春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
128 / 557
第二章

絡んでこない……?



 今回も自治委員会を訪れる。部屋の主、カイゼリン様の許可を得て、私たちは入室した。迎え入れたのはリヒターさん。

「……」

 リヒターさんはやっぱり……こちらを見てくる。前回のループの時からもそうだった。リヒターさんに親しみを覚えた今でも、この行動の真意は未だにわからなかった。

「……。業務中に悪いな。編入生の紹介をしたい」

 先生もそのことが気にはなっているようでも、ひとまずは会話を切り出した。

「突然の訪問をお許しください。私はシャーロット・ジェムと申します。これからもよろしくお願いいたします」

 私は深くお辞儀をした。これはリヒターさんを参考にしてみたんだ。彼の所作は美しく、学ぶことも多かったから。

「ええ、よろしくね? シャーロットさん。わたくしはシェリア・カイゼリン。この自治委員会の長を務めておりますの」

 カイゼリン様は委員長専用の椅子に座りながら、優雅に微笑んだ。

「はい、カイゼリン様。よろしくお願いいたします。モルゲン先生からお噂はかねがね聞いてます。とても優秀で人望も厚い方だって。長に相応しい方とも」
「まあ、おほほほほほほほほほ!」

 カイゼリン様は上機嫌となり、高笑いをしていた。

「……?」

 おかしいな? そろそろリヒターさんから何らかの指摘が飛んでくるはず。なのに一向にその気配はない。

 リヒターさん、黙っているだけだ。やたらと腕時計をさすっているのも気になる。彼はいつまでも黙ったままで、私を注視し続けていて……。

「……あの、お名前うかがってもいいですか?」

 知ってはいても、なんだ。彼が名乗ってくれない限りは、こっちからは呼べない。黙りきりの彼に、私は困惑していた。

 見かねたのはカイゼリン様だった。側近の男を横目で見たあと、口を開き――。

「どうしたというのかしら、リヒターったら。ああ、わたくしが紹介しますわ。彼は――」
「――リヒト・リヒターと申します。リヒトとお呼びください」

 私は驚愕した。いや……いきなり名前から名乗ってきたのだから。

「リヒター、お前……俺の時は断固拒否してただろうが」
「わたくしだって遠慮していたのよ……?」

 私以上に驚いていたのが、リヒターさんと長い付き合いがあるお二人だった。

「ええ、もちろん。お二方もそうお呼びくださいませ」
「いや、なあ……」
「ええ、まあ……」

 ずっとリヒター呼びをしてきた彼らにとっては、慣れないものでしょうに。

「どちらでも構いません――ジェム様さえ、そう呼んでくだされば」

 そう言った彼は、優しく微笑んでいた。その表情全てが私に向けられたもの……? 私は聞かずにいられなくなった。

「……よろしいでしょうか、リヒターさん」
「リヒト、です。それと私に敬語は不要です」

 ――金色の瞳がそう告げてくるから。彼はそうだね。

 ――リヒトさんだ。

「……うん、リヒトさん。私たち、初対面だよね?」

 かなり深入りした質問だった。先生も顔を顰めていた。下手したら疑惑をもたれかねない質問だ。

「はい、初対面ですね」
「……だよね」

 リヒトさんはするりと答えてきた。特に疑問も抱いてないようだった。私の方がむしろ疑問だった。
 この人が最初の頃にとってきた態度ではない。今の彼の態度は、それなりに交流を深めていた頃のものだった。

 ……リヒトさんの視線は気になるけれど、私は大事な話をしないといけない。自治委員会入り、そしてリッカのこと。

「……ああ」
「!」

 先生と目が合った。『俺から話してみる』と、そういった眼差し。先生、ありがとうございます……! 私も全力で頼み込みますから……!

「……って」

 やっぱり落ち着かない……止まない彼からの視線が。いつもの観察するようなものに加えて……なんだろ、咎めるようなものが。

感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした

影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。 若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。 そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。 ……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。