随分、くだけたんだなぁ? 喋り方変わるくらいにはな」
「……モルゲン先生の気のせいかと存じます」
これで話は終わりかと、リヒターさんは会話を切り上げた。モルゲン先生も今はいいかと、それ以上言ってくることもなかった。
「……?」
喋り方が変わった? 敬語のままじゃない? でも言われてみれば……くだけていると言われれば確かに、というか。
「……」
そんな私を見ていたリヒターさん、彼は一人頷く。
「……ええ、気にしないでください。私はこうがいい」
「はい、リヒターさん……?」
結局、謎のままだった。
委員会の拠点に着くと、私は事務処理に追われることになった。
「励みなさいな、シャーロット。ああ、わたくしも忙しいこと忙しいこと!」
最奥に鎮座して押印しているのはカイゼリン様だ。ひたすら書類に判子を押していた。
「ねえ、リヒター? こちら、どうしたものかしらね」
「そちらは部活動の申請書です」
「それはわかっているわよ。どうしたものかということよ! な、なんですの、このような部活は!?」
よほどふざけた内容なのかな。カイゼリン様が怒りに震えていた。
「失礼いたしました。中等部の男子生徒によるものです――『美女部』とやらです。直接お伺いしましたが、当人はいたって真剣でございました。なんでも、学園の選りすぐりの女生徒を集めて、嫁を探すという至高の目的があると。そう仰っておりました」
「きゃ、きゃ、却下よ!」
「かしこまりました。私の方にて、先方にもお詫び申し上げておきます」
申請書を受け取ったリヒターさんは、書類を破いてゴミ箱に入れた。
「ふう――次も、部活動に関することね。予算増やして、ですって。このままだと廃部だ、ですって。もっと、節約なさいな。こちらも破棄で良いかしら、リヒター?」
「お待ちくださいませ、シェリア様。削りようによっては、存続も可能かと思われます。経理に長けた委員もおりますので、向かわせましょう」
「ええ、わかったわ。では、そうしてちょうだい。保留にしておきましょうか」
「寛大なご処置、感謝申し上げます――ああ、すみません」
カイゼリン様から丁重に受け取ると、リヒターさんは近くの委員にお願いしていた。ついでに交渉が得意な生徒にも応援するようにと声を掛けていた。
「ねえ、リヒター。次はこちらですけれど――」
「はい、参ります。シェリア様」
すぐにカイゼリン様の元に戻り、リヒターさんはまたアドバイスをしていた。
「……」
二人のやり取りを見ていて思った。これはどう見ても――。
「……やっぱ、思っちゃいますよね。リヒターさんありきだって」
隣で作業していた委員の人が話しかけてきた。他の委員一同、頷いていた。
「ええと……」
どう答えたらよいのかな。確かに実質リヒターさんが仕切っているようなもの。
「でも、カイゼリン様のカリスマ性や心の広さ。カイゼリン様あっての自治委員会ですからね」
「はい、私もそう思います」
私はこれには返すことが出来た。これもまた、委員全員で頷いていた。
「……っと、リヒターさん見てる。サボっていると思われましたかね。いけないいけない」
リヒターさんはこちらの方を見ていた。それもカイゼリン様の相手をしながら。監視されていたのだと、委員達はより真面目に取り組む。私も雑談しちゃってた、その分を取り返そうと励む。
「――して、シェリア様。そちら間違っております。以前も申し上げましたが。何故同じ過ちを繰り返されるのでしょうか」
「な、なによ、リヒター! たまたまだというのに、なんだというのかしら!」
「……失礼いたしました。では、別件となりますが――」
リヒターさん……どこか不機嫌だった。私たちの会話が聞かれていたのかな?フォローをしたとはいえ、カイゼリン様を下げた発言をしたから?
「……気をつけよう」
カイゼリン様本人にも当たるほどなんだから。発言は本当に気をつけて――。
「ん?」
カイゼリン様の悪口を聞いたから、カイゼリン様に当たる? ……???
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