春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

つきない謎

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 私は鳥籠の夢に戻されていた。乗り越えることが出来ず、生命を終えることになってしまった。

「……一日早いとか、なんなの」

 私は戻って早々、溜息をついた。どうして早まってしまったというの……。

「……シャーリー」
「リッカ!」

 鳥籠の向こうに白い子犬、リッカがそこにいた。彼の浮かない顔に私は実感せざるを得なかった――今回、駄目だったのだと。

「……ごめんね、シャーリー。僕、嫌な予感がして。走ったんだ」
「ううん、リッカ……」

 あのリッカは本物だったんだ……。彼はエーデル村から全力疾走で駆けつけてくれたんだ……。

「うう、シャーリー……」
「私の方が、ごめんね」

 リッカにまた、辛いところを見せてしまった……もっとやりようがあったのに。

「……でもね、無駄にはしないから」
「シャーリー……うん、僕もメソメソしてちゃだめ」

 私は諦めたわけではない。今回で得た情報もあったんだ。そうだよ、無駄になんて。

「それで、得た情報なんだけど――」
「うん。うん――」

 リッカに共有しておいた。し終えたところで、私に眠気が訪れる。

「私、眠くなってきちゃった。おやすみ……」
「うん、シャーリー。おやすみなさい」

 リッカに見守られながら、私は寝転がった。起きたらまた、十二月の初めに戻るのだろうね。繰り返しの日々がまた始まる。さあ、寝ようとしたところ。

 チャリ、チャリ、と。またあの音……鎖を引きずるような音がした。

「うー……」

 リッカが唸り続けている。しばらく鳴っていた音も、音の主が去りでもしたのか――止んでいた。

「……リッカありがと。また、来たんだ」
「また?」
「うん、前にも来てね……」

 今回はリッカが追い払ってくれたようなものだった。この件もリッカに伝えておこう。

「……っと、寝る前に」

 私は錠前の確認をしていた。大型が一個に、中型が三個。数は変わりない、けれども。

「これは……」

 中型の一つが変色してた――磨きに磨かれた金色の錠前。鍵穴はいたってシンプルなものなのに、機械仕掛けのそれは腕のようなものをいくつも伸ばしていた。

『君に対する執着、それが半端ない』

 アルトが言っていたこと。それはこの鳥籠、そしてこの錠前を指していた。

『あなただけです。私の心をこうもさせるのは。あなたが――ジェム様が。あなたといると、私は――』

 あの錠前からどうしても繋がってしまった存在――リヒターさんだった。


「……」

 いよいよもって、わからなくなってきた。あのリヒターさんに執着されること、ある? ……ないでしょ、さすがに。

 では 一体誰なんだろう。私は首を傾げながらも考える。わからなかった。
 次から次まで、謎がつきなかった。






 いつもの朝が訪れた。

 今日も生きているということ。

「おはよう、シャーリー」
「おはよう、リッカ」

 リッカが側にいてくれることにも感謝しよう。私は一日を始めることにした。

 繰り返しの日々がまた、始まる。




 私の手にはすでに推薦状がある。学園に向かえる状況であり、今にでも発とうとしていた。

「シャーリー。僕も行く」

 リッカが玄関までついてきた。

「リッカ……」

 私はあの時のことを思い出す。リッカが……カイゼリン様を襲撃したとみなされてしまったこと。間が悪かったのもある、あったんだ。
 私と出会う前までは、リッカは学園で怯えて暮らしていた。リッカにはトラウマがある。委員会に費やしていた私は、リッカとの時間も減っていて……。

「……僕、お散歩行かない。大人しくしてる。あのね、シャーリーと離れたくない」

 リッカはぴたりとくっついてきた。私はリッカに合わせて屈む。

「そっか。うん、私もだよ」

 私だってそうだよ……リッカとは離れがたい。モルゲン先生も申請のことを触れていた。ちゃんと手続きさえすれば、リッカも暮らしやすくなるよって。

「お願いしてみるからね。ほら、カイゼリン様なら許可してくれそうだし」
「……うん! カイゼリン、良い人!」
「だよね」

 ちゃんと言えるようになったねぇ、リッカ。私は撫でた。リッカも嬉しそう。

「じゃ、行こうか。アルト来た時の為に、貼り紙も貼っておこうね」

 アルトがまだ来ていない。前回のループの時とは違い、私が生存しているのは、彼もわかっているはず。

「アルト、お店の前うろうろしてる」

 リッカが鼻をクンクンしていた。

「……えっと、いつから?」
「結構前。でも入りたがらない」
「……そっか」

 生存しているとわかっていても。アルトは、彼は――。


 私は玄関の扉を開ける。そこにいたのは――泣いてはいないものの、辛そうな顔のアルトだった。

「……シャーロット、はは」

 アルトは私を見ると笑顔になった……なったものの、泣き笑いであった。

「……生きてるけどさ。きっついな……何も出来なかった」

 アルトからしてみれば、いきなり放送が鳴って、幼馴染を失ったようなもの。何も出来なかったと無力感にも囚われていたんだ……。

「アルト。私はちゃんと生きているから。ほら」
「うん……」

 私の方から彼の手に触れた。温もりが伝わるようにと。アルトは沈んだ表情のままだった。

「……学園、行くんでしょ。俺も行く」

 それでも、アルトは私を……前を。まっすぐに見た。

「……ごめん。俺、多分毎回こんなだけど。それでも、君が頑張っているってのに、ぐだついてるわけにもいかないから」
「……うん」

 私の手を、彼はそっと離した。

「ほんとは、このまま手ぎゅってして、そのまま繋ぎたいけど。今は我慢します。行こ、シャーロット、リッカ」
「うん、そうだね――」




 家を出発後、都に立ち寄っていく。郵便のことを済まし、私たちは広場へ向かった。女神像への祈りを捧げた。

 ――次は学園へ。


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