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第二章
絡んでこない……?
今回も自治委員会を訪れる。部屋の主、カイゼリン様の許可を得て、私たちは入室した。迎え入れたのはリヒターさん。
「……」
リヒターさんはやっぱり……こちらを見てくる。前回のループの時からもそうだった。リヒターさんに親しみを覚えた今でも、この行動の真意は未だにわからなかった。
「……。業務中に悪いな。編入生の紹介をしたい」
先生もそのことが気にはなっているようでも、ひとまずは会話を切り出した。
「突然の訪問をお許しください。私はシャーロット・ジェムと申します。これからもよろしくお願いいたします」
私は深くお辞儀をした。これはリヒターさんを参考にしてみたんだ。彼の所作は美しく、学ぶことも多かったから。
「ええ、よろしくね? シャーロットさん。わたくしはシェリア・カイゼリン。この自治委員会の長を務めておりますの」
カイゼリン様は委員長専用の椅子に座りながら、優雅に微笑んだ。
「はい、カイゼリン様。よろしくお願いいたします。モルゲン先生からお噂はかねがね聞いてます。とても優秀で人望も厚い方だって。長に相応しい方とも」
「まあ、おほほほほほほほほほ!」
カイゼリン様は上機嫌となり、高笑いをしていた。
「……?」
おかしいな? そろそろリヒターさんから何らかの指摘が飛んでくるはず。なのに一向にその気配はない。
リヒターさん、黙っているだけだ。やたらと腕時計をさすっているのも気になる。彼はいつまでも黙ったままで、私を注視し続けていて……。
「……あの、お名前うかがってもいいですか?」
知ってはいても、なんだ。彼が名乗ってくれない限りは、こっちからは呼べない。黙りきりの彼に、私は困惑していた。
見かねたのはカイゼリン様だった。側近の男を横目で見たあと、口を開き――。
「どうしたというのかしら、リヒターったら。ああ、わたくしが紹介しますわ。彼は――」
「――リヒト・リヒターと申します。リヒトとお呼びください」
私は驚愕した。いや……いきなり名前から名乗ってきたのだから。
「リヒター、お前……俺の時は断固拒否してただろうが」
「わたくしだって遠慮していたのよ……?」
私以上に驚いていたのが、リヒターさんと長い付き合いがあるお二人だった。
「ええ、もちろん。お二方もそうお呼びくださいませ」
「いや、なあ……」
「ええ、まあ……」
ずっとリヒター呼びをしてきた彼らにとっては、慣れないものでしょうに。
「どちらでも構いません――ジェム様さえ、そう呼んでくだされば」
そう言った彼は、優しく微笑んでいた。その表情全てが私に向けられたもの……? 私は聞かずにいられなくなった。
「……よろしいでしょうか、リヒターさん」
「リヒト、です。それと私に敬語は不要です」
――金色の瞳がそう告げてくるから。彼はそうだね。
――リヒトさんだ。
「……うん、リヒトさん。私たち、初対面だよね?」
かなり深入りした質問だった。先生も顔を顰めていた。下手したら疑惑をもたれかねない質問だ。
「はい、初対面ですね」
「……だよね」
リヒトさんはするりと答えてきた。特に疑問も抱いてないようだった。私の方がむしろ疑問だった。
この人が最初の頃にとってきた態度ではない。今の彼の態度は、それなりに交流を深めていた頃のものだった。
……リヒトさんの視線は気になるけれど、私は大事な話をしないといけない。自治委員会入り、そしてリッカのこと。
「……ああ」
「!」
先生と目が合った。『俺から話してみる』と、そういった眼差し。先生、ありがとうございます……! 私も全力で頼み込みますから……!
「……って」
やっぱり落ち着かない……止まない彼からの視線が。いつもの観察するようなものに加えて……なんだろ、咎めるようなものが。
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