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第二章
リッカとしばらくの間……
「――じゃあ、行くか。エーデル村だろ}
「はい。よろしくお願いします」
先生自身もリッカの緊張に気づいていたんだと思う。エーデル村で世話になるのが良いと判断したんだ。
先生の付き添いにより、エーデル村に向かうことになった。リッカ……。
「俺も行こっと。エーデル村のギルドにも寄っておきたいし」
「そう。アルトも用があるなら行く?」
「うん、行きたい行きたい――」
前のめりになるアルトの襟首をつかんだのは、モルゲン先生だった。それも笑いながら。
「ここまで見逃してやったんだぞ? そろそろ補習に戻れよ、な?」
「アルト……」
アルトは抜け出していたのだという。心配してくれた上であろうと、こちらとしても彼には補習に向かってほしかった。
「うう……真面目にやってれば良かった……」
「そうだぞ、アルトー? 積み重ねが大事なんだ」
うんうんと頷く兄を、アルトは恨めしそうに見ていた。この勝ち誇った顔が腹立たしいと。が、ここで彼はめげない。私を見て、にこりと笑う。
「まあ、そこは愛の力でね! 課題という課題を、とっとと終わらせてやるんだ!! 内職上等!」
「内職ってお前、教師の前で言うなよ……」
「言うけど? つか、兄貴の授業でもやるし」
「本人の前で言うなよ……」
ばれないようにやるし、とアルトは開き直っていた。
「ちゃんとやってさ――大晦日前までには、動けるようにしておくから」
「アルト……」
来るべき日に向けて、アルトも動いてくれるんだ。私たちは頷き合った。
「俺も、今年は学園に残るからな」
先生は通常ならば、年末は不在となっていた。それが残ると言っていた。
「は? 兄貴、いいの? ……いや、そうしてもらうわ」
どこに戻るか知っているであろうアルトも、さすがにそうしてもらうことにしていた。
「シャーロット――例の男が店に限らず、こちらに訪れる可能性もある」
「はい」
前回の死因の一つでもあったのは、大晦日前日の真夜中の来訪者。シャーロット・ジェムの魔力を求めた男。私が学園に通っていることも、突き止めてくる可能性だってある。
「提案だ――俺の部屋にいてくれ」
「!」
先生は思い詰めた顔をしていた。その男が何をしでかすかはわからない。それならば、ずっと部屋に一緒にいてもらって、守ろうということなのかな。それで、先生の部屋って……。
「……兄貴、それって」
「もちろん、お前が同席してくれたっていい。どっちでもいいぞ」
アルトがいたとしても。いなくとも。女生徒を部屋に一晩泊める。洒落にならないはず。
「どう呼ばれたって。クビになったっていい――お前を守れるなら」
「先生、どうして……」
「お前を守れたら、俺はそれでいいんだ」
それでも私はわからないまま……そこまでする意味が。ただ、先生の覚悟が伝わってきた。お願いします、と私は頭を下げた。
「……僕は、僕も戻りたい」
リッカが震える声で言った。そう、だね……君だって本当はいの一番に動きたいんだ。でも、今回ばかりは……。
「リッカ……大晦日終わるまで。ううん、冬休みの間。おばあちゃん家でおとなしくしていてね」
「わかった……」
リッカが力になりたいのはわかっているんだ。現に力になってくれてもいた。それでも、今回は実態が掴めてないのもあるから。リッカにも大人しくしてもらうしかない。
「――いいよぉ。リッカちゃん、おいでー。ばあばと一緒にいようねぇ」
エーデル村に着くと、早速老婦人の元に向かった。私の店のオーナーでもある彼女。彼女はリッカの訪れを歓迎してくれた。リッカも尻尾を大きく振っていた。
「んー、可愛いねぇ。このまま、ばあばの家の子になるかい?」
リッカは尻尾を振っていた。ぶんぶん振っていた。
「リッカ……」
「ふふふ、この冬休みが勝負さね。ばあばの家の子になるかの……ふふふ」
オーナーの目が光った。私は本気かと慄く。
「なんてね、ばあばジョークよ。リッカちゃん、彼女が戻ってくるまで頑張ろうね」
「……わん」
リッカはちらりと私を見た。寂しそうな目……。
「……ありがとうございます。リッカのこと、よろしくお願いします。こちら、リッカの食べ物です。保存のきくものですが、他にもかかると思いますのでご請求ください。あとは――」
お世話になる人に、自宅から持ってきたものを渡した。彼女は笑って受け取った。
私は何度も礼をしながら……名残惜しく思いつつ去っていった。リッカも見送ってくれた。
村の入り口で待っていた先生にも挨拶すると、私たちは学園へと戻ることとなった。
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