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第二章
シャーロットさん
「そうだ、シェリア。シャーロットについて、お願いしたいことがある。まずはだな――」
先生は話し出していた。そうですね、リッカのこと。私も全力でいきます。
「――発言、お許しくださいませ」
綺麗に挙手したのは……リヒトさん? どういうこと? カイゼリン様は許可する、と頷いていた。先生はちょっと待て、と待ってもらおうとしたけれど。
……リヒトさん、お構いなしだった。カイゼリン様の了解は得たのでよし、ってこと? 彼は発言を開始していた。
「その前に……私からも申したいことがございます。以前より気になっておりましたが、何故モルゲン先生は名を呼び捨てにされるのでしょうか。苗字は問題ないとして、何故でしょうか」
「いや、何故ってな。その方が親しみやすかったり、距離を縮めたりだな?」
先生は顔をひきつらせながらも回答していた。
「いいえ、教師としての矜持は保たれてください。名前を呼び捨てにされているのは、あなたくらいです」
「いや……」
「教師としての節度を――何卒よろしくお願い申し上げます」
今まで一切言ってこなかったのに、どうしちゃったの……?
「くっ……」
先生は腑に落ちてなさそうだったけれど、ここで機嫌を損ねるわけにもいかないと飲み込んでいるようだった。それはこちらの頼み事を聞き入れてほしいから……先生……。
「……シ ャ ー ロ ッ ト さ ん が。犬連れでな、家族同然なんだ。禁止もされてなかったが、許可をもらえたらと思ってな」
先生……。
「まあ、ワンちゃん! ええ、手続きの必要がありますが、許可はしましょう。もちろん、わたくしにも触らせてくださるのでしょう?」
「はい、もちろんです。あの子もカイゼリン様なら、すごく喜ぶと思います」
カイゼリン様は好感触だった。彼女が犬好きなのは承知の事実、うん、これでリッカの件も大丈夫そう。
「まあ! 楽しみにしておりますわ。手続きはリヒターへ――あとは彼にお任せしますわ。ああ、ワンちゃん、ワンちゃんですわぁ!」
「……カイゼリン様」
私は改めてカイゼリン様を見た。結局はリヒトさん任せな彼女。ほとんどといっていいほど。
私は彼女のことは好いてはいるし、尊敬もしている。それでも、何とも言えない気持ちとなっていた。ここまでリヒトさん任せが徹底しているとなると……。
「お気になさらず、ジェム様」
「……すみません」
カイゼリン様への目つきが険しくなっていたのかな。どういった思いを抱いていたのかも、リヒトさんは気づいてたってことだよね。この二人が納得の関係なら……私が口を出すことも気にすることでもないのに。自重しないと……。
「――よし。俺は生徒への態度も距離感も弁える教師だ。スキンシップをしていたこともそう、反省する善良な教師だ。よって、俺がシャーロットさんを送っていく」
先生は予防線を張ってきた。以前に徹底的に絞られたこともあってのこと。
「まあ、そうですわね。では、わたくしたちは公務に戻らせていただきます――リヒター、ワンちゃんの書類をこちらにちょうだい。そうね、どの紙にしようかしら」
「……」
「リヒター? どうなさったの?」
リヒトさんとしたことが、すぐに動くことがなかった。カイゼリン様が命じているにも関わらずだ。
「……。いえ、失礼致しました。こちらほぼ無記入でして、代替可と思われます。ジェム様に記入していただくことになりますが、よろしいでしょうか」
「はい。私の方で書きます。ありがとうございます」
「……敬語に戻ってますよ、ジェム様?」
「!?」
用紙を手渡すと同時に……リヒトさんは耳元でそう教えてきた。彼の目は笑んでもいた。
「……おいおい、リヒターさん? 初対面なんだよなぁ? 随分と砕けた態度をとるんだな? そんな奴だったか?」
先生もさすがにおかしいと思っているようで、柄の悪い絡み方をしていた。
「問題ありますか?」
「いや、問題ってなぁ」
「私達は生徒同士です。私はあなたと違って、教師ではありません。問題はございますか?」
「ぐっ……」
立場が悪いのは先生の方だった。唇を噛み締めて悔しそうにしていた。
「さて、参りましょうか。ジェム様、送ります」
「……うん、お願い」
「はい、喜んで」
私がそう返事すると、リヒトさんは嬉しそうに微笑んだ。私はつい見惚れてしまった。
「……っと、俺も距離を置きつつ、ついていくからな?」
リヒトさんに軍配が上がりっぱなし。それもあるけれど、先生はとにかく気になるようだった。
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