春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

フラグ回収でしたね


「それで、リヒターさん。やっぱり私もやりたい」
「……っと。それは、賛成しかねるのですが」
「お願い、今日だけ。明日は、皆さんにも割り振ろう?」
「え……」

 私の言葉にリヒターさんは困り顔だった。私は続ける。

「この量、一人でやるのは大変だと思う。皆さん、リヒターさんの為なら喜んでやるんじゃないかな。私だってそうだし」
「あなたも、でしょうか。……いえ、何でもありません。私が頑張れば良い話です。あなた方に負担を強いるのは――」

 リヒターさんはどこまでも遠慮していた。そこまでやってもらうこともない、思っているんだ。

「リヒターさん、気づいてないの? 皆さん、リヒターさんのことを慕っているんだよ。リヒターさんが頼んだら、喜んでくれるんじゃないかな」

 私は違うと思っていた。自治委員たちは本気でリヒターさんを慕っていると信じていた。

「ですが、それはあくまで建前だけでかと」

 リヒターさんは鵜呑みにはしなかった。

「ああ、なるほど……」

 確かにその可能性もなくはない。仕事を押し付けるわけにもなるので、委員たちも乗り気ではない場合もあるよね。それならそれで、だよ。

「……うん、建前だったらごめんね。そうだったら、私に回してね。リヒターさん本当に大変そうだから。本当に負担を減らしたくて、減らしたくて」

 私の本音だった。あの寝顔や寝言を見て、その思いは強くなった。

「そうしたら、あなたが休める。気も抜けるかなって思って」

 あの姿も彼の一面であり――安らげる姿なのではないかと。

「……ジェム様」

 リヒターさんは思案するも、すぐに考えを決めたようだ。こう告げる。

「本日もやはり、私が残って片付けます。ですが、明日からは――少しは他の委員も頼ろうとは思います」
「リヒターさん!」

 私は大いに喜んだ。彼がそうしてくれたことがとても嬉しくもあった。

「もちろん、断られたら。あなたが穴を埋めてください」
「うん、わかった」
「委員会終了後も。ずっと、私と二人きりです……ずっと」
「う、うん」

 リヒターさんが妖しく笑ったので、こう、不安になった。それでも口にしたことは取り消したりはしない。

「……まあ、そうなるとまずいのは私なので。なんとか協力は願い出ます」
「……? きっと、大丈夫だよ。皆さんなら。リヒターさん信頼しているから」
「私を、ですか」
「そう、リヒターさん」

 リヒターさんが不安になることもないでしょ? 自身が思っている以上に、あなたは信頼はされているんだから。

「うん。それじゃ、残りも終わらせよう」
「……ジェム様。私はこれがフラグのように思えてなりません」
「フラグって。またまたー」
「またまたー、とは」

 結局、私たちは残って業務を終わらせることになった。







 本当に大変な日々だった。これで終わりではない。これから起こり得るのは。
 ――シェリア・カイゼリン殺害事件。大晦日の前日に起きた。その日がまた、迫ってきていた。

 この多忙な日々に加えて、それにも備えなくてはならない。やることは山積みだ。

「……」

 さすがに無理をし過ぎていたかも……私の頭はぐらついていた。風邪とかかな、朝計った時は熱はなかったけれど……。
 私は痛む頭を我慢しながら、委員会の仕事を行っていた。

「――では、皆さん。お疲れ様。また、明日もよろしくね?」

 カイゼリン様のお言葉により、一同解散となった。良かった、帰るまではなんとか持ちこたえられるかな。リッカとの散歩に行って、ご飯とお水をあげて、それだけやったら横になろう……。

「あら、シャーロット? どうかなさったの?」
「いえ、大丈夫です。もう、帰りますから……」

 明らかに具合が悪そうな私に、カイゼリン様は声掛けを。気にかけてくださってる。

「そうおっしゃらないの。ほら――」
「私の方で送ります。カイゼリン様、今回は失礼させていただきます。まだ委員は残っておりますので、伴としてお連れください」
「そ、そう? 話が早くて助かるわ。ほほほ……」

 カイゼリン様が言い切る前に、リヒターさんがやってきた。どれだけカイゼリン様の意を汲むのかと、私は痛む頭の中で感心していた。

「――では、失礼します。ジェム様」
「……?」

 ふわりと浮遊感がした。気がつけば、リヒターさんに抱え上げられて……え。彼は相変わらずの無表情のまま……私を横抱きにしている……?

「リ、リヒター?」

 気が動転しているのはカイゼリン様。お姫様抱っこという芸当が出来たのかと、大層驚いていた。それは、残っていた委員達もそうで。

「私、歩けるから……」

 まず重いだろうし。リヒターさんだって慎重に運びたいからこうしただけ。私は肩を貸してくれれば御の字と思っていたけれど……自分が思っている以上に力が入らない。

「女子寮でしたね。行きましょうか」
「……すみません、リヒターさん」
「構いません。ああ、あえて言うならば――フラグ回収でしたね」
「本当にそうだね、ごめんなさい……」

 遠慮をする気力もなかった。私はリヒターさんに身を任せた。



 女子寮に着くと、こちらでもとても驚かれていた。あのリヒターさんが女生徒を抱き抱えているって。

「突然の訪問お許しください。ジェム様を見届けたら、失礼させていただきますので」

 呆気にとられていた寮長さんへの挨拶を済ますと、リヒターさんは顔を近づけてきた……ドキリとしてしまったけれど、あ、そういうこと……うん、それはね――。

「……はい、そちらがあなたの部屋ですね。この容態でよく上る気になれましたね」

 私の部屋番号を聞いていただけだった。それでもこう、見ている周りからしたら、こんなにも顔を寄せ合うこともないかなって……。


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