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第二章
守られる日々②
午前の授業が終わり、昼休みとなった。いつもなら真っ先に食堂に向かうリヒトさんが、悠長に私を見つめていた。飽きないのかな?
「あのさ、リヒトさん? カイゼリン様、待っていない?」
「?」
……またしてもリヒトさん、首をかしげてきた。私はもう言わないよ、言わないからね。可愛いと思ってはいても、言いはしないんだから――。
「……可愛いという言葉、待っていましたが」
「か、可愛い……」
しょぼんとするリヒトさんがいじらしくて、私はうっかり口にしてしまった。彼のしてやったりの顔を見て、してやられた私の顔は赤くなってしまった。
「ジェム様。今は昼食の時間ですよ。私とあなたが食事を共にする、大切な時間です。では、参りましょうか」
「うん……」
そう、昼食も二人で摂る為のものだよね。リヒトさんが立ち上がったので、私もそうした。彼は並んで歩いてくれる。私も笑顔で彼の隣にいた。
「――シャーロット!」
別の教室から出てきたのは、アルトだった。彼はどこか焦っているようだった。どうしたのかな?
「アルト、どうしたの?」
「どうしたのって……」
アルトは私、次にリヒトさんを見た。見た上で、アルトは話を持ちかけてきた。
「……お昼。俺と一緒に食べよう。リヒター、悪いけどさ。この子、俺と食べるから」
「アルト――リヒトさんだよ? みんな、リヒターリヒターっていうけど」
「シャーロット……?」
アルトまで、どうしちゃったんだろうね?
「いいえ、ジェム様、あなたがそう呼んでくれれば充分です。……アルト様も、せっかくのお誘いではありますが。こちらが先約ですので」
リヒトさんは私の肩を抱くと、そのまま食堂へと向かっていった。うん、行こう。
「待って、シャーロット――」
「……?」
誰かが、私の名を呼んだ気がした。それとなく振り返るも、そこにあるの人の群れだけ。人並みに溶け込むかのように――『呼んだ人』の存在すら、なかったかのように。
「さあ、ジェム様」
「うん」
私の隣には、リヒトさんがいる。いつものことだ。
リヒトさんが用意してくれたのは、テラス席。今日も湖が綺麗だね。栄養バランスがとれていて、見た目も美しい昼食。調和がとれたものたち。
「美味しいね、リヒトさん」
「ええ、ジェム様」
並んで座る私たち、視線が集まっていた。昔は気にしていたりしたけれど、今は平気。
こうしてね? 食事と――リヒトさんに夢中になっているから。
放課後になると、自治委員会の時間だ。うん、今日も励もうね、リヒトさん?
「そうだ、ジェム様。お渡ししておきたくて」
「リヒトさん、こちらは?」
私は包みを渡された。ずっしりと重みがあるものだった。
「近くの更衣室にてお着替えください――委員服です」
「えっ。私が着てもいいの?」
私は補佐の補佐なのに。委員会所属であっても、正規の存在ではない。そのこともあって、これまで学園制服のまま活動してきた。
「はい、あなたの為のものですから――もっとも」
リヒトさんが触れてきたのは、私の制服のリボン?
「あなたの制服姿も愛らしかったのですが……知ってましたか? こちらの色が基本なんですよ? 学園創業時の指定の色でした。模範的な色です」
リヒトさんは手遊びでリボンに触れてきている。掬い上げたり、引っ張ってみたり。
「……おっと、いけませんね」
目をそらしながら、リヒターはリボンから手を離した。
「……もう、リヒトさんったら」
リボンに意識がいってたのかな? そうやってるの、ちょっと子供っぽくて可愛いなって。
「着替えてくるね」
早く委員会に行かないとね? 私はリヒトさんを残して更衣室に出向いた。
しばらくして、着替えて戻ってきた。厚手素材の詰襟制服、スカートタイプだった。
「――ああジェム様、お似合いですよ。あなたの為の服ですね」
戻って早々、リヒトさんが讃えてきた。
「言い過ぎだけど、ありがとう。お待たせしました」
「いえ。では、参りましょうか」
私たちは自然と手が繋ぎ合わされる。仲睦まじく、委員会へと赴くこととなった。
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